ロックの音楽的遺産、再び復活! 「赤と青」。
THE BEATLES
1962~1966 1967~1970

残暑お見舞い申し上げます。 夏休みも真っ只中。
皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
私は、ここ数日、公私共々バタついておりまして、“休み”どころじゃ
なかったのですが、ようやく時間が少しできたんで、ペンを進めます。
しばらくビートルズのネタも置いたままになっていたんですが、
ついこの前、久々に“熱い”ニュースが届いてきました。
昨年9月全オリジナル・アルバムのリマスター盤と
ステレオ、MONO各BOXセットを発売し、CD総売上げ270万枚を記録。
社会現象にまでなった“リマスター騒動”から
そろそろ1年になりますが、
多くのファンの要望に応える形で、ビートルズ解散から3年後の
1973年に発売し、世界中で驚異的大ヒットを記録した
年代別2枚組ベスト・アルバム「1962~1967(赤盤)」「1967~1970(青盤)」の
リマスター盤CDの発売が決定した。 10月18日世界同時発売となる。
(1993年9月の初CD化以来17年ぶりのリマスターCDの発売となる)
正直「その内に出るんだろうなぁ」と思ってたんで、
そんなに驚くニュースでもなかったんですが、
やはり「赤」と「青」は、愛着が深いベスト・アルバム。
初CD化の時は、何度も何度も“流れて”、
待ちぼうけをくらい続けた末の発売だったんで、感慨もひとしおだった。
アナログ音源からのリマスタリングだったんで、
初ステレオ化の曲や細かいミックス違いに、ほくそ笑んだものですが、
今回は最新リマスター音源による、“オール・ステレオ化”で新調された。
(ただ、音源的に新しい“発見”はないと思うが)
手っ取り早くビートルズをなぞるには、至極便利で、
彼らのもの凄い勢いで“早熟”していった過程がほんとによくわかる、
ロックの歴史的音楽遺産でもある。

このロック史上最強のベスト盤は、
当時猛威を振るっていた海賊盤(ブートレグ)への
キャピトルが対抗手段として誕生したものだ。
ビートルズは活動期間中の66年に、イギリスでクリスマス商戦に乗る形で、
16曲入りのベスト盤「OLDIES」を発表してるけど、
活動後期にあたる67年~70年のベスト盤をリリースしないまま解散してしまった。
(70年初頭に企画は持ち上がってたが、なかなか許可が出なかった経緯がある)
それから約3年が経過する間に、
アメリカで4枚組・全59曲のベスト的内容を持つ海賊盤
「αΩ(アルファ・オメガ)」が全米に流通し、爆発的なヒットとなってしまった。
ただ音源はビートルズと各メンバーのソロのレコードの
オフィシャル音源から抜き取られたもので、意図も何のひねりもない
“めちゃくちゃ”な選曲で、どうしようもないクズだった。

市場を荒らされ、「これじゃいかん」と危機感を募らせた
アメリカのキャピトルの呼びかけに、
ジョン、ポール、ジョージ、リンゴが合意し、全キャリアからの選曲による
2枚組×2セットのベスト盤が作られることになった。
赤と青。
このイメージ・カラーは、英国のサッカー・チームからとったものだ。
彼らの故郷リバプールには、2つのプレミア・チームが籍を置く。
それぞれのユニフォームの色が、
赤は、リバプールFC。 青は、エバートン。
(英国(UK)の国旗も、赤と青が基本色だ)
「赤盤」のジャケット写真は1962年12月、
最後のハンブルク・ツアーの直前に、アンガス・マクビーンが
マンチェスターに建つEMI本社のバルコニーで撮影したショットだ。
デビュー・アルバム「PLEASE PLEASE ME」のジャケット写真の
アウト・カットでもある。
「青盤」に使われているのは、1969年に同じ場所で
同じカメラマンによって撮影されて、
同じ位置、同じポーズをとるメンバーの写真が使われた。
もともとは、
お蔵入りした「GET BACK」(後に大幅改訂され「LET IT BE」として発売)
で使用する予定の写真がジャケットが使用された。

これ以上のビジュアルは考えられない。
素晴らしいジャケットだ。
この2枚の写真は、ビートルズが8年間で成し遂げた
驚くべき成長と変化を一目瞭然に示すものとなった。
キャリアを総括するベスト盤のアートワークとして、最高の出来。
おおまかに見て、
赤は“ライブ”時代。 青は“スタジオ”時代と見ていい。
「赤」と「青」を通して聴くと、
初期はほとんどが4ピース・バンドによる演奏だが、
曲想が多彩さを増し、録音技術も進化するにしたがって、
演奏と音像がドンドン複雑になっていくのが手に取るようにわかる。
それと歩調を合わせるように、曲の長さも
「赤」の平均2分22秒に対し、「青」は平均3分33秒となっている。
特に「青」で、
最長の“Hey Jude”は、シングルA面曲でありながら7分を超える超大作。
ポップ・ソングの不文律であった“3分以内”という枠を壊し、
表現の自由度を広げていったことが理解できる。
選曲にはジョージが当たったとされる。
この説は正しいと思うけど、100%ジョージなのかは、どうなのかな?と思う。
「赤」26曲、「青」28曲の計54曲は、
公式213曲の4分の1にあたる。
このバランスの良さ、絶妙な配置は、
マーティンやEMI幹部の意見も反映してんじゃないの?とも。
だって、「赤」には、ジョージの曲はゼロ。
(しかし、「RUBBER SOUL」から6曲も選んでるとこ、センスを感じます)
まぁ、あの“2人”が選曲に関わってたら、
ここまでバランスのとれた選曲には
ならなかったはずだろうけど・・。
「赤」は、エネルギーみなぎるギター・ポップの宝庫だ。
まさに“ライブ”時代。
イギリスで最初の大ヒットとなった“Please Please Me”。
アメリカ征服の起爆剤となった“I Want To Hold Your Hand”。
主演映画の主題歌“A Hard Days Night”、“Help!”。
独創的ギター・リフの革新曲“I Feel Fine”、
“Ticket To Ride”、“Day Tripper”に、
ポールの幾何学的ベースラインを確立した“Paperback Writter”など、
ギター革命曲がズラリと並ぶ。
でも一方では、ビートルズに対する旧世代からの評価を一変させた
ポールの珠玉のバラード“Yesterday”、“Michelle”、“Eleanor Rigby”や、
ジョンが思想的で深みを増していく過渡期に書いた
“You've Got To Hide Your Love Away”
“Nowhere Man”、“In My Life”もある。
リンゴが歌う癒し童謡の“Yellow Sabmarine”も忘れちゃいけない。

「青」は、ライブでの再現性を考えず、
自由奔放にかつ実験的に音楽に取り組んだ“スタジオ”時代。
4人の創作意欲が膨らんでいった結果こそ成し得た、
高い音楽性とロック史上に燦然と輝く名曲がズラリと並ぶ。
新境地を切り開き続けたビートルズの姿が如実に刻まれている。
サイケデリック期を象徴する、
ジョンの傑作“Strawberry Fields Forever”で幕を開ける。
(このセンスがいい!)
ロック史上最高の革新的問題作である(私はそう思ってます)
「SGT.Pepper's Lonely Hearts Club Band」から、
流れるようなオープニング3曲に、
ラストに、クラシックとオーケストラの壮絶な音の実験を試みた
“A Day In The Life”。
世界の若者に向けて発信された力強いメッセージ・ソング
“All You Need Is Love”。
ハードなロックンロールに回帰した“Lady Madonna”、
“Get Back”、“Revolution”。
作曲家としてジョンとポールに肩を並べたジョージの名作
“While My Guitar Gently Weeps”
“Here Comes The Sun”、“Something”。
そして、ビートルズの歴史を総括し、
名残惜しむかのように、
“Let It Be”、“The Long And Winding Road”で幕を閉じる。
「赤」と「青」共に、1枚の容量では到底詰め込めない、
比類なき重厚さは揺るぎない。
たったの8年弱で、
彼ら“FAB4”が、20代のうちに残した音楽的功績はあまりにも大きく、
その音楽的事件のひとつひとつを数え上げれば、
ほんときりがない。
驚くことに、ビートルズは60年代のバンドでありながらも、
今現在聴いても、古さを全く感じさせない。
掘っても掘っても奥深く、知れば知るほど知りたくなる。
そして、いつ聴いても、懐かしくもあり、新鮮でもある。
ロックの“絶対王者”ビートルズ。
いまだ風化せず、永遠に風化せず。
1962~1966 1967~1970


残暑お見舞い申し上げます。 夏休みも真っ只中。
皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
私は、ここ数日、公私共々バタついておりまして、“休み”どころじゃ
なかったのですが、ようやく時間が少しできたんで、ペンを進めます。
しばらくビートルズのネタも置いたままになっていたんですが、
ついこの前、久々に“熱い”ニュースが届いてきました。
昨年9月全オリジナル・アルバムのリマスター盤と
ステレオ、MONO各BOXセットを発売し、CD総売上げ270万枚を記録。
社会現象にまでなった“リマスター騒動”から
そろそろ1年になりますが、
多くのファンの要望に応える形で、ビートルズ解散から3年後の
1973年に発売し、世界中で驚異的大ヒットを記録した
年代別2枚組ベスト・アルバム「1962~1967(赤盤)」「1967~1970(青盤)」の
リマスター盤CDの発売が決定した。 10月18日世界同時発売となる。
(1993年9月の初CD化以来17年ぶりのリマスターCDの発売となる)
正直「その内に出るんだろうなぁ」と思ってたんで、
そんなに驚くニュースでもなかったんですが、
やはり「赤」と「青」は、愛着が深いベスト・アルバム。
初CD化の時は、何度も何度も“流れて”、
待ちぼうけをくらい続けた末の発売だったんで、感慨もひとしおだった。
アナログ音源からのリマスタリングだったんで、
初ステレオ化の曲や細かいミックス違いに、ほくそ笑んだものですが、
今回は最新リマスター音源による、“オール・ステレオ化”で新調された。
(ただ、音源的に新しい“発見”はないと思うが)
手っ取り早くビートルズをなぞるには、至極便利で、
彼らのもの凄い勢いで“早熟”していった過程がほんとによくわかる、
ロックの歴史的音楽遺産でもある。

このロック史上最強のベスト盤は、
当時猛威を振るっていた海賊盤(ブートレグ)への
キャピトルが対抗手段として誕生したものだ。
ビートルズは活動期間中の66年に、イギリスでクリスマス商戦に乗る形で、
16曲入りのベスト盤「OLDIES」を発表してるけど、
活動後期にあたる67年~70年のベスト盤をリリースしないまま解散してしまった。
(70年初頭に企画は持ち上がってたが、なかなか許可が出なかった経緯がある)
それから約3年が経過する間に、
アメリカで4枚組・全59曲のベスト的内容を持つ海賊盤
「αΩ(アルファ・オメガ)」が全米に流通し、爆発的なヒットとなってしまった。
ただ音源はビートルズと各メンバーのソロのレコードの
オフィシャル音源から抜き取られたもので、意図も何のひねりもない
“めちゃくちゃ”な選曲で、どうしようもないクズだった。

市場を荒らされ、「これじゃいかん」と危機感を募らせた
アメリカのキャピトルの呼びかけに、
ジョン、ポール、ジョージ、リンゴが合意し、全キャリアからの選曲による
2枚組×2セットのベスト盤が作られることになった。
赤と青。
このイメージ・カラーは、英国のサッカー・チームからとったものだ。
彼らの故郷リバプールには、2つのプレミア・チームが籍を置く。
それぞれのユニフォームの色が、
赤は、リバプールFC。 青は、エバートン。
(英国(UK)の国旗も、赤と青が基本色だ)
「赤盤」のジャケット写真は1962年12月、
最後のハンブルク・ツアーの直前に、アンガス・マクビーンが
マンチェスターに建つEMI本社のバルコニーで撮影したショットだ。
デビュー・アルバム「PLEASE PLEASE ME」のジャケット写真の
アウト・カットでもある。
「青盤」に使われているのは、1969年に同じ場所で
同じカメラマンによって撮影されて、
同じ位置、同じポーズをとるメンバーの写真が使われた。
もともとは、
お蔵入りした「GET BACK」(後に大幅改訂され「LET IT BE」として発売)
で使用する予定の写真がジャケットが使用された。

これ以上のビジュアルは考えられない。
素晴らしいジャケットだ。
この2枚の写真は、ビートルズが8年間で成し遂げた
驚くべき成長と変化を一目瞭然に示すものとなった。
キャリアを総括するベスト盤のアートワークとして、最高の出来。
おおまかに見て、
赤は“ライブ”時代。 青は“スタジオ”時代と見ていい。
「赤」と「青」を通して聴くと、
初期はほとんどが4ピース・バンドによる演奏だが、
曲想が多彩さを増し、録音技術も進化するにしたがって、
演奏と音像がドンドン複雑になっていくのが手に取るようにわかる。
それと歩調を合わせるように、曲の長さも
「赤」の平均2分22秒に対し、「青」は平均3分33秒となっている。
特に「青」で、
最長の“Hey Jude”は、シングルA面曲でありながら7分を超える超大作。
ポップ・ソングの不文律であった“3分以内”という枠を壊し、
表現の自由度を広げていったことが理解できる。
選曲にはジョージが当たったとされる。
この説は正しいと思うけど、100%ジョージなのかは、どうなのかな?と思う。
「赤」26曲、「青」28曲の計54曲は、
公式213曲の4分の1にあたる。
このバランスの良さ、絶妙な配置は、
マーティンやEMI幹部の意見も反映してんじゃないの?とも。
だって、「赤」には、ジョージの曲はゼロ。
(しかし、「RUBBER SOUL」から6曲も選んでるとこ、センスを感じます)
まぁ、あの“2人”が選曲に関わってたら、
ここまでバランスのとれた選曲には
ならなかったはずだろうけど・・。
「赤」は、エネルギーみなぎるギター・ポップの宝庫だ。
まさに“ライブ”時代。
イギリスで最初の大ヒットとなった“Please Please Me”。
アメリカ征服の起爆剤となった“I Want To Hold Your Hand”。
主演映画の主題歌“A Hard Days Night”、“Help!”。
独創的ギター・リフの革新曲“I Feel Fine”、
“Ticket To Ride”、“Day Tripper”に、
ポールの幾何学的ベースラインを確立した“Paperback Writter”など、
ギター革命曲がズラリと並ぶ。
でも一方では、ビートルズに対する旧世代からの評価を一変させた
ポールの珠玉のバラード“Yesterday”、“Michelle”、“Eleanor Rigby”や、
ジョンが思想的で深みを増していく過渡期に書いた
“You've Got To Hide Your Love Away”
“Nowhere Man”、“In My Life”もある。
リンゴが歌う癒し童謡の“Yellow Sabmarine”も忘れちゃいけない。


「青」は、ライブでの再現性を考えず、
自由奔放にかつ実験的に音楽に取り組んだ“スタジオ”時代。
4人の創作意欲が膨らんでいった結果こそ成し得た、
高い音楽性とロック史上に燦然と輝く名曲がズラリと並ぶ。
新境地を切り開き続けたビートルズの姿が如実に刻まれている。
サイケデリック期を象徴する、
ジョンの傑作“Strawberry Fields Forever”で幕を開ける。
(このセンスがいい!)
ロック史上最高の革新的問題作である(私はそう思ってます)
「SGT.Pepper's Lonely Hearts Club Band」から、
流れるようなオープニング3曲に、
ラストに、クラシックとオーケストラの壮絶な音の実験を試みた
“A Day In The Life”。
世界の若者に向けて発信された力強いメッセージ・ソング
“All You Need Is Love”。
ハードなロックンロールに回帰した“Lady Madonna”、
“Get Back”、“Revolution”。
作曲家としてジョンとポールに肩を並べたジョージの名作
“While My Guitar Gently Weeps”
“Here Comes The Sun”、“Something”。
そして、ビートルズの歴史を総括し、
名残惜しむかのように、
“Let It Be”、“The Long And Winding Road”で幕を閉じる。
「赤」と「青」共に、1枚の容量では到底詰め込めない、
比類なき重厚さは揺るぎない。
たったの8年弱で、
彼ら“FAB4”が、20代のうちに残した音楽的功績はあまりにも大きく、
その音楽的事件のひとつひとつを数え上げれば、
ほんときりがない。
驚くことに、ビートルズは60年代のバンドでありながらも、
今現在聴いても、古さを全く感じさせない。
掘っても掘っても奥深く、知れば知るほど知りたくなる。
そして、いつ聴いても、懐かしくもあり、新鮮でもある。
ロックの“絶対王者”ビートルズ。
いまだ風化せず、永遠に風化せず。
世界一有名な横断歩道とスタジオに何を思う。(後編)
ABBEY ROAD THE BEATLES

前回は、アビー・ロード・スタジオ売却の話題から話して参りましたが、
2月21日付の報道によると、この問題について、白紙に戻され、EMI側から、
アビー・ロード・スタジオを、今後も所有しておきたいとの意向を示し、
イギリス政府も、このスタジオを歴史的建造物として指定にして、
簡単に壊したり、改築することができなくなるようにするという。
莫大な負債を抱えているEMIの再生方法については、第3者と予備的な協議をしている
そうだけど、ポールが、「どうにかして、スタジオを救いたい」と、
何とか力になりたいとの、頼もしいコメントを発表してくれたのを筆頭に、
ミュージシャンの有志が、スタジオを何とか救おうと、声を上げてくれました。
嬉しいじゃありませんか。
“アビー・ロード・スタジオ”騒動は、一件落着しましたが、
改めて歴史を重んじる、イギリス国民の“早い決断力”に感動した次第です。
(あ~だこ~だ言って、ちっとも問題解決できない、どっかの島国とは違います)
前回は、あえて触れなかったんですが、「ABBEY ROAD」のジャケットの話を
しておいて、ビートルズ史上屈指の都市伝説である「ポール死亡説」について、
やはり触れないワケには参りません・・。

「ポール死亡説」(Paul is Dead)とは、1969年にアメリカ合衆国イリノイ州立大学の
学生新聞「ノーザン・スター」(同年9月23日付)に掲載された記事で、
『ポール・マッカートニーは1967年1月に自動車事故で死亡している』というものだ。
また、「今いるポールは替え玉だ」というガセネタを、FM局が発表してしまったんで、
アメリカを中心に広まってしまった都市伝説。 その替え玉が、あの「SGTペパー」の
“ビリー・シアーズ”だと言うガセネタも流れたけど、その年までに発売された
ビートルズのアルバムや楽曲に「証拠」として、こじつけの出来る箇所が数多く
見つかった結果、多くの人に信じられてしまった。
その“こじつけ”は、「SGTペパー」のジャケットくらいまで遡って、“研究”してるが、
ここでは、この騒動の発端となった「ABBEY ROAD」のジャケットを見てみよう。



1. 表ジャケットの写真で、ポールのみ裸足であり、これは死者を意味する。
(同日に撮られた別の写真では、サンダルを履いている。(トップの写真)
ポールは裸足になった理由を「ただ暑かったからさ」と述べている)
2. 表ジャケットの写真で、ポールのみが右脚を前に出しており(他の3人は左脚)、
ポールが遊離して見える(これは目立ちたがり屋のポールの発想という説がある)
3. 表ジャケットの写真で、本来左利きのポールが右手にタバコを持っており、
これはポールが替え玉である証拠である。
(しかし実際には「生前」のポールも右手で持つことがあった)
4. 表ジャケットの写真で、後方に写っているワーゲンのナンバー・プレート
「28IF」は、「もし(IF)ポールが生きていたら28歳だ」とのメッセージである
(実際には「281F」であり、しかも、1942年生まれのポールは当時27歳だった)
これに対して「東洋思想に傾倒していたビートルズは数え年を使用していた」
との、何とも無理やりな反論まであった。
5. 表ジャケットの写真は、ポールの葬列を意味していて、ジョンは神父、
リンゴは葬儀屋、ポールは死体、ジョージは墓堀り人夫を表している。
6. 表ジャケットの写真で、ポールが目をつぶって歩いている。
7. 裏ジャケットの写真の"THE BEATLES"と書かれたタイルにひびが入っており、
グループの分裂を暗示している。 しかもそのヒビは複数形の"S"に入ってある。
8. 上記の"THE BEATLES"の左側に黒く丸い跡のようなものがあるけど、
その8個の丸い跡を繋ぐと、ビートルズは「4」人だが「3」になる。
収録曲にも、あらぬ“こじつけ”が・・。
9. “Come Together”で、「♪One and One and One Is Three」
(1+1+1=3だ)と歌っている。
この意味は、上記の裏ジャケ跡の3と同じである。
10. “Something”を逆転再生すると、「♪Where the Beatles's Paul?」
(ビートルズのポールはどこに行った?)と聞こえる。
11. “Oh Darling”の、「Oh, Darlin'!」を逆回転させると、
「In Me Lives He.」(彼は私の中で生きてる)に聞こえ、
「Oh」を逆回転させると「Paul」と聞こえる。
など、まだ探せば出てきそうだけど、ここまで来ると、空耳も、ほとんど病気・・。
逆回転なんて発想は、いやはや、なんともアナログチックな発想といい、
(もし「ポールの替え玉」が、ほんとなら、この替え玉は、とんでもない奴だっての)
はっきり言って、これは、究極のこじつけと、奇跡的な“偶然の一致”に他ならない。
もちろん、ポールは、いまだにご健在でございます。
では、前回に引き続き、「ABBEY ROAD」B面から、再スタート致します。
「毎日Appleへ行くことが学校みたいになって、まるでビジネスマンのように
書類にサインばかりしてたよ。 でも、ある日決めたんだ。
サボっちゃおうって。 そして、エリック(クラプトン)の家に行って、
庭を散歩したよ。 経理の奴らの顔なんて見なくてもいいしさ。
ほんとに気が休まったよ。 そして、エリックにアコギを借りて書いたんだ」
おてんとさんが、ニコニコ、ポカポカ、こんにちは。
よほど天気も良く、気分も健やかだったんでしょう。
ジョージは、ここでも大傑作“Here Comes the Sun”を生み出します。
アコースティックな音色がシンプルに響くけど、実は凄く複雑な音の重なり
で構成されてる。 モーグ・シンセの異なる音色を数回オーヴァーダヴして、
メロディを色付けたり、陰影を付けたり、曲のコントラストを決めて、
オーケストラにコーラスも加えて、実に凝った音で出来てる。
(ここでも、“出たがり屋さん”のベース・ラインは非凡のセンスで歌います)
“Because”は、ビートルズの芳醇なコーラス・ヴォーカルが堪能できる。
ビートルズがコーラス・グループとしても大変優れていることを示す。
ジョン、ポール、ジョージの3人が各3パート歌い、それを3重に重ね合わせた
トータルで9パートの声が、緻密かつ完璧なピッチで、夢幻的空間を創り出す。
「僕は泣けてくるんだ。 だって、空が青いからさ・・。」
なんて素朴で美しいハーモニーなんだろう。
そして、ここからが「ABBEY ROAD」のハイライトである組曲が紡いでいく。
1曲1曲が独立して成立した曲はなく、歌われる内容にもテーマ性は全く無い。
(この脈絡のないメドレー方式は、「SGTペパー」に似てなくもないが・・)
部分的に未完成な曲が、そのままになっていたんで、これらを繋げるという
ポールの発案だが、ジョンは生前ギリギリまで、このメドレーは嫌いと言い切る。
ポールが、切なく「Appleのお金の議論」に愚痴ると、ジョンが、
夢の中で浮かんだ「太陽の王様」は、デタラメなスペイン語で浮遊して繋ぎ、
「ホームレスのすけべじじい」に、「ポリ袋で変態的プレイ」でダイナミックに
展開、(ポールのブースターをミックスしたファズ・ベースが唸りまくる)
「どの曲もクズみたいな曲」とバッサリ切られるジョンの曲群は、
このメドレーでは、なかなかいいポジションで貢献している。
ポールも負けじと、「彼の風呂場の窓から侵入してくる危ないファン」を
こきおろすように、グルーヴにのせてグイグイと引っ張り回すのだ。
メドレーは、リセットされて、ポールは鍵盤の前で、子守唄を弾き語る。
「昔は、帰り道もあったのに・・。」と、ストリングスがメロディを引き立てる。
しかし、彼らは、「とてつもない名声と責任を背負って生きていかねばならない」
と壮大に歌い上げる。 これは、自らが“ビートルズ”であったことに対する、
これからの“決意表明”だ。
リンゴの“初”であるドラム・ソロは、バスドラを響かせて、スリル感満点のまま、
ポール、ジョージ、ジョンの順で、ある意味“ヘタウマ”なギター・リレーに突入。
メロディックなポールに、職人的ジョージの巧さに、リズミカルなジョンの
それぞれの個性が、短くもバトルを繰り広げ、
「そして最後は、君が奪った愛は、君が与える愛と同じなんだ」と
哲学的メッセージを残し、ビートルズは終焉を迎えたのだった。
見事だ。 これぞ永遠のカタルシス。 あまりに美しい散り方であった。
(もともと、“Mean Mr. Mustard”と“Polythene Pam”の間に入れるはずだった
“Her Majesty”は、(いきなりジャ~ンって始まるのは、“Mean Mr. Mustard”
の最後の音だ) ラフ・ミックスの段階で、ポールが考えを変えて、
「やっぱ、よくないなぁ。 カットしといてくれ。」と指示されたエンジニアが、
テープをカットしたが、ポールが去った後、常々テープは、何でも
捨てるなって言われてたんで、そのテープに赤のリーダー・テープをつけて、
マスターの一番お尻にくっつけて置いてたらしい。 しかし次の日、
別のエンジニアが、プレイバック用のラッカー盤をカッティングする際に、
「“Her Majesty”は不要」って、箱の上に紙に書いて伝達してあったが、
「う~ん。何でも捨てるなって言われてるしなぁ」と、そのままにしておいた。
後で、それを聴いたポールが気に入って、そのまま採用となった。)

ラストに、今回リマスターされたステレオ・ミックスの音はどうなのか。
(このアルバムは、基本的にリアル・モノラル・ミックスは存在しない)
もともと、この「ABBEY ROAD」は、LP時代から音が良く、マスターの録音の良さが
際立っていたが、1986年の初CD化の時も、かなり素晴らしい音質で、当時
「おお~。これがCDの音か」と驚いたもんです。 なので、今回のリマスターに
先立ち、この「ABBEY ROAD」については、リマスタリングの効果は
あまり無いのでは、と思ってたんです。(一番期待していない作品でした)
ところがです。 今回のリマスターで、一番効果が高かったのがコレだったんです。
音の分離がはっきりした結果、ヴォーカル、コーラスの輪郭も浮き出て、
ポールの驚愕のベース・ラインが、更に際立つ、コレは、鳥肌もの。
これは今回のリマスター全般に言えることなんですが、音のエッジが円滑になって、
音が非常に滑らかに感じる。 そして、ノイズ感が非常に抑制されている。とはいえ、
必要なノイズはしっかり残っていて、(“I Want You”のヒスノイズはそのままだ)
不要なノイズだけを選択して抑えたって感じ。 だから、“とても聴き易い”し、
“耳に優しい”。 ”アビー・ロード7人衆”の一人であるガイ・マッセイが
「アナログ時代のLP時代の音に限りなく近づける」と言う目的が達成されてるのだ。
最後に、もう一度言います。
『 「ABBEY ROAD」は、ベースで聴け 』。

前回は、アビー・ロード・スタジオ売却の話題から話して参りましたが、
2月21日付の報道によると、この問題について、白紙に戻され、EMI側から、
アビー・ロード・スタジオを、今後も所有しておきたいとの意向を示し、
イギリス政府も、このスタジオを歴史的建造物として指定にして、
簡単に壊したり、改築することができなくなるようにするという。
莫大な負債を抱えているEMIの再生方法については、第3者と予備的な協議をしている
そうだけど、ポールが、「どうにかして、スタジオを救いたい」と、
何とか力になりたいとの、頼もしいコメントを発表してくれたのを筆頭に、
ミュージシャンの有志が、スタジオを何とか救おうと、声を上げてくれました。
嬉しいじゃありませんか。
“アビー・ロード・スタジオ”騒動は、一件落着しましたが、
改めて歴史を重んじる、イギリス国民の“早い決断力”に感動した次第です。
(あ~だこ~だ言って、ちっとも問題解決できない、どっかの島国とは違います)
前回は、あえて触れなかったんですが、「ABBEY ROAD」のジャケットの話を
しておいて、ビートルズ史上屈指の都市伝説である「ポール死亡説」について、
やはり触れないワケには参りません・・。

「ポール死亡説」(Paul is Dead)とは、1969年にアメリカ合衆国イリノイ州立大学の
学生新聞「ノーザン・スター」(同年9月23日付)に掲載された記事で、
『ポール・マッカートニーは1967年1月に自動車事故で死亡している』というものだ。
また、「今いるポールは替え玉だ」というガセネタを、FM局が発表してしまったんで、
アメリカを中心に広まってしまった都市伝説。 その替え玉が、あの「SGTペパー」の
“ビリー・シアーズ”だと言うガセネタも流れたけど、その年までに発売された
ビートルズのアルバムや楽曲に「証拠」として、こじつけの出来る箇所が数多く
見つかった結果、多くの人に信じられてしまった。
その“こじつけ”は、「SGTペパー」のジャケットくらいまで遡って、“研究”してるが、
ここでは、この騒動の発端となった「ABBEY ROAD」のジャケットを見てみよう。



1. 表ジャケットの写真で、ポールのみ裸足であり、これは死者を意味する。
(同日に撮られた別の写真では、サンダルを履いている。(トップの写真)
ポールは裸足になった理由を「ただ暑かったからさ」と述べている)
2. 表ジャケットの写真で、ポールのみが右脚を前に出しており(他の3人は左脚)、
ポールが遊離して見える(これは目立ちたがり屋のポールの発想という説がある)
3. 表ジャケットの写真で、本来左利きのポールが右手にタバコを持っており、
これはポールが替え玉である証拠である。
(しかし実際には「生前」のポールも右手で持つことがあった)
4. 表ジャケットの写真で、後方に写っているワーゲンのナンバー・プレート
「28IF」は、「もし(IF)ポールが生きていたら28歳だ」とのメッセージである
(実際には「281F」であり、しかも、1942年生まれのポールは当時27歳だった)
これに対して「東洋思想に傾倒していたビートルズは数え年を使用していた」
との、何とも無理やりな反論まであった。
5. 表ジャケットの写真は、ポールの葬列を意味していて、ジョンは神父、
リンゴは葬儀屋、ポールは死体、ジョージは墓堀り人夫を表している。
6. 表ジャケットの写真で、ポールが目をつぶって歩いている。
7. 裏ジャケットの写真の"THE BEATLES"と書かれたタイルにひびが入っており、
グループの分裂を暗示している。 しかもそのヒビは複数形の"S"に入ってある。
8. 上記の"THE BEATLES"の左側に黒く丸い跡のようなものがあるけど、
その8個の丸い跡を繋ぐと、ビートルズは「4」人だが「3」になる。
収録曲にも、あらぬ“こじつけ”が・・。
9. “Come Together”で、「♪One and One and One Is Three」
(1+1+1=3だ)と歌っている。
この意味は、上記の裏ジャケ跡の3と同じである。
10. “Something”を逆転再生すると、「♪Where the Beatles's Paul?」
(ビートルズのポールはどこに行った?)と聞こえる。
11. “Oh Darling”の、「Oh, Darlin'!」を逆回転させると、
「In Me Lives He.」(彼は私の中で生きてる)に聞こえ、
「Oh」を逆回転させると「Paul」と聞こえる。
など、まだ探せば出てきそうだけど、ここまで来ると、空耳も、ほとんど病気・・。
逆回転なんて発想は、いやはや、なんともアナログチックな発想といい、
(もし「ポールの替え玉」が、ほんとなら、この替え玉は、とんでもない奴だっての)
はっきり言って、これは、究極のこじつけと、奇跡的な“偶然の一致”に他ならない。
もちろん、ポールは、いまだにご健在でございます。
では、前回に引き続き、「ABBEY ROAD」B面から、再スタート致します。
「毎日Appleへ行くことが学校みたいになって、まるでビジネスマンのように
書類にサインばかりしてたよ。 でも、ある日決めたんだ。
サボっちゃおうって。 そして、エリック(クラプトン)の家に行って、
庭を散歩したよ。 経理の奴らの顔なんて見なくてもいいしさ。
ほんとに気が休まったよ。 そして、エリックにアコギを借りて書いたんだ」
おてんとさんが、ニコニコ、ポカポカ、こんにちは。
よほど天気も良く、気分も健やかだったんでしょう。
ジョージは、ここでも大傑作“Here Comes the Sun”を生み出します。
アコースティックな音色がシンプルに響くけど、実は凄く複雑な音の重なり
で構成されてる。 モーグ・シンセの異なる音色を数回オーヴァーダヴして、
メロディを色付けたり、陰影を付けたり、曲のコントラストを決めて、
オーケストラにコーラスも加えて、実に凝った音で出来てる。
(ここでも、“出たがり屋さん”のベース・ラインは非凡のセンスで歌います)
“Because”は、ビートルズの芳醇なコーラス・ヴォーカルが堪能できる。
ビートルズがコーラス・グループとしても大変優れていることを示す。
ジョン、ポール、ジョージの3人が各3パート歌い、それを3重に重ね合わせた
トータルで9パートの声が、緻密かつ完璧なピッチで、夢幻的空間を創り出す。
「僕は泣けてくるんだ。 だって、空が青いからさ・・。」
なんて素朴で美しいハーモニーなんだろう。
そして、ここからが「ABBEY ROAD」のハイライトである組曲が紡いでいく。
1曲1曲が独立して成立した曲はなく、歌われる内容にもテーマ性は全く無い。
(この脈絡のないメドレー方式は、「SGTペパー」に似てなくもないが・・)
部分的に未完成な曲が、そのままになっていたんで、これらを繋げるという
ポールの発案だが、ジョンは生前ギリギリまで、このメドレーは嫌いと言い切る。
ポールが、切なく「Appleのお金の議論」に愚痴ると、ジョンが、
夢の中で浮かんだ「太陽の王様」は、デタラメなスペイン語で浮遊して繋ぎ、
「ホームレスのすけべじじい」に、「ポリ袋で変態的プレイ」でダイナミックに
展開、(ポールのブースターをミックスしたファズ・ベースが唸りまくる)
「どの曲もクズみたいな曲」とバッサリ切られるジョンの曲群は、
このメドレーでは、なかなかいいポジションで貢献している。
ポールも負けじと、「彼の風呂場の窓から侵入してくる危ないファン」を
こきおろすように、グルーヴにのせてグイグイと引っ張り回すのだ。
メドレーは、リセットされて、ポールは鍵盤の前で、子守唄を弾き語る。
「昔は、帰り道もあったのに・・。」と、ストリングスがメロディを引き立てる。
しかし、彼らは、「とてつもない名声と責任を背負って生きていかねばならない」
と壮大に歌い上げる。 これは、自らが“ビートルズ”であったことに対する、
これからの“決意表明”だ。
リンゴの“初”であるドラム・ソロは、バスドラを響かせて、スリル感満点のまま、
ポール、ジョージ、ジョンの順で、ある意味“ヘタウマ”なギター・リレーに突入。
メロディックなポールに、職人的ジョージの巧さに、リズミカルなジョンの
それぞれの個性が、短くもバトルを繰り広げ、
「そして最後は、君が奪った愛は、君が与える愛と同じなんだ」と
哲学的メッセージを残し、ビートルズは終焉を迎えたのだった。
見事だ。 これぞ永遠のカタルシス。 あまりに美しい散り方であった。
(もともと、“Mean Mr. Mustard”と“Polythene Pam”の間に入れるはずだった
“Her Majesty”は、(いきなりジャ~ンって始まるのは、“Mean Mr. Mustard”
の最後の音だ) ラフ・ミックスの段階で、ポールが考えを変えて、
「やっぱ、よくないなぁ。 カットしといてくれ。」と指示されたエンジニアが、
テープをカットしたが、ポールが去った後、常々テープは、何でも
捨てるなって言われてたんで、そのテープに赤のリーダー・テープをつけて、
マスターの一番お尻にくっつけて置いてたらしい。 しかし次の日、
別のエンジニアが、プレイバック用のラッカー盤をカッティングする際に、
「“Her Majesty”は不要」って、箱の上に紙に書いて伝達してあったが、
「う~ん。何でも捨てるなって言われてるしなぁ」と、そのままにしておいた。
後で、それを聴いたポールが気に入って、そのまま採用となった。)

ラストに、今回リマスターされたステレオ・ミックスの音はどうなのか。
(このアルバムは、基本的にリアル・モノラル・ミックスは存在しない)
もともと、この「ABBEY ROAD」は、LP時代から音が良く、マスターの録音の良さが
際立っていたが、1986年の初CD化の時も、かなり素晴らしい音質で、当時
「おお~。これがCDの音か」と驚いたもんです。 なので、今回のリマスターに
先立ち、この「ABBEY ROAD」については、リマスタリングの効果は
あまり無いのでは、と思ってたんです。(一番期待していない作品でした)
ところがです。 今回のリマスターで、一番効果が高かったのがコレだったんです。
音の分離がはっきりした結果、ヴォーカル、コーラスの輪郭も浮き出て、
ポールの驚愕のベース・ラインが、更に際立つ、コレは、鳥肌もの。
これは今回のリマスター全般に言えることなんですが、音のエッジが円滑になって、
音が非常に滑らかに感じる。 そして、ノイズ感が非常に抑制されている。とはいえ、
必要なノイズはしっかり残っていて、(“I Want You”のヒスノイズはそのままだ)
不要なノイズだけを選択して抑えたって感じ。 だから、“とても聴き易い”し、
“耳に優しい”。 ”アビー・ロード7人衆”の一人であるガイ・マッセイが
「アナログ時代のLP時代の音に限りなく近づける」と言う目的が達成されてるのだ。
最後に、もう一度言います。
『 「ABBEY ROAD」は、ベースで聴け 』。
世界一有名な横断歩道とスタジオに何を思う。(前編)
ABBEY ROAD THE BEATLES

Come Together
Something
Maxwell's Silver Hammer
Oh! Darling
Octopus's Garden
I Want You (She's So Heavy)
Here Comes the Sun
Because
You Never Give Me Your Money
Sun King
Mean Mr. Mustard
Polythene Pam
She Came in Throught the Bathroom Window
Golden Slumbers
Carry That Weight
The End
Her Majesty
2月16日付のイギリスの報道によると、経営難の音楽大手EMIグループが、
あの「アビー・ロード・スタジオ」の売却を決めて、入札の募集を始めたそうだ。
これは、我々音楽ファン、ビートルズ・ファンには、悲しいニュースです。
あのビートルズの“聖地”である、あのスタジオが売りに出されるんですよ。
英EMIは2007年に欧州の投資ファンド「テラフォーマ」に買収されてるんだけど、
そこが、アメリカの金融大手シティ・グループから、33億ポンド(約4700億円)の借入
があって、今年の6月までに、1億2000万ポンドの返済を迫られているそうだ。

ビートルズの数々の作品はもちろん、ピンク・フロイドの「狂気」もそう。
EMI所属のブリテッシュ・ビートを初め、クラシックから映画音楽まで、
様々な音楽をレコーディングし、歴史を刻み続けた「EMIスタジオ」。
あの「アビー・ロード・スタジオ」です。 数千万ポンドの値が付く可能性もあると
いうけど、「アビー・ロード」という名称も含めて売却するかは不明らしいが。
ただ・・。 時代の流れなのか、運命なのか・・。
レコーディング技術の発達により、今はプロでもパソコンで音楽を作ってしまう時代。
やたら広くて、設備の揃ったスタジオでなくても、いい音楽ができてしまうこの時代。
莫大な負債を抱えたEMIにとっては、この設備維持事態に高いコストのかかるこの
スタジオなんか持ってても、“無用の長物”と考えるのは当然なのかなぁと・・。
昨年のビートルズの公式音源のリマスター作業という、“最後の大仕事”が終了して、
もう“お役御免”ってことなんでしょうか。
(今回リマスターを担当したアラン・ローズを始めとする、“アビー・ロード7人衆”
のエンジニア達は、どう思ってるんでしょう・・。)
時代にあきらめてるわけじゃないけど、やっぱ寂しいもんです。
この話題の前置きから、このアルバムの話をするのも“当然”の流れ。
ビートルズ事実上のラスト・アルバム「ABBEY ROAD」に、よろしくお付き合いを。
1969年8月8日、世界で最も有名なレコードアルバムのジャケットが撮影された。
4人が歩調を合わせて、横断歩道を渡る写真だけが全面に使われ、題名も文字もない。
このジャケットには、ビートルズ流の別れのあいさつが、さりげなく込められている。
なぜなら、4人が背を向けて歩いている横断歩道の後方には、ビートルズの
本拠地である、あの「アビー・ロード・スタジオ」があるのだ。
約10分間に6カット撮られた中から、5番目のカットが採用された。
(ちなみに、逆に歩いてるボツのカットも1枚載せておきます。)
撮影は、午前11時35分から行われた。ジョンの友人イアン・マクミランは、
スタジオ前にあるアビー・ロード(通り)の真ん中に脚立を立て、スタジオの門の
すぐ外にある横断歩道を4人が、3~4回往来するところを撮影した。
(もちろん好意的な警官が車を止めてくれたからだが、後方に写ってるパトカー
は、そのため。 あのワーゲンは隣のブロックに住んでた奴のもので、いつも
あそこに停めてたそうだ。 そのせいで、何度もナンバーを盗まれたらしい。)

若い時に友人とビートルズを夜通し語り合いながら、飲み続けたことがあるんだけど、
その友人が言うには、その時に、酔った私が言った言葉が忘れられないらしい。
『 「ABBEY ROAD」は、ベースで聴け。』
当の私はあまり記憶にないんだけど、友人はこれで、「ABBEY ROAD」の聴き方が
変わったらしい。 (これは“名言”じゃないな。 “迷言”かな。)
だから、今でも、このアルバムは、「ポールのアルバムだなぁ」って思う。
ほんとポールって、“出たがり屋”なんだよなぁ。
えっ。 “Come Together”も、あの“Something”もあるじゃないですか?
はい。 確かにそうです。
でも、よ~く聴いてみると、このアルバムに針を落とすと、(古い表現ですが)
まず飛び込んでくるのは、“Come Together”での不気味に響き渡るベース。
クールなんだけど、独創的なライン。 コレです。 リンゴのタムタムと
このポールのベース・ラインだけで、この曲の骨格は形成されてるけど、
この“出たがり屋”さんは、グイグイと曲をリードしていく。
無駄な音は削ぎ落として、ここでジョンの声は、トップでエコーする。
チャック・ベリーのパクリとかで、裁判沙汰になったけど、これは、
ジョン流のシニカルで皮肉たっぷりのリスペクト。 多めに見なきゃ。
しかし、あぶねぇ歌詞だ。 あの「シュッ!」って聴こえるのは、
「Shoot Me (俺に打ち込んでくれ)」。 何を?・・。
(「Me」は、ポールのベースが被っちゃって、聴こえにくいけど)
抽象的な歌詞でワケわかんないように、ごまかしてるけど、明らかに、コレは、
“ドラッグ・ソング”。 コカ・コーラってのは、コカインの俗語。
♪Come Together, Right Now, Over Me
(一緒にイこうぜ 今すぐに 俺の上でさ)
と、これまたSEXをほのめかすキメのフレーズ。 これで決まり。 鋭い。

「ホワイト・アルバム」の制作中に、当時の妻パティにインスパイアされた
ジョージがピアノでメロディーを作った。ポールが何かの曲をオーバーダビング
している間、誰もいないアビー・ロードの第1スタジオに入って作り始めたという。
「スラっと書けたけれど、真ん中の部分だけは決めるのに時間がかかった」
ジョージはスタジオで自作曲“Piggies”のハープシコード(チェンバロ)の部分を
練習している時、当時ジョージ・マーティンの助手だったクリス・トーマスに、
初めてメロディーを披露したそうだ。
「最高だね。何でその曲をやらないの」とトーマス。
「気に入ったかい、本当にいいと思うかい?」と顔をのぞいたジョージ。
しかし・・。
「あの曲は、ちょっとの間、保留にしたよ。
なんか簡単すぎて、あまりにもシンプルな曲に聞こえてしまうと思ったからさ」
“Something”は多くの歌手を魅了した。 あのジョンも“認めた”名曲。
レイ・チャールズはもとよりフランク・シナトラ、エルビス・プレスリーら150以上もの
優れたカバー・バージョンが生まれている。ジョージはスモーキー・ロビンソンと
ジェイムズ・ブラウンのカバーを気に入っていたそうだ。
「“Something”は突然現れたって感じだった。すごく美しいメロディーで、
構成もほんとによくできていて、とても気に入っているよ。」とポールも認める。
“レノン/マッカートニー王国”の下で、もがき苦しんでいた“第3の男”が、
遂に、あの2人を超えた曲を完成させたのだ。
そんなあまりに美しい超名曲でも、やはり、“出たがり屋”は出てきます。
あの見事なベース・ラインは、ビートルズの楽曲の中でもベスト3に入る名演奏。
(リンゴのタムタムとの濃厚な絡みも素晴らしい)
コレは、譜面の読めないポールが、勝手なニュアンスで生み出したライン
なんだけど、それにしては、あまりにも美しく独創的なフレーズの連続で、
ポールは、ベースで“歌ってる”んだけど、けっして、ジョージは“殺さない”し、
アルペジオをうまく使ったベース・ソロに近い、引っ張り具合といい、
天才とは、こういう人をいうんだと。
裏方に徹したポールほど頼もしいプレイヤーはいないと、ジョンもジョージも
きっと認めていたに違いないだろう。
次は、悪名高き「GET BACK セッション」で、何回も何回もトライするも、
結局ポールが納得できず、完成できなかった、ジョンもジョージも大嫌いな
“Maxwell's Silver Hammer”も、ここでは、やたら能天気に。しかも病的に。
彼はハンマーを振り下ろします。 そして、ニコニコ殺戮を繰り返すワケで・・。
そして、ポールのロックン・ロール魂復活の“Oh Darling”。 見事な歌いっぷりだ。
これは、“のっぽのサリー”や“I'm Down”以来久々の背筋がゾクゾクする
ポールのヴォーカルの波状攻撃だ。 (ジョンは、うまく歌えてないと皮肉るが)
彼は、50'Sあたりを意識して、フラれた男の悲しみを、切々とビートに乗せて、
喉を酷使して、シャウトする。 しかし、初期の勢いまかせで突っ走るのではなく、
もうアイドルではない、成熟した骨太なビートルズがドシッと固めている。
リンゴのラブリーな“Octopus's Garden”を挟んで、
ジョンの“I Want You (She's So Heavy)” で、再びヘヴィーにグルーヴする。
「♪お前が欲しい。 これほどまでに。 彼女は凄いのさ。 濃厚なんだ」
それを、ただ延々と繰り返すだけ。
(何がそんなにすんごいのかは、ご想像にまかせますが・・)
ヨーコさんへの強烈な求愛ソングは、シンプルかつ、実に複雑なリズムとライン。
ロックにて、「繰り返し」という表現方法は、最大の武器でもある。
聴き手に、ビートやグルーヴやノイズなんかで覚醒させる効果があり、それは、
ある意味、軽いマインド・コンロールでもあるのだ。
涼しげかと思うと、時に絶叫して突っ走る自由人ジョンを、これまた、
天才的センスと、“勘”の良さで、曲を自在にコントロールする自由人ポール。
この2人の思いつきのような変拍子の連続も慣れっこのように付いていく
ジョージとリンゴ。 8分にも及ぶヘヴィーなグルーヴの“繰り返し”は、
覚醒しきったビートルズからの、聴き手への“お誘い”なのだ。
え~い、くそ長い。 A面だけでこんなに書いちまった。
ジェット機の爆音のノイズの中で、延々グルーヴし続けるが、
「ここだ! ここでテープを切れ!」とジョンがエンジニアのジェフ・エメリックに
ミックスの段階で指示した為、針が飛んだように、突然バサりと曲は途切れる。
私も、ここで、いったん切ります。

Come Together
Something
Maxwell's Silver Hammer
Oh! Darling
Octopus's Garden
I Want You (She's So Heavy)
Here Comes the Sun
Because
You Never Give Me Your Money
Sun King
Mean Mr. Mustard
Polythene Pam
She Came in Throught the Bathroom Window
Golden Slumbers
Carry That Weight
The End
Her Majesty
2月16日付のイギリスの報道によると、経営難の音楽大手EMIグループが、
あの「アビー・ロード・スタジオ」の売却を決めて、入札の募集を始めたそうだ。
これは、我々音楽ファン、ビートルズ・ファンには、悲しいニュースです。
あのビートルズの“聖地”である、あのスタジオが売りに出されるんですよ。
英EMIは2007年に欧州の投資ファンド「テラフォーマ」に買収されてるんだけど、
そこが、アメリカの金融大手シティ・グループから、33億ポンド(約4700億円)の借入
があって、今年の6月までに、1億2000万ポンドの返済を迫られているそうだ。

ビートルズの数々の作品はもちろん、ピンク・フロイドの「狂気」もそう。
EMI所属のブリテッシュ・ビートを初め、クラシックから映画音楽まで、
様々な音楽をレコーディングし、歴史を刻み続けた「EMIスタジオ」。
あの「アビー・ロード・スタジオ」です。 数千万ポンドの値が付く可能性もあると
いうけど、「アビー・ロード」という名称も含めて売却するかは不明らしいが。
ただ・・。 時代の流れなのか、運命なのか・・。
レコーディング技術の発達により、今はプロでもパソコンで音楽を作ってしまう時代。
やたら広くて、設備の揃ったスタジオでなくても、いい音楽ができてしまうこの時代。
莫大な負債を抱えたEMIにとっては、この設備維持事態に高いコストのかかるこの
スタジオなんか持ってても、“無用の長物”と考えるのは当然なのかなぁと・・。
昨年のビートルズの公式音源のリマスター作業という、“最後の大仕事”が終了して、
もう“お役御免”ってことなんでしょうか。
(今回リマスターを担当したアラン・ローズを始めとする、“アビー・ロード7人衆”
のエンジニア達は、どう思ってるんでしょう・・。)
時代にあきらめてるわけじゃないけど、やっぱ寂しいもんです。
この話題の前置きから、このアルバムの話をするのも“当然”の流れ。
ビートルズ事実上のラスト・アルバム「ABBEY ROAD」に、よろしくお付き合いを。
1969年8月8日、世界で最も有名なレコードアルバムのジャケットが撮影された。
4人が歩調を合わせて、横断歩道を渡る写真だけが全面に使われ、題名も文字もない。
このジャケットには、ビートルズ流の別れのあいさつが、さりげなく込められている。
なぜなら、4人が背を向けて歩いている横断歩道の後方には、ビートルズの
本拠地である、あの「アビー・ロード・スタジオ」があるのだ。
約10分間に6カット撮られた中から、5番目のカットが採用された。
(ちなみに、逆に歩いてるボツのカットも1枚載せておきます。)
撮影は、午前11時35分から行われた。ジョンの友人イアン・マクミランは、
スタジオ前にあるアビー・ロード(通り)の真ん中に脚立を立て、スタジオの門の
すぐ外にある横断歩道を4人が、3~4回往来するところを撮影した。
(もちろん好意的な警官が車を止めてくれたからだが、後方に写ってるパトカー
は、そのため。 あのワーゲンは隣のブロックに住んでた奴のもので、いつも
あそこに停めてたそうだ。 そのせいで、何度もナンバーを盗まれたらしい。)

若い時に友人とビートルズを夜通し語り合いながら、飲み続けたことがあるんだけど、
その友人が言うには、その時に、酔った私が言った言葉が忘れられないらしい。
『 「ABBEY ROAD」は、ベースで聴け。』
当の私はあまり記憶にないんだけど、友人はこれで、「ABBEY ROAD」の聴き方が
変わったらしい。 (これは“名言”じゃないな。 “迷言”かな。)
だから、今でも、このアルバムは、「ポールのアルバムだなぁ」って思う。
ほんとポールって、“出たがり屋”なんだよなぁ。
えっ。 “Come Together”も、あの“Something”もあるじゃないですか?
はい。 確かにそうです。
でも、よ~く聴いてみると、このアルバムに針を落とすと、(古い表現ですが)
まず飛び込んでくるのは、“Come Together”での不気味に響き渡るベース。
クールなんだけど、独創的なライン。 コレです。 リンゴのタムタムと
このポールのベース・ラインだけで、この曲の骨格は形成されてるけど、
この“出たがり屋”さんは、グイグイと曲をリードしていく。
無駄な音は削ぎ落として、ここでジョンの声は、トップでエコーする。
チャック・ベリーのパクリとかで、裁判沙汰になったけど、これは、
ジョン流のシニカルで皮肉たっぷりのリスペクト。 多めに見なきゃ。
しかし、あぶねぇ歌詞だ。 あの「シュッ!」って聴こえるのは、
「Shoot Me (俺に打ち込んでくれ)」。 何を?・・。
(「Me」は、ポールのベースが被っちゃって、聴こえにくいけど)
抽象的な歌詞でワケわかんないように、ごまかしてるけど、明らかに、コレは、
“ドラッグ・ソング”。 コカ・コーラってのは、コカインの俗語。
♪Come Together, Right Now, Over Me
(一緒にイこうぜ 今すぐに 俺の上でさ)
と、これまたSEXをほのめかすキメのフレーズ。 これで決まり。 鋭い。

「ホワイト・アルバム」の制作中に、当時の妻パティにインスパイアされた
ジョージがピアノでメロディーを作った。ポールが何かの曲をオーバーダビング
している間、誰もいないアビー・ロードの第1スタジオに入って作り始めたという。
「スラっと書けたけれど、真ん中の部分だけは決めるのに時間がかかった」
ジョージはスタジオで自作曲“Piggies”のハープシコード(チェンバロ)の部分を
練習している時、当時ジョージ・マーティンの助手だったクリス・トーマスに、
初めてメロディーを披露したそうだ。
「最高だね。何でその曲をやらないの」とトーマス。
「気に入ったかい、本当にいいと思うかい?」と顔をのぞいたジョージ。
しかし・・。
「あの曲は、ちょっとの間、保留にしたよ。
なんか簡単すぎて、あまりにもシンプルな曲に聞こえてしまうと思ったからさ」
“Something”は多くの歌手を魅了した。 あのジョンも“認めた”名曲。
レイ・チャールズはもとよりフランク・シナトラ、エルビス・プレスリーら150以上もの
優れたカバー・バージョンが生まれている。ジョージはスモーキー・ロビンソンと
ジェイムズ・ブラウンのカバーを気に入っていたそうだ。
「“Something”は突然現れたって感じだった。すごく美しいメロディーで、
構成もほんとによくできていて、とても気に入っているよ。」とポールも認める。
“レノン/マッカートニー王国”の下で、もがき苦しんでいた“第3の男”が、
遂に、あの2人を超えた曲を完成させたのだ。
そんなあまりに美しい超名曲でも、やはり、“出たがり屋”は出てきます。
あの見事なベース・ラインは、ビートルズの楽曲の中でもベスト3に入る名演奏。
(リンゴのタムタムとの濃厚な絡みも素晴らしい)
コレは、譜面の読めないポールが、勝手なニュアンスで生み出したライン
なんだけど、それにしては、あまりにも美しく独創的なフレーズの連続で、
ポールは、ベースで“歌ってる”んだけど、けっして、ジョージは“殺さない”し、
アルペジオをうまく使ったベース・ソロに近い、引っ張り具合といい、
天才とは、こういう人をいうんだと。
裏方に徹したポールほど頼もしいプレイヤーはいないと、ジョンもジョージも
きっと認めていたに違いないだろう。
次は、悪名高き「GET BACK セッション」で、何回も何回もトライするも、
結局ポールが納得できず、完成できなかった、ジョンもジョージも大嫌いな
“Maxwell's Silver Hammer”も、ここでは、やたら能天気に。しかも病的に。
彼はハンマーを振り下ろします。 そして、ニコニコ殺戮を繰り返すワケで・・。
そして、ポールのロックン・ロール魂復活の“Oh Darling”。 見事な歌いっぷりだ。
これは、“のっぽのサリー”や“I'm Down”以来久々の背筋がゾクゾクする
ポールのヴォーカルの波状攻撃だ。 (ジョンは、うまく歌えてないと皮肉るが)
彼は、50'Sあたりを意識して、フラれた男の悲しみを、切々とビートに乗せて、
喉を酷使して、シャウトする。 しかし、初期の勢いまかせで突っ走るのではなく、
もうアイドルではない、成熟した骨太なビートルズがドシッと固めている。
リンゴのラブリーな“Octopus's Garden”を挟んで、
ジョンの“I Want You (She's So Heavy)” で、再びヘヴィーにグルーヴする。
「♪お前が欲しい。 これほどまでに。 彼女は凄いのさ。 濃厚なんだ」
それを、ただ延々と繰り返すだけ。
(何がそんなにすんごいのかは、ご想像にまかせますが・・)
ヨーコさんへの強烈な求愛ソングは、シンプルかつ、実に複雑なリズムとライン。
ロックにて、「繰り返し」という表現方法は、最大の武器でもある。
聴き手に、ビートやグルーヴやノイズなんかで覚醒させる効果があり、それは、
ある意味、軽いマインド・コンロールでもあるのだ。
涼しげかと思うと、時に絶叫して突っ走る自由人ジョンを、これまた、
天才的センスと、“勘”の良さで、曲を自在にコントロールする自由人ポール。
この2人の思いつきのような変拍子の連続も慣れっこのように付いていく
ジョージとリンゴ。 8分にも及ぶヘヴィーなグルーヴの“繰り返し”は、
覚醒しきったビートルズからの、聴き手への“お誘い”なのだ。
え~い、くそ長い。 A面だけでこんなに書いちまった。
ジェット機の爆音のノイズの中で、延々グルーヴし続けるが、
「ここだ! ここでテープを切れ!」とジョンがエンジニアのジェフ・エメリックに
ミックスの段階で指示した為、針が飛んだように、突然バサりと曲は途切れる。
私も、ここで、いったん切ります。
助けの叫びとアコギの隠れた魅力。
HELP! THE BEATLES

Help!
The Night Before
You've Got To Hide Your Love Away
I Need You
Another Girl
You're Going To Lose That Girl
Ticket To Ride
Act Naturally
It's Only Love
You Like Me Too Much
Tell Me What You See
I've Just Seen A Face
Yesterday
Dizzy Miss Lizzy
この“アイドル”4人の手旗信号は、「HELP」の文字じゃないんです。
左から読んで、「NUJV」。 ・・・。 なんのこっちゃ。
(ちなみに、このフォトは、着ているコートが左前合わせなんで、ネガが逆。
裏焼きから読んでも、「KPNU」となる。 いまだに理由は不明。)
実はそろそろ、ビートルズ・ネタにも筆休めしようかとも思ったんですが、
リマスター作品も、ステレオ、モノとも、一通り、耳に、脳裏に叩き込んだ今・・。
全体的な感想としては、やはり音質がクリアのなった事で、
ヴォーカルや各楽器の演奏が、以前よりもずっと聴き取りやすくなった。
ただ、ビートルズの本マスターは、APPLEの厳格な管理の下、保存状態も
痛みがほとんどなく、リマスターの基本作業である、ノイズの除去も
ごくわずかで済み、音圧の上げ下げや、立位バランスに神経を注いだ印象。
今まで埋もれがちだったアコースティック・ギターのストロークがハッキリ聴こえたり、
分離が良くなった事で、パーカッションのリズムパターンが良くわかったりなど、
ニンマリしっぱなし。 そして、深い。 ペンを置いて、浸ってしまった次第です。
ビートルズは、こういう音の隠し味の使い方が絶妙で、ほんと上手い。
既に、多くの方がレビューされてるんですが、専門的な内容や、楽曲ごとの
聴き比べは、気づいたとこが有り過ぎて、書き出したらキリがないんで、
評論家の方におまかせして。
(ちなみに、こんなサイト見つけました。 聴き比べに興味ある方はどうぞ。)
私なりの素人的感想は、簡単にまとめると。 (ステレオ盤の方)
1、アルバム別の録音レベル(音圧)の差が補正されている。
(旧CDと同じBGM程度のボリュームで聴いた時に、音痩せしない。)
2、ヴォーカルの立ち位置がはっきりして、控えめだったジョージのコーラスが
前に出ている曲がある。 (思っていた以上に、しっかりハモってる)
3、今まで聴こえなかった(埋もれていた)楽器の音が聴こえる。
(リンゴのリムを叩いてる音や、ビリー・プレストンのオルガンの音。
ジョンのカッティングや、ポールのピッキングのクセなんかまで、まるわかり。)
4、アナログ特有の少し奥の方から出てくるような音の感覚が蘇っている。
(曲間も、「SGT.ペパー」や「ホワイト・アルバム」で、アナログ盤の時の
タイミングに戻している。 う~ん、コレ。 この“間”ですよ。 懐かしい。)
5、ポールの初中期へフナー、後期のリッケンバッカーの音に臨場感が増していて
改めて、非凡な“歌うベース・ライン”の輪郭が、よりクッキリ、鮮明に。
6、極力、リミックスせず(ホントにやってないのかな~・・?)、自然な音に
(スピーカーの前で演奏してるような)、限りなく近づいた(のかな。)
モノラル盤は、ステレオ盤とは性格も作りも違う。 きっちり区別して聴くべし。
ビートルズが公式発表した全オリジナル・モノラル録音185曲。
そもそも、ビートルズの曲は途中までモノラルで聴かれることを前提に録音され、
ミックスしていたため、「モノラル重視の初中期の作品は、モノラルで聴いてこそ、
真価が発揮される」と思っているファンも少なくないのはご存じの通り。
今回のリマスター音源は、ステレオ、モノ共、ヘッドホンで聴き比べたけど、
モノラルの出来の良さに、みんなの絶賛の声が多いようで。 ただ私見では、
「曲によって良し悪しがある。」ってのが、正直なとこ。 (初期の作品は見事。)
今回のモノラル盤は、全体的に音に厚みが増し、(音圧がハンパない。 凄すぎ。)
ノイズを除去した分、ヴォーカル、楽器の各パーツに艶と張りが出て、生々しい。
また、旧CDのモノラル盤にあった、高音のシャリシャリ感も消え、自然に近い。
“音の塊”が団子になって、隙間無く、こちらに正面からドーンと飛んでくる印象。
旧CDの初期のモノラル盤とは全く別物。 やはり、持って置いて損なし。
モノラル盤の紙ジャケ(UK、US盤のBOXセットも)は、世界に冠たる日本製。
素晴らしい。 エクセレント。 ブラボー。 これぞ、匠の技術。
これで「ABBEY ROAD」と「LET IT BE」も、もしあったら・・と、心底思います。
それに比べ、ステレオ盤の雑なこと・・。 何とかなんなかったのかなぁ。
中身が素晴らしいだけに、デジパックの作りや写真製版のいい加減さなど、
愛が感じられません。 全く・・。 “愛こそはすべて”なのに。
リマスター・レビューついでに、この「HELP!」のリマスター盤について書くと・・。
今回のステレオ版リマスターに採用されたのは、「RUBER SOUL」同様、87年に、
初CD化の際にジョージ・マーティンがミックスし直した方。(87年版)
(65年オリジナル・アナログ当時のステレオ版は、今回、モノラル版と共に、
リマスターされて、MONO BOXに収録されている。)
オリジナル・ステレオ版は、いわゆる、泣き別れステレオ・ミックス。
主に、ヴォーカルを右、楽器を左というように、音が左右に極端に分かれていて、
(「RUBER SOUL」は、もっとヒドい。)
ヘッドフォンなどで聴くと自分の左右の真横に分かれて演奏しているような感じで
立体感に欠けるし、“You've Got To Hide Your Love Away”で、ジョンの
ヴォーカルの位置が不安定だったりするなど、気になる点も多々あった。
(しかし私は、“この音”でビートルズを学んだんで、馴染み深いのは、こっち)
87年版は、全体に音が中央寄りに修正され、一体感と自然さが増している。
一般的な普及音源としては、聴きやすさという点でも、初CD化以来、
22年間にも渡り、「標準」として、これに慣れ親しんだ人も多いという点からも、
この87年版を今回のステレオ版のリマスター・ベースとしたのは正解だと思う。
リマスターの話をはさんでしまいましたが、「HELP!」の話、続けてまいります。

邦題「4人はアイドル」。 しかし、このアルバムは”脱・アイドル宣言”といった内容。
やらされちゃってたワケですから・・。 アーチストとしての自立の一歩というか、
この辺りから、“あの2人”の目指す方向は別々を向いていくことになるわけで。
映画は、おちゃらけたコメディ・タッチの世界中を股にした“鬼ごっこ”を展開する、
他愛もない内容の(けっこう楽しんでるようだけど)、どうってことないアイドル映画。
(しかし、リチャード・レスター監督は、ビートルズの演奏を上手く撮ってる。
この映画でも、“You're Going To Lose That Girl”での、美しい光と影、
それに絡む煙の模様と、彼らのコントラストが、実に見事。 よく知ってる人です。)
「HELP!(助けてくれ!)」。 まぎれもない、心の叫びだ。
当時、人気絶頂で、行動やしぐさ、発言の一字一句、やることなすこと、すべて、
取上げられることに、ジョンがストレスに感じてきたことは確か。
ファンの歓声ひとつでスイッチが入ったり、切れたりするポールとは違う。
アイドルを演じることの苦悩、いらだち、自己認識、世間とのギャップ・・。
ジョンは、ふと過ぎるそんな思いを、マリファナの煙と共に振り払っていたんだろう。
ジョンはこの曲の歌詞に誇りを持っていた。 本当に助けを求めていたそうだ。
しかし、後にこんなことを回想してる。 作りに後悔してると。
「テンポが早過ぎた。 コマ-シャル(売れ線)にしようとしてさ・・。」
確かに、人気絶頂のアイドルにブル-ジ-な曲は要らない。
そう。 前作「FOR SALE」辺りから、内省的気配を漂わせ始めたジョン。
ボブ・ディランの影響も大きかった。 ディラン抜きでは語れない。
感覚が、どんどん研ぎ澄まされていく彼に、ディランの精神は、まさに教科書。
この“Help!”の深層心理も、“You've Got To Hide Your Love Away”での、
フォーク・ロックの新境地開拓も、時代の寵児同志、必然のように導かれたのかも。
逆に、ポールはこのアルバム辺りから、神懸り的なメロディを量産し始め、
ベースのみならず、マルチ・プレイヤーとしての才能、実力を発揮し出す。
しかし、“Yesterday”の前座的位置に座る“I've Just Seen A Face”は、
ポールのフォーク風味とアコギのセンスがキラリと光る、隅に置けない一曲。
ポール、ジョン、ジョージ3人とも、アコギを爪弾き、ベースレスにした代わりに、
12弦をうまく絡めるなんて、ポールの非凡なとこ。 イントロの3本の絡み方にしろ、
コードは、たった4つしか使ってないのに、実にスムーズで魅せられるラインだ。
リズム、頭韻にも無理がなく、サビの前のスキャットもぴったり。
最高の仕上がりだ。 ポールの隠れ名曲のひとつに数えていい。
そして、“Yesterday”は、やっぱり特別な曲。 避けては通れない。
ポールを批判する奴らにも、この曲には、何かしら、特別な思いがあるはず。
ストリングスをバックにしたこの美しいメロディは、すべてを黙らせたのだ。
シンプルな二部構成で成り立つメロディの覚えやすさ、哀愁ただよう雰囲気から、
もの憂げなアコギの旋律と弦楽四重奏が感傷度を高めて、孤独感を誘う。
しかし、ポールは、さらりと歌う。 シンプルに。 ただせつなく。
「泣かせよう」なんて、わざとらしさはない。 ただ素直に心から歌う。
この“等身大のポール”が、この“Yesterday”の偉大さなんだと思う。
ジョンの“You've Got To Hide Your Love Away”と、ポールの“Yesterday”。
このアコースティックなこの2曲を比べてみると、実に興味深い。
同じ「孤独」というキーワードでも、この2人ではエラい違いだ。
毒のあるトーンで、屈折した心情と引き裂かれた感情を吐露するジョン。
センチなロマンスが、突然、夢に変わるという現実に置き去られたポール。
ポールはより高く、もっと高く。 ジョンはより深く、もっと深く。
道は別れるも、よりアーチスティックな方向へ向かって成長していくことになる。

Help!
The Night Before
You've Got To Hide Your Love Away
I Need You
Another Girl
You're Going To Lose That Girl
Ticket To Ride
Act Naturally
It's Only Love
You Like Me Too Much
Tell Me What You See
I've Just Seen A Face
Yesterday
Dizzy Miss Lizzy
この“アイドル”4人の手旗信号は、「HELP」の文字じゃないんです。
左から読んで、「NUJV」。 ・・・。 なんのこっちゃ。
(ちなみに、このフォトは、着ているコートが左前合わせなんで、ネガが逆。
裏焼きから読んでも、「KPNU」となる。 いまだに理由は不明。)
実はそろそろ、ビートルズ・ネタにも筆休めしようかとも思ったんですが、
リマスター作品も、ステレオ、モノとも、一通り、耳に、脳裏に叩き込んだ今・・。
全体的な感想としては、やはり音質がクリアのなった事で、
ヴォーカルや各楽器の演奏が、以前よりもずっと聴き取りやすくなった。
ただ、ビートルズの本マスターは、APPLEの厳格な管理の下、保存状態も
痛みがほとんどなく、リマスターの基本作業である、ノイズの除去も
ごくわずかで済み、音圧の上げ下げや、立位バランスに神経を注いだ印象。
今まで埋もれがちだったアコースティック・ギターのストロークがハッキリ聴こえたり、
分離が良くなった事で、パーカッションのリズムパターンが良くわかったりなど、
ニンマリしっぱなし。 そして、深い。 ペンを置いて、浸ってしまった次第です。
ビートルズは、こういう音の隠し味の使い方が絶妙で、ほんと上手い。
既に、多くの方がレビューされてるんですが、専門的な内容や、楽曲ごとの
聴き比べは、気づいたとこが有り過ぎて、書き出したらキリがないんで、
評論家の方におまかせして。
(ちなみに、こんなサイト見つけました。 聴き比べに興味ある方はどうぞ。)
私なりの素人的感想は、簡単にまとめると。 (ステレオ盤の方)
1、アルバム別の録音レベル(音圧)の差が補正されている。
(旧CDと同じBGM程度のボリュームで聴いた時に、音痩せしない。)
2、ヴォーカルの立ち位置がはっきりして、控えめだったジョージのコーラスが
前に出ている曲がある。 (思っていた以上に、しっかりハモってる)
3、今まで聴こえなかった(埋もれていた)楽器の音が聴こえる。
(リンゴのリムを叩いてる音や、ビリー・プレストンのオルガンの音。
ジョンのカッティングや、ポールのピッキングのクセなんかまで、まるわかり。)
4、アナログ特有の少し奥の方から出てくるような音の感覚が蘇っている。
(曲間も、「SGT.ペパー」や「ホワイト・アルバム」で、アナログ盤の時の
タイミングに戻している。 う~ん、コレ。 この“間”ですよ。 懐かしい。)
5、ポールの初中期へフナー、後期のリッケンバッカーの音に臨場感が増していて
改めて、非凡な“歌うベース・ライン”の輪郭が、よりクッキリ、鮮明に。
6、極力、リミックスせず(ホントにやってないのかな~・・?)、自然な音に
(スピーカーの前で演奏してるような)、限りなく近づいた(のかな。)
モノラル盤は、ステレオ盤とは性格も作りも違う。 きっちり区別して聴くべし。
ビートルズが公式発表した全オリジナル・モノラル録音185曲。
そもそも、ビートルズの曲は途中までモノラルで聴かれることを前提に録音され、
ミックスしていたため、「モノラル重視の初中期の作品は、モノラルで聴いてこそ、
真価が発揮される」と思っているファンも少なくないのはご存じの通り。
今回のリマスター音源は、ステレオ、モノ共、ヘッドホンで聴き比べたけど、
モノラルの出来の良さに、みんなの絶賛の声が多いようで。 ただ私見では、
「曲によって良し悪しがある。」ってのが、正直なとこ。 (初期の作品は見事。)
今回のモノラル盤は、全体的に音に厚みが増し、(音圧がハンパない。 凄すぎ。)
ノイズを除去した分、ヴォーカル、楽器の各パーツに艶と張りが出て、生々しい。
また、旧CDのモノラル盤にあった、高音のシャリシャリ感も消え、自然に近い。
“音の塊”が団子になって、隙間無く、こちらに正面からドーンと飛んでくる印象。
旧CDの初期のモノラル盤とは全く別物。 やはり、持って置いて損なし。
モノラル盤の紙ジャケ(UK、US盤のBOXセットも)は、世界に冠たる日本製。
素晴らしい。 エクセレント。 ブラボー。 これぞ、匠の技術。
これで「ABBEY ROAD」と「LET IT BE」も、もしあったら・・と、心底思います。
それに比べ、ステレオ盤の雑なこと・・。 何とかなんなかったのかなぁ。
中身が素晴らしいだけに、デジパックの作りや写真製版のいい加減さなど、
愛が感じられません。 全く・・。 “愛こそはすべて”なのに。
リマスター・レビューついでに、この「HELP!」のリマスター盤について書くと・・。
今回のステレオ版リマスターに採用されたのは、「RUBER SOUL」同様、87年に、
初CD化の際にジョージ・マーティンがミックスし直した方。(87年版)
(65年オリジナル・アナログ当時のステレオ版は、今回、モノラル版と共に、
リマスターされて、MONO BOXに収録されている。)
オリジナル・ステレオ版は、いわゆる、泣き別れステレオ・ミックス。
主に、ヴォーカルを右、楽器を左というように、音が左右に極端に分かれていて、
(「RUBER SOUL」は、もっとヒドい。)
ヘッドフォンなどで聴くと自分の左右の真横に分かれて演奏しているような感じで
立体感に欠けるし、“You've Got To Hide Your Love Away”で、ジョンの
ヴォーカルの位置が不安定だったりするなど、気になる点も多々あった。
(しかし私は、“この音”でビートルズを学んだんで、馴染み深いのは、こっち)
87年版は、全体に音が中央寄りに修正され、一体感と自然さが増している。
一般的な普及音源としては、聴きやすさという点でも、初CD化以来、
22年間にも渡り、「標準」として、これに慣れ親しんだ人も多いという点からも、
この87年版を今回のステレオ版のリマスター・ベースとしたのは正解だと思う。
リマスターの話をはさんでしまいましたが、「HELP!」の話、続けてまいります。

邦題「4人はアイドル」。 しかし、このアルバムは”脱・アイドル宣言”といった内容。
やらされちゃってたワケですから・・。 アーチストとしての自立の一歩というか、
この辺りから、“あの2人”の目指す方向は別々を向いていくことになるわけで。
映画は、おちゃらけたコメディ・タッチの世界中を股にした“鬼ごっこ”を展開する、
他愛もない内容の(けっこう楽しんでるようだけど)、どうってことないアイドル映画。
(しかし、リチャード・レスター監督は、ビートルズの演奏を上手く撮ってる。
この映画でも、“You're Going To Lose That Girl”での、美しい光と影、
それに絡む煙の模様と、彼らのコントラストが、実に見事。 よく知ってる人です。)
「HELP!(助けてくれ!)」。 まぎれもない、心の叫びだ。
当時、人気絶頂で、行動やしぐさ、発言の一字一句、やることなすこと、すべて、
取上げられることに、ジョンがストレスに感じてきたことは確か。
ファンの歓声ひとつでスイッチが入ったり、切れたりするポールとは違う。
アイドルを演じることの苦悩、いらだち、自己認識、世間とのギャップ・・。
ジョンは、ふと過ぎるそんな思いを、マリファナの煙と共に振り払っていたんだろう。
ジョンはこの曲の歌詞に誇りを持っていた。 本当に助けを求めていたそうだ。
しかし、後にこんなことを回想してる。 作りに後悔してると。
「テンポが早過ぎた。 コマ-シャル(売れ線)にしようとしてさ・・。」
確かに、人気絶頂のアイドルにブル-ジ-な曲は要らない。
そう。 前作「FOR SALE」辺りから、内省的気配を漂わせ始めたジョン。
ボブ・ディランの影響も大きかった。 ディラン抜きでは語れない。
感覚が、どんどん研ぎ澄まされていく彼に、ディランの精神は、まさに教科書。
この“Help!”の深層心理も、“You've Got To Hide Your Love Away”での、
フォーク・ロックの新境地開拓も、時代の寵児同志、必然のように導かれたのかも。
逆に、ポールはこのアルバム辺りから、神懸り的なメロディを量産し始め、
ベースのみならず、マルチ・プレイヤーとしての才能、実力を発揮し出す。
しかし、“Yesterday”の前座的位置に座る“I've Just Seen A Face”は、
ポールのフォーク風味とアコギのセンスがキラリと光る、隅に置けない一曲。
ポール、ジョン、ジョージ3人とも、アコギを爪弾き、ベースレスにした代わりに、
12弦をうまく絡めるなんて、ポールの非凡なとこ。 イントロの3本の絡み方にしろ、
コードは、たった4つしか使ってないのに、実にスムーズで魅せられるラインだ。
リズム、頭韻にも無理がなく、サビの前のスキャットもぴったり。
最高の仕上がりだ。 ポールの隠れ名曲のひとつに数えていい。
そして、“Yesterday”は、やっぱり特別な曲。 避けては通れない。
ポールを批判する奴らにも、この曲には、何かしら、特別な思いがあるはず。
ストリングスをバックにしたこの美しいメロディは、すべてを黙らせたのだ。
シンプルな二部構成で成り立つメロディの覚えやすさ、哀愁ただよう雰囲気から、
もの憂げなアコギの旋律と弦楽四重奏が感傷度を高めて、孤独感を誘う。
しかし、ポールは、さらりと歌う。 シンプルに。 ただせつなく。
「泣かせよう」なんて、わざとらしさはない。 ただ素直に心から歌う。
この“等身大のポール”が、この“Yesterday”の偉大さなんだと思う。
ジョンの“You've Got To Hide Your Love Away”と、ポールの“Yesterday”。
このアコースティックなこの2曲を比べてみると、実に興味深い。
同じ「孤独」というキーワードでも、この2人ではエラい違いだ。
毒のあるトーンで、屈折した心情と引き裂かれた感情を吐露するジョン。
センチなロマンスが、突然、夢に変わるという現実に置き去られたポール。
ポールはより高く、もっと高く。 ジョンはより深く、もっと深く。
道は別れるも、よりアーチスティックな方向へ向かって成長していくことになる。
本当の“ミート”・ザ・ビートルズは?
YESTERDAY AND TODAY THE BEATLES

(A) Drive My Car
I'm Only Sleeping
Nowhere Man
Dr. Robert
Yesterday
Act Naturally
(B) And Your Bird Can Thing
If I Needed Someone
We Can Work It Out
What Goes On
Day Tripper
びっくりしました?
いきなりアップしたら、やっぱキツイわ、コレ・・。
リマスター騒ぎも、かなり落ち着いてきたようですが、今回のリマスターは
概ね好意的にとらえられてる声が多いのではないでしょうか。
私はと申しますと・・・。 う~ん・・。 良しとしましょう・・かな・・。
って感じ。
ただ、この音に慣れるには、ちょっと時間がかかりそう。 良くも悪くも。
では、今回のリマスターは、・・・と書きたいとこですが。
ひねくれ者の小生。 真逆のネタでまいります。 それも究極のアイテムで。
「YESTERDAY AND TODAY」。 米CAPITOLの最凶のビートルズ・アルバム。
米CAPITOLは、英国で発売されるオリジナル・アルバムから2、3曲削って
アルバムを発売し、削った曲がたまったら編集盤を出す方式をとっていました。
なんと、たくましい商魂。 アーチストの意向もコンセプトも、まるで無視。
アルバムが枚数だけ水増しされて、それが大ヒットする。 ボロ儲けです。
なので、決まって、
「CAPITOLがビートルズのアルバムを切り張りし、勝手に編集する事への反発」が、
この不気味なジャケットのコンセプト。 みたいな事がよく書かれています。
私も最初は、この“立て板に水”の様な理屈に納得していたのですが、思えば、
CAPITOLのオリジナル編集盤は大抵が数多いフォト・セッションからCAPITOLが、
勝手に写真を選んで、ジャケットを制作していました。 (これもどうかと思うけど)
おかしい。 CAPITOLへの抗議だったら、発売しなきゃいいんです。
“ビートルズの反骨心”的な理由はファンにとってはカッコイイ理由ですが、
これは、間違ってます。
通称“ブッチャー・カバー”。
なんとも、不気味で趣味の悪いジャケット・デザインだ。
食肉工場になぞられたデザインで、白衣をまとったビートルズのひざや肩の上に、
人形の首や胴体、血が滴り落ちた肉片が置かれていた。
メンバーもニッコリして・・。

では、なぜこのジャケットは撮影され、そのまま発売されてしまったのか。
問題のフォトは66年3月25日、豪州の写真家ロブ・ウィティカーによって撮影された。
「ポップ・スターのオーソドックスな宣伝写真の常識を思い切り破壊するものを
撮りたかった。」と、後に彼は答えている。 彼のアイデアが採用されたのだ。
しかし、4人の反応には、それぞれ温度差があったが、ジョンはノリノリだった様子。
ジョンがこう理由を述べる。 「あれをアルバムのカバーに使おうと言ったのは、
何より(天使みたいな僕たちの)イメージを壊したかったからだ。」

ジョンは、さらに続ける。
「いつも普段通りの自分に見せなきゃいけない、フォト・セッションを“重労働”に
感じて、嫌気がさしていたんだ。 そこへ、写真家ウィティカーが赤ん坊の人形や肉や
白衣を持ち込んできたよ。 「イェー!」って感じだったぜ。」
ポールも飛びついた。
「彼(ウィティカー)が本当のところ何を言いたかったのか、よくわからなかった。
でもともかく、他の人たちが僕らにやらせたがっていたことよりは独創性があった。」
だが、ジョージは悪趣味に閉口した。
「無知で馬鹿らしいだけのことを、クールでヒップ(かっこいい)だと勘違いしてね。
あれもそのひとつだった。 だけどあの場合、グループの1人として協力せざるを
得ない状況だった。」
リンゴは達観していた。
「僕らの目を見れば、自分たちのやっていることを誰1人わかってないのが明らかさ。
人生を生きていくうちにはそういうこともあるんだよ。」
出来上がった写真を見たマネジャーのブライアン・エプスタインは仰天した。
「ビートルズに肉屋の格好をさせるのは何事だ!」と激怒し、(そりゃ当然です)
バンドのイメージを守るために、フィルムの破棄を要求したそうだ。
実は、ブッチャー写真は裏ジャケットに使用する構想だったという。
12インチのジャケットの中央に2.25インチくらいの大きさに収めようとしていた。
表ジャケットは、ソーセージを持っているビートルズの写真。
ソーセージはへその緒を意味し、女性とつながっている作品に仕立てたかった。
だから、ウィティカーに言わせれば、CAPITOLがブッチャー写真だけ採用したために
作品全体の意味が理解されず、「混乱を招き、みんな慌てた」という説明になる。
(この写真を勝手にチョイスしたCAPITOLの理由は不明なんだけど)
「こんなものを出せるか!」 当時のCAPITOL社長だったアラン・リビングストンは
出来上がったジャケット写真を見て即座に思った。 会社幹部も青くなったそうだ。
しかし、早速ロンドンにいたブライアン・エプスタインに電話すると、
ビートルズがその写真を使いたがっているという。 OKというしかなかった・・。
撮影から約2カ月後の6月3日、英国の音楽誌「ニュー・ミュージカル・エクスプレス」に
新曲“Paperback Writer/Rain”の全ページ広告で、ブッチャー写真が初登場した。
ジョンの「キリスト発言」と同様、英国では、なぜか特に問題にならなかった。
しかし、アルバムを発売する米国内での反応は違った。 すさまじいブーイングだ。
初回出荷70万枚を予定していたが、6月15日の発売直前になると、
CAPITOLには「取り扱いを拒否する」といった、小売業者から抗議の電話が殺到した。
これは、まずい・・。 だが、リビングストンはビートルズと直接交渉するも、
彼らは「これは戦争に対する僕らの意思表示なんだ」とまで主張したという。
リビングストンは悩んだ・・。 結局、無用な騒動は避けたいし、
ビートルズの評判に傷もつけたくない、という理由で回収を決断した。
回収後、“ブッチャー・カバー”はほとんど処分されたが、作業時間の節約のために、
CAPITOLは社員を1週間動員し、カバーを別の写真に取り換えた。
ブッチャー・カバーのジャケットの上に新しいジャケットを貼って発売されたもので、
(いわゆる“トランク・カバー”と呼ばれるもの)、今あるほとんどのものが、
このジャケットに蒸気をあててのり付けされた写真を剥がしたものだ。
だが、一部は回収できずに出回ってしまった。 市場に流れたこれらの“珍品”は、
有名なコレクターズ・アイテムとして現在も高値で取引されている。
発売日から5日後の6月20日、旅行用のトランクを小道具に使った“トランク・カバー”と
呼ばれるジャケットに差し替えられた「YESTERDAY AND TODAY」が
店頭に並んだ。
このカバーもウィティカーの手によるものだ。

これが、ブッチャー・カバーの撮影、発売、回収騒ぎの一部始終だ。
それは、CAPITOLへの反発ではなく、作られてしまったイメージへの反発だった。
このジャケットの話ばかりになってしまったんで、収録曲の話が、
ほとんど飛んでしまったけど、“Yesterday”をアルバム収録するがための
(アメリカ版「HELP!」は、サントラ仕様で全く別物なので、
“Yesterday”は未収録)
勝手な編集盤で、ビートルズからすると、ほんとにひどい代物だ。
(アメリカ版「RUBER SOUL」のオープニングは、オリジナル版「HELP!」収録の
ポール風フォーク・ウエスタンの傑作“I've Just Seen A Face”で、
B面がジョンが最も嫌いな曲と言ってた、同じくオリジナル版「HELP!」収録の
“It's Only Love”から始まる。 開いた口が塞がりません。)
しかも、「REVOLVER」収録のジョンの3曲は、英国本家の発売より6週間も
先にフライングして発表されてしまった形に。 だから、アメリカ版「REVOLVER」は
ポールとジョージ色が強くなってしまってる。 これじゃ、大傑作が台無しです。
(発売までに、本国からステレオのマスターが届かなかったために、CAPITOLは
モノラル・マスターを機械的に無理やりステレオ分配させて(擬似ステレオ)、
ステレオ盤に収録していた。 CAPITOLって、ジョンに何か恨みでもあるの?)
かく小生、このブッチャー・カバーなど、所有しておりません。
(高音質のブートレグでなら所有しておりますが・・。)
こんなものに大金を出すくらいなら、英PARLOPHONEのオリジナル盤を揃えます。
そろそろ、ちゃんとリマスター盤のレビューしなくては・・。

(A) Drive My Car
I'm Only Sleeping
Nowhere Man
Dr. Robert
Yesterday
Act Naturally
(B) And Your Bird Can Thing
If I Needed Someone
We Can Work It Out
What Goes On
Day Tripper
びっくりしました?
いきなりアップしたら、やっぱキツイわ、コレ・・。
リマスター騒ぎも、かなり落ち着いてきたようですが、今回のリマスターは
概ね好意的にとらえられてる声が多いのではないでしょうか。
私はと申しますと・・・。 う~ん・・。 良しとしましょう・・かな・・。
って感じ。
ただ、この音に慣れるには、ちょっと時間がかかりそう。 良くも悪くも。
では、今回のリマスターは、・・・と書きたいとこですが。
ひねくれ者の小生。 真逆のネタでまいります。 それも究極のアイテムで。
「YESTERDAY AND TODAY」。 米CAPITOLの最凶のビートルズ・アルバム。
米CAPITOLは、英国で発売されるオリジナル・アルバムから2、3曲削って
アルバムを発売し、削った曲がたまったら編集盤を出す方式をとっていました。
なんと、たくましい商魂。 アーチストの意向もコンセプトも、まるで無視。
アルバムが枚数だけ水増しされて、それが大ヒットする。 ボロ儲けです。
なので、決まって、
「CAPITOLがビートルズのアルバムを切り張りし、勝手に編集する事への反発」が、
この不気味なジャケットのコンセプト。 みたいな事がよく書かれています。
私も最初は、この“立て板に水”の様な理屈に納得していたのですが、思えば、
CAPITOLのオリジナル編集盤は大抵が数多いフォト・セッションからCAPITOLが、
勝手に写真を選んで、ジャケットを制作していました。 (これもどうかと思うけど)
おかしい。 CAPITOLへの抗議だったら、発売しなきゃいいんです。
“ビートルズの反骨心”的な理由はファンにとってはカッコイイ理由ですが、
これは、間違ってます。
通称“ブッチャー・カバー”。
なんとも、不気味で趣味の悪いジャケット・デザインだ。
食肉工場になぞられたデザインで、白衣をまとったビートルズのひざや肩の上に、
人形の首や胴体、血が滴り落ちた肉片が置かれていた。
メンバーもニッコリして・・。

では、なぜこのジャケットは撮影され、そのまま発売されてしまったのか。
問題のフォトは66年3月25日、豪州の写真家ロブ・ウィティカーによって撮影された。
「ポップ・スターのオーソドックスな宣伝写真の常識を思い切り破壊するものを
撮りたかった。」と、後に彼は答えている。 彼のアイデアが採用されたのだ。
しかし、4人の反応には、それぞれ温度差があったが、ジョンはノリノリだった様子。
ジョンがこう理由を述べる。 「あれをアルバムのカバーに使おうと言ったのは、
何より(天使みたいな僕たちの)イメージを壊したかったからだ。」

ジョンは、さらに続ける。
「いつも普段通りの自分に見せなきゃいけない、フォト・セッションを“重労働”に
感じて、嫌気がさしていたんだ。 そこへ、写真家ウィティカーが赤ん坊の人形や肉や
白衣を持ち込んできたよ。 「イェー!」って感じだったぜ。」
ポールも飛びついた。
「彼(ウィティカー)が本当のところ何を言いたかったのか、よくわからなかった。
でもともかく、他の人たちが僕らにやらせたがっていたことよりは独創性があった。」
だが、ジョージは悪趣味に閉口した。
「無知で馬鹿らしいだけのことを、クールでヒップ(かっこいい)だと勘違いしてね。
あれもそのひとつだった。 だけどあの場合、グループの1人として協力せざるを
得ない状況だった。」
リンゴは達観していた。
「僕らの目を見れば、自分たちのやっていることを誰1人わかってないのが明らかさ。
人生を生きていくうちにはそういうこともあるんだよ。」
出来上がった写真を見たマネジャーのブライアン・エプスタインは仰天した。
「ビートルズに肉屋の格好をさせるのは何事だ!」と激怒し、(そりゃ当然です)
バンドのイメージを守るために、フィルムの破棄を要求したそうだ。
実は、ブッチャー写真は裏ジャケットに使用する構想だったという。
12インチのジャケットの中央に2.25インチくらいの大きさに収めようとしていた。
表ジャケットは、ソーセージを持っているビートルズの写真。
ソーセージはへその緒を意味し、女性とつながっている作品に仕立てたかった。
だから、ウィティカーに言わせれば、CAPITOLがブッチャー写真だけ採用したために
作品全体の意味が理解されず、「混乱を招き、みんな慌てた」という説明になる。
(この写真を勝手にチョイスしたCAPITOLの理由は不明なんだけど)
「こんなものを出せるか!」 当時のCAPITOL社長だったアラン・リビングストンは
出来上がったジャケット写真を見て即座に思った。 会社幹部も青くなったそうだ。
しかし、早速ロンドンにいたブライアン・エプスタインに電話すると、
ビートルズがその写真を使いたがっているという。 OKというしかなかった・・。
撮影から約2カ月後の6月3日、英国の音楽誌「ニュー・ミュージカル・エクスプレス」に
新曲“Paperback Writer/Rain”の全ページ広告で、ブッチャー写真が初登場した。
ジョンの「キリスト発言」と同様、英国では、なぜか特に問題にならなかった。
しかし、アルバムを発売する米国内での反応は違った。 すさまじいブーイングだ。
初回出荷70万枚を予定していたが、6月15日の発売直前になると、
CAPITOLには「取り扱いを拒否する」といった、小売業者から抗議の電話が殺到した。
これは、まずい・・。 だが、リビングストンはビートルズと直接交渉するも、
彼らは「これは戦争に対する僕らの意思表示なんだ」とまで主張したという。
リビングストンは悩んだ・・。 結局、無用な騒動は避けたいし、
ビートルズの評判に傷もつけたくない、という理由で回収を決断した。
回収後、“ブッチャー・カバー”はほとんど処分されたが、作業時間の節約のために、
CAPITOLは社員を1週間動員し、カバーを別の写真に取り換えた。
ブッチャー・カバーのジャケットの上に新しいジャケットを貼って発売されたもので、
(いわゆる“トランク・カバー”と呼ばれるもの)、今あるほとんどのものが、
このジャケットに蒸気をあててのり付けされた写真を剥がしたものだ。
だが、一部は回収できずに出回ってしまった。 市場に流れたこれらの“珍品”は、
有名なコレクターズ・アイテムとして現在も高値で取引されている。
発売日から5日後の6月20日、旅行用のトランクを小道具に使った“トランク・カバー”と
呼ばれるジャケットに差し替えられた「YESTERDAY AND TODAY」が
店頭に並んだ。
このカバーもウィティカーの手によるものだ。

これが、ブッチャー・カバーの撮影、発売、回収騒ぎの一部始終だ。
それは、CAPITOLへの反発ではなく、作られてしまったイメージへの反発だった。
このジャケットの話ばかりになってしまったんで、収録曲の話が、
ほとんど飛んでしまったけど、“Yesterday”をアルバム収録するがための
(アメリカ版「HELP!」は、サントラ仕様で全く別物なので、
“Yesterday”は未収録)
勝手な編集盤で、ビートルズからすると、ほんとにひどい代物だ。
(アメリカ版「RUBER SOUL」のオープニングは、オリジナル版「HELP!」収録の
ポール風フォーク・ウエスタンの傑作“I've Just Seen A Face”で、
B面がジョンが最も嫌いな曲と言ってた、同じくオリジナル版「HELP!」収録の
“It's Only Love”から始まる。 開いた口が塞がりません。)
しかも、「REVOLVER」収録のジョンの3曲は、英国本家の発売より6週間も
先にフライングして発表されてしまった形に。 だから、アメリカ版「REVOLVER」は
ポールとジョージ色が強くなってしまってる。 これじゃ、大傑作が台無しです。
(発売までに、本国からステレオのマスターが届かなかったために、CAPITOLは
モノラル・マスターを機械的に無理やりステレオ分配させて(擬似ステレオ)、
ステレオ盤に収録していた。 CAPITOLって、ジョンに何か恨みでもあるの?)
かく小生、このブッチャー・カバーなど、所有しておりません。
(高音質のブートレグでなら所有しておりますが・・。)
こんなものに大金を出すくらいなら、英PARLOPHONEのオリジナル盤を揃えます。
そろそろ、ちゃんとリマスター盤のレビューしなくては・・。