汚れなき面の裏にある破壊と功罪。
THE BEATLES
THE BEATLES

通称「ホワイト・アルバム」
真っ白のジャケの右隅に打ち出しのバンド名と通しナンバーの
刻印があるだけ。
これほど、痛烈に皮肉ってるタイトルもない。
タイトルにバンド名をそのまま使用するのは、大体、バンドの
初心に帰ってやり直す快心作か、バンド名に誇りたる自信作かくらいだ。
はっきり言おう。 これは、ビートルズのアルバムではない。
ここには、全体を包む、4人によるアンサンブルも協力も調和もない。
(あまりの身勝手さに、あのマーティン氏さえ、途中匙を投げたくらい)
ビートルズという大きな傘の下で4人が出し合った寄せ集めにすぎない。
もっと言えば、この後に始まる、あの無駄にダラダラと続く、GET BACK
セッションや、ポール主導でも、結束して、有終の美を飾った、
「ABBEY ROAD」の方が、よほど、“ビートルズ”である。
二枚組で全30曲。
曲順や曲間にいたるまで、絶妙のバランスで配置されている。
それは、様々な音楽の玉手箱のごとく、音楽のカオスそのものだ。
しかし、彼らを聴けば聴くほど、知れば知るほど、
これほど、愛着が湧き、魅かれてしまうアルバムはない。
4人それぞれが、ミュージシャン・シップとしての自覚が生まれ始め、
(レコーディング機器や録音技術の発達も手伝って) 4人が集まって、
“せーの”で録らなくても、部分的に録って消して、切り貼りして、
つないでといった作業が簡単になり、 ポールなんか、全パートを
一人でまかなってしまえる環境になったのも、
“らしさ”を消してしまった原因の一つだろう。
ポールは、自由奔放。 やりたい放題。
チャック・ベリーとビーチ・ボーイズを茶化した“Back In The USSR”
とことん能天気なカリビアン・スカ“Ob-La-Di,Ob-La-Da”
お得意の生ギターで、“Blackbird”なんか一人でさっさと済ませ、
“Birthday”はどんちゃんロックンロール・パーティーから、
とにかく騒々しい、元祖ヘビメタ“Helter Skelter”
シルクハット片手にヴォードビル“Honey Pie”と。
全部は書かないが、良くも悪くも、このアルバムを百貨店状態に
させてしまってる。 ただ全部、うまいんだな、これが。
モノにしてしまってるのだ。 ポールの才気は底なしです。
ジョンは、やはりヨーコさんとの出逢いが大きい。
と言うより、後の人生も変えてしまった。
明らかに行き過ぎた前衛曲“Revolution 9”と亡き母の想いを
彼女に求める“Julia”は、ヨーコさんの影響が顕著だ。
“Dear Prudence”や“Cry Baby Cry”など名曲を残すが、
覚醒効果からなのか、過激で自虐的内容の曲が増えてくる。
もろドラッグと猥褻を連想させる“Happiness Is A Warm Gun”は、
あり得ない転調と変拍子を繰り返しながら、キレまくる彼に、
後に、恒久の愛と平和を唄う姿のカケラもない。
ジョージは、あの二人で埋もれていた才能が開花し始める。
“While My Guitar Gently Weeps”は、ギターの為のギターの曲。
ここで、生涯の盟友クラプトンと出逢う。
ねじれてファンキーな“Savoy Truffle”は、隠れ名曲。
リンゴは、 初の書き下ろし“Don't Pass Me By”を発表するも、
居場所を失くしてしまった。(極秘に一時辞めちゃってる)
しかし、ジョンからプレゼントされた“Good Night”での歌声で
どれだけ心が安らぐか。 革命の後には平和が訪れるのだ。
そんな中にも、ジョンの“死にたい節”炸裂のエセ・ブルース曲
“Yer Blues”での、ねちねちとしたギターのせめぎ合いや、
パワー全開のドライブハード“Everybody's~My Monkey”では、
ジョージとジョンのギターは狂ったように突っ走り、リンゴの
カウベルはけたたましく打ち続く。それをポールがまとめあげる。
この強烈なグルーヴは、初期のアンサンブルとは異なり、
ロックバンドとして、成熟した姿が伺える。
うまいわ、やっぱ。 腐っても、ビートルズなのだ。
でも、アナログ盤の内開きにあるポートレートは、4人別々。
もはや、バンドとして成立していない。
このアルバムは、今後4人の音楽活動を、すでに予言している。
愛しくも、罪深いアルバムだ。

通称「ホワイト・アルバム」
真っ白のジャケの右隅に打ち出しのバンド名と通しナンバーの
刻印があるだけ。
これほど、痛烈に皮肉ってるタイトルもない。
タイトルにバンド名をそのまま使用するのは、大体、バンドの
初心に帰ってやり直す快心作か、バンド名に誇りたる自信作かくらいだ。
はっきり言おう。 これは、ビートルズのアルバムではない。
ここには、全体を包む、4人によるアンサンブルも協力も調和もない。
(あまりの身勝手さに、あのマーティン氏さえ、途中匙を投げたくらい)
ビートルズという大きな傘の下で4人が出し合った寄せ集めにすぎない。
もっと言えば、この後に始まる、あの無駄にダラダラと続く、GET BACK
セッションや、ポール主導でも、結束して、有終の美を飾った、
「ABBEY ROAD」の方が、よほど、“ビートルズ”である。
二枚組で全30曲。
曲順や曲間にいたるまで、絶妙のバランスで配置されている。
それは、様々な音楽の玉手箱のごとく、音楽のカオスそのものだ。
しかし、彼らを聴けば聴くほど、知れば知るほど、
これほど、愛着が湧き、魅かれてしまうアルバムはない。
4人それぞれが、ミュージシャン・シップとしての自覚が生まれ始め、
(レコーディング機器や録音技術の発達も手伝って) 4人が集まって、
“せーの”で録らなくても、部分的に録って消して、切り貼りして、
つないでといった作業が簡単になり、 ポールなんか、全パートを
一人でまかなってしまえる環境になったのも、
“らしさ”を消してしまった原因の一つだろう。
ポールは、自由奔放。 やりたい放題。
チャック・ベリーとビーチ・ボーイズを茶化した“Back In The USSR”
とことん能天気なカリビアン・スカ“Ob-La-Di,Ob-La-Da”
お得意の生ギターで、“Blackbird”なんか一人でさっさと済ませ、
“Birthday”はどんちゃんロックンロール・パーティーから、
とにかく騒々しい、元祖ヘビメタ“Helter Skelter”
シルクハット片手にヴォードビル“Honey Pie”と。
全部は書かないが、良くも悪くも、このアルバムを百貨店状態に
させてしまってる。 ただ全部、うまいんだな、これが。
モノにしてしまってるのだ。 ポールの才気は底なしです。
ジョンは、やはりヨーコさんとの出逢いが大きい。
と言うより、後の人生も変えてしまった。
明らかに行き過ぎた前衛曲“Revolution 9”と亡き母の想いを
彼女に求める“Julia”は、ヨーコさんの影響が顕著だ。
“Dear Prudence”や“Cry Baby Cry”など名曲を残すが、
覚醒効果からなのか、過激で自虐的内容の曲が増えてくる。
もろドラッグと猥褻を連想させる“Happiness Is A Warm Gun”は、
あり得ない転調と変拍子を繰り返しながら、キレまくる彼に、
後に、恒久の愛と平和を唄う姿のカケラもない。
ジョージは、あの二人で埋もれていた才能が開花し始める。
“While My Guitar Gently Weeps”は、ギターの為のギターの曲。
ここで、生涯の盟友クラプトンと出逢う。
ねじれてファンキーな“Savoy Truffle”は、隠れ名曲。
リンゴは、 初の書き下ろし“Don't Pass Me By”を発表するも、
居場所を失くしてしまった。(極秘に一時辞めちゃってる)
しかし、ジョンからプレゼントされた“Good Night”での歌声で
どれだけ心が安らぐか。 革命の後には平和が訪れるのだ。
そんな中にも、ジョンの“死にたい節”炸裂のエセ・ブルース曲
“Yer Blues”での、ねちねちとしたギターのせめぎ合いや、
パワー全開のドライブハード“Everybody's~My Monkey”では、
ジョージとジョンのギターは狂ったように突っ走り、リンゴの
カウベルはけたたましく打ち続く。それをポールがまとめあげる。
この強烈なグルーヴは、初期のアンサンブルとは異なり、
ロックバンドとして、成熟した姿が伺える。
うまいわ、やっぱ。 腐っても、ビートルズなのだ。
でも、アナログ盤の内開きにあるポートレートは、4人別々。
もはや、バンドとして成立していない。
このアルバムは、今後4人の音楽活動を、すでに予言している。
愛しくも、罪深いアルバムだ。