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“なすがまま”のありのまま。 

      LET IT BE (映画) <1970年 英>    THE BEATLES

                       
 
 やばい。 なぜか、ビートルズ熱が冷めない。
 なんでだろ。 なんで今?
 来日40周年が近いとか、CAPITOLシリーズの第2弾とか、
 未だに話題は尽きない彼らだけど、これらにソワソワしてるワケじゃないんだけど。
 なんなんだ、一体。

 ということで、今回もビートルズで参ります。

 ただ今回は趣向を変えて、彼らの公式フィルムの中で、唯一絶版になって久しい、
 映画「LET IT BE」を取り上げてみたい。
 (現在は、ブートで比較的楽に入手することができますが・・)
 たぶん、ロック史上最もバンドの人間関係を露骨にさらけ出した映画だろう。
 これは、マジに涙出てきそうになる。
 悲しくて。 
 あんなに輝いてた彼らが、なんでこんなになっちまったのかと。
 
 この映画は、ホワイト・アルバム製作の際バラバラになった彼らの心を取り戻そうと、
 ポールが「結成当時のシンプルなロックン・ロールに立ち返ろう」を旗印に、
 ライブ一発録りで、オーヴァーダブやエフェクトは一切なしで、
 再び結束を模索した、いわゆる“GET BACK セッション”を淡々と記録したもの。
 
 しかし、ポールの思惑とは裏腹に(空回りというか)、残念なことに、
 メンバーの協調性を欠いた、感情のもつれを描いたドキュメントになってしまった。
 ただ唯一の救いは、アップル・ビル屋上でのルーフ・トップ・コンサートだが・・。
 (結果として、4人最後のステージとなってしまった)

 まずは、69年1月2日から14日までのトゥイッケナム・スタジオでのセッションだ。
 これは、いろんな意味でも“凄い”セッションだ。
 ポールが、全然ノリ気でないジョンとジョージらを無理やり参加させて、
 だだっ広いスタジオの中央にセットを組んで、リハを始めるが、
 レパートリーをただ爪弾くだけのダラダラとした演奏が延々と続けられた。

 映画は始まってすぐ、やばい空気が漂い出す。
 ポールの“Maxwell's Silver Hammer”を繰り返すとこなんて、
 ジョンもジョージもそっぽ向いて、全くやる気なしだし、
 “Two Of Us”の初期ヴァージョンはロックン・ロールだけど、
 一つのマイクでジョンとポールはただふざけてるだけだし。
 “I've Got A Feeling”のアレンジにイラつくポールの、
 強引な進め方に、リンゴなんてムクれちゃって、ドラムに八つ当たりしてるし、
 挙句には、ジョージの“I Me Mine”には興味がないジョンは、
 演奏そっちのけで、ヨーコと踊り出す始末。

 “Two Of Us”のギターの方法論で、あの有名なポールとジョージの口論なんか、
 見るたび、こっちがつらくなってくる。 いや、泣けてくる。
 ジョージのプレイにイラつくポールに、ジョージが、
 「わかったよ。 君の言うとおりに弾くよ。 それでいいんだろ。」
 ・・・。 
 世界一のロック・バンドが、世界中の劇場でバンドの恥部をさらけ出した瞬間だ。

 しかし、“凄い”瞬間もある。
 どんなにムカついていても、苛立っていても、あの4人はただ者じゃない。
 リンゴは、八つ当たり気味(怒りを込めて)でも、タイトに刻んで、
 どんな時でも、絶対リズムを崩さない。
 だから、ポールのベースは自由奔放に独創的プレイができるし、
 ジョンとジョージは、打ち合わせなんてしてないのに、適当な入りからでも、
 絶妙に絡み合ったアンサンブルを生み出す。
 やっぱ、上手いわ。 
 さすが、“腐っても、ビートルズ”なのだ。 

 ただ、今はわかるんですよ。
 一生懸命にビートルズをまとめようとするポールの心意気も、
 その態度をシラけた目線で見るジョージとリンゴの気持ちも、
 リーダーの座を完全に奪われ、ビートルズを諦めてしまったジョンも。
 このトゥイッケナムのセッションは、ただ当時の“ありのまま”を淡々と記録している。

 嫌気がさしたジョージの一時的脱退から復帰した1月22日からは、
 アップル・ビルの地下スタジオに場所を移して再開される。
 そして、ゲストにビリー・プレストンを迎え、トゥイッケナムより、
 遥かに、“実の入った”セッションが伺える。
 しかし、ポールはライブにこだわり、他のメンバーとの折り合いのつく案として、
 アップル・ビル屋上でのライブを提案する。

 これは、いわゆる“ゲリラ・ライブ”の元祖だ。
 さぞかし、寒かったでしょう。
 ジョージやジョンなんて、手がかじかんで、まともにギター弾けてないですもん。
 (“Get Back”のジョンのソロなんてヒヤヒヤもの)
 ただ、条件的には最悪でも、さすが、素晴らしいパフォーマンスだ。
 1月30日の寒空の下のランチ・タイムに、オフィス街の屋上で、
 大音量でヤリだしたら、そりゃ警察沙汰ですよ。
 それで、お開きとなる。
 (これは、確信犯だね。 上手い演出です)

 でも、これって今後、公式リリースされるんかな。
 亡くなったジョンとジョージはともかく、ポールとリンゴは、
 OK出すのかな。
 (「NAKED」リリース時、一度噂になったけど)
 ひょっとしたら、今後もリリースされることはないのかも。

 ロック史上、最高の遺産である「ビートルズ」の痛々しい過去を、
 ありのままにさらけだした真実を公開することなんて、
 本当に必要なのだろうか。
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2006/05/24 Wed. 00:28 [edit]

Category: ビートルズ

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