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頑固者のジャズ・コンプレックス。 

      THE NIGHTFLY      DONALD FAGEN
           
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         I.G.Y. (アイ・ジー・ワイ)
         Green Flower Street (グリーン・フラワー・ストリート)
         Ruby Baby (ルビー・ベイビー)
         Maxine (愛しのマキシン)
         New Frontier (ニュー・フロンティア)
         The Nightfly (ナイトフライ)
         The Goodbye Look (グッドバイ・ルック)
         Walk Between Raindrops (雨に歩けば)

 「これが、ジャズってものなのかな・・」
 このアルバムを初めて聴いた時の率直な感想がこうだった。
 ほとんどの人に、「大間違いだよ」って言われそうだけど、
 (彼の音楽はジャンル分けが困難。 ジャズでもなきゃ、ロックでもない)
 でも案外、これって“ジャズ”なのかも。と最近思うようになった。

 一時期の寡黙さが嘘のようにコンスタントに、(とはいっても3年サイクルだけど)
 新作を発表してくれるドナルド・フェイゲン。
 スティーリー・ダンなら「Everything Must Go」から約3年だが、
 ソロとしては「KAMAKIRIAD」から13年振りの、「MORPH THE CAT」を発表した。

 満を持して、その新作を書くぞ~。と意気込んでましたが、
 やめました。  だって同じなんですもん。
 ここまで変わらない、いや、変えようとしない。 こだわりと自信。
 これこそ、ジャズなのかも。 しかし音楽的、理論的ではなくて、
 “魂”としてのジャズ。 頑固なまでの魂。
 それは、憧れとコンプレックスとを向き合わせた魂ではなかったかと。

 ソロ第1弾としたら、24年前に遡るこの大傑作。
 私としては、彼やスティーリー・ダンとの出会いがこのアルバムだったので、
 「彩」や「ガウチョ」よりも愛着が深いし、レコードが擦り切れるほど聴いた。
 しかし、その出会いは、中古屋でのジャケ買いだった。
 そのあまりの雰囲気の良さと渋さに、背伸び仕立ての私には、
 大人のレコードって感じがして、内容関係なく買ってしまった。
 やはり、始めはほとんど聴かず、壁に飾ってっけ。

 覚えたてのタバコを吸い、(今はとっくにやめちゃったけど)
 “ダルマ”の水割りを飲みながら、夜中によく聴いてました。
 当時はスティーリー・ダンもソロも変わんない印象を持ってたけど、
 ゲイリー・カッツがプロデュースしてるとはいえ、
 ベッカーのいない、このアルバムは、やはり“フェイゲンのソロ”だ。
 (「KAMAKIRIAD」は、ベッカーがプロデュースしたため、純粋なソロではなく、
  「ガウチョ」の延長線の音に偏ってしまった)

 これほど、ジャケと音楽の雰囲気がマッチしている作品もないと思うが、
 何にも知らない、当時の私には、このスウィートでおシャレなサウンドに、
 “彼女に聴かせてみてぇなぁ~”などと、勝手な妄想を抱いてましたが、
 テーマは、「戦後のアメリカの若者の未来への憧れと諦め」だ。
 シャレてるなのは音だけ。 その中身には毒と謎が隠されているのだ。

 「国際地球観測年」たる近未来への楽観を歌った“I.G.Y”の、
 変速レゲエ(?)ビートに、マイケル&ランディ・ブレッカー兄弟の、
 ホーン・アンサンブルと、フェイゲンのシンセ・ハープが絶妙に絡んで、
 オープニングから、ノスタルジックな雰囲気へ誘う。
 ムード最高なんだけど、素晴らしい世界への理想と諦めで、かなりクールだ。

 都市部から郊外へ人が移り住む、スプロール現象による弊害や、
 (住宅街の殺人事件を、アップタイトにキメる“Green Flower Street”や、
  “Maxine”では、青年カップルの青臭いストーリーの歌詞にも登場する)
 ケネディの掲げたスローガン“フロンティア政策”により大統領に就任した年の、
 若者の背景を歌った“New Frontier”も、実に政治的で皮肉だ。
  (ソ連のキューバのミサイル基地建築による東西の緊張が高まった。
   いわゆる、キューバ危機)

 要は、全然スウィートなんかじゃないってこと。
 彼女とデートの最中に、政治の話なんかしたって・・ってことです。
 ただ、“New Frontier”では、核爆弾に逃れるために、そのカップルは、
 地下の核シェルターで、ドンチャン・パーティーをする。
 時代を遡っても、「俺達、関係ないもん」って奴らはいるわけで。
 所詮、音楽はムードと雰囲気で決まる。

 あまりサウンド面には、触れてなかったが、
 全編にラリー・カールトンのギターがフューチャーされてて、
 バックは、「ガウチョ」同様、ゲストも派手で多彩だ。
 今回は、いちいち挙げるのは割愛するけど、
 また何回プレイさせられたんでしょってくらい、完璧にキメてくれている。
 
 “The Nightfly”たる、深夜にジャズをかけるDJ扮するフェイゲン。
 ソニー・ロリンズの「THE CONTEMPORARY LEADERS+」をかけようとしている。
 いや、リクエストに答えてるのかな。
 重ねるが、これほど、ジャケと雰囲気がマッチしている作品はない。
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2006/03/26 Sun. 09:50 [edit]

Category: スティーリー・ダン

Thread:洋楽CDレビュー  Janre:音楽

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