屋根裏部屋の名曲たちは眠らず。
SONGS IN THE ATTIC BILLY JOEL

Miami 2017 (Seen The Lights Go Out On Broadway)
マイアミ2017
Summer, Highland Falls 夏、ハイランドフォールにて
Streetlife Serenader 街の吟遊詩人は...
Los Angelenos ロスアンジェルス紀行
She's Got A Way シーズ・ガット・ア・ウェイ
Everybody Loves You Now エブリバディ・ラブズ・ユー・ナウ
Say Goodgye To Hollywood さよならハリウッド
Captain Jack キャプテン・ジャック
You're My Home 僕の故郷
The Ballad Of Billy The Kid さすらいのビリー・ザ・キッド
I've Loved These Days 楽しかった日々
最近、またよくライヴ盤を聴くようになった。
これといってライブに行く機会もめっきり減って、無意識に体が“欲して”いるのか
わかんないんだけど、なんか、あの“アツい”雰囲気が実に心地いいのだ。
特にジャンルや特定のアーチストのヤツってのはないんだけど、片っぱしに。
そこで、20年以上(いや、もっと前かな)聴いてなくて、久しぶりに耳にしたコレ。
しかし今に至っても、当時の感動が甦ってくる。 名曲名演は、時代を超えるんだ。
でも、“屋根裏”ほど奥にはしまってなかったけど、ちょっと埃かぶってました・・。
ごめんね、ビリー・・。
ガキの頃、TVで偶然見た、ビリーがライブハウスで歌う、“さよならハリウッド”。
鮮烈だった。 瞬きするのが、嫌なくらいに見た。 真剣に見た。
素晴らしい。 ブラボー。 実に素晴らかった。 TVに向かって拍手したっけ。
そして、私が生まれて初めて手にしたライブ盤がコレだった。
80年6~7月の「GLASS HOUSE」の全米ツアーからのライブ・レコーディングで、
ビリーにとって初の公式ライブ盤。 しかし、かなり異色の内容だった。
当時、飛ぶ鳥を落とす勢いのビリー。 ヒット曲満載の構成かと思いきや、
「THE STRANGER」でビッグ・ヒットした以降の曲は、まるで無視して、
メジャー・デビューして、初期の全く売れなかった時代の4作品からの選曲に。
自身初のライブ盤としては、ある意味“無謀”な企画。
皆が“素顔のままで”や、“マイ・ライフ”が聴きたいはずなのに。
「SONGS IN THE ATTIC (屋根裏部屋にしまっておいた曲たち)」

ビリーは今まで、日の当たらなかった隠れた曲ばかりをあえて選んだ。
思うに、自らの曲に対する愛情が我々の想像を超えるほど深いこと。
そして、とても大事にしていること。 売れてる売れてないは関係ない。
ヒット曲という“地位”、“称号”は、我々ファンが与えるもの。
ビリー自身にとっては、ヒット曲。 イコール。 愛情が深いとはならないんだ。
この80年くらいに、ビリーのバンドが、がっちり固定された。
ドラムにリバティ・デヴィート。 ベースにダグ・スティグマイヤー。(95年に没)
の土台に、ギタリストにデヴィッド・ブラウンとラッセル・ジャヴァーズ。
花形サックスは、あのリッチー・カナータ。 そして、天才ピアノマンのビリー。
このバンドの演奏力と安定感が“屋根裏の曲”に、新たな生命力と輝きを与える。
影の大傑作「ニューヨーク物語(TURNSTILES)」から4曲セレクトされているが、
聴き始めた当初は、“さよならハリウッド”の爽快で切れのあるアレンジに圧倒、
(アルバムでは、スペクターの“音の壁”をオマージュした作りだったけど)
“夏、ハイランドフォールにて”の切ないメロディと、“楽しかった日々”での美しい
ピアノの旋律に涙がちょちょ切れ。 すぐにアルバムの虜になってしまうはめに。
ただ、“マイアミ2017”の歌詞には、当時は非現実的な歌詞だなぁと思ってたけど、
まさか、あの悲劇(9・11)を予言してたかの内容は、今でもショックを覚える。
( 「ブロードウェイの灯が消えてしまった・・。
エンパイア・ステイト・ビルは倒されてしまい、人々は避難する。」
この曲を、2001年のMSGでのNY追悼チャリティ・ライブで歌うビリー。
怒ってた。 心底、怒ってた。 アツかった。 これぞ、ロックだ。 )
また、隠れデビュー作の「COLD SPRING HARBOR」の存在を知ったことも。
(才能の片鱗は見せたのもの、まだ原石のまま。 案の定、全く売れず。
おまけにトラックダウンの際に、マスターテープのスピードを速く録音されて、
ビリーの歌がやたらカン高くて、聴きづらい。 スタッフ何してんの?
悪徳プロデューサーによる印税の呪縛から解放され、83年12月には、
テープ回転が、きっちり修正され、一部アレンジも変えて再発された。)
“She's Got A Way”は、この叙情的でしっとりした雰囲気と美しさは、
この頃からすでに“オネスティ”のプロトタイプを書いていたといえるし、
オリジナルでの、ビリーの超人的早弾きと、流暢なメロディラインが印象的な
“Everybody Loves You Now”は、このバンドでは、ギター・カッテイングで
アレンジされ、アコースティック・ロックに甦らせる。 このセンスには脱帽。
でもやっぱ日本じゃ、ビリーは、“素顔のまま”であり、“オネスティ”であり、
“ストレンジャー”だ。 素晴らしい曲だし、当然、私も大好きな曲。 大事な曲。
しかし、このライブを聴き、なおかつ、ここ近年の精力的なライブ活動を知ると、
ビリーの最大の魅力は、”静と動のコントラスト。” これなんじゃないかなぁ。

美しいメロディと情景が目に浮かぶような詩の世界。 そして、ピアノの調べ。
これが、“静”の魅力。 (コレが日本人の心の琴線を触れさせるのだ。)
このライブに見られるようなエネルギッシュで、汗がほとばしるようなアツさ。
そして時に、社会的メッセージを掲げ、怒りや疑問を硬派に問うアツさ。
鍵盤の上に立ち上がり、拳を突き上げるほど、湧き上がってくるエネルギー。
これが、“動”の魅力。 (コレがあるから、永遠に我々を魅了させるんだ。)
相反する魅力。 泣かせといて、盛り上げる。 やっぱこういうのには弱いのよ。
このアルバムには、ビリー自身がライナーノーツを寄せている。
よほどの愛情がこめられているんだろう。 その最後の一節にこうある。
「 君の家にPAシステムがないことはわかってるけど、
本物に近い音が聴きたいなら、うるさい隣の人を自宅に呼んで、
出来るだけ大きな音で聴いてごらん。 」
ビリーがこんなアツい奴だなんて思わなかった人。
それこそ、火傷しますよ。
今年の中途半端な夏よりも、こんなにもエネルギッシュで、断然にアツイ。
最高の一枚だ。

Miami 2017 (Seen The Lights Go Out On Broadway)
マイアミ2017
Summer, Highland Falls 夏、ハイランドフォールにて
Streetlife Serenader 街の吟遊詩人は...
Los Angelenos ロスアンジェルス紀行
She's Got A Way シーズ・ガット・ア・ウェイ
Everybody Loves You Now エブリバディ・ラブズ・ユー・ナウ
Say Goodgye To Hollywood さよならハリウッド
Captain Jack キャプテン・ジャック
You're My Home 僕の故郷
The Ballad Of Billy The Kid さすらいのビリー・ザ・キッド
I've Loved These Days 楽しかった日々
最近、またよくライヴ盤を聴くようになった。
これといってライブに行く機会もめっきり減って、無意識に体が“欲して”いるのか
わかんないんだけど、なんか、あの“アツい”雰囲気が実に心地いいのだ。
特にジャンルや特定のアーチストのヤツってのはないんだけど、片っぱしに。
そこで、20年以上(いや、もっと前かな)聴いてなくて、久しぶりに耳にしたコレ。
しかし今に至っても、当時の感動が甦ってくる。 名曲名演は、時代を超えるんだ。
でも、“屋根裏”ほど奥にはしまってなかったけど、ちょっと埃かぶってました・・。
ごめんね、ビリー・・。
ガキの頃、TVで偶然見た、ビリーがライブハウスで歌う、“さよならハリウッド”。
鮮烈だった。 瞬きするのが、嫌なくらいに見た。 真剣に見た。
素晴らしい。 ブラボー。 実に素晴らかった。 TVに向かって拍手したっけ。
そして、私が生まれて初めて手にしたライブ盤がコレだった。
80年6~7月の「GLASS HOUSE」の全米ツアーからのライブ・レコーディングで、
ビリーにとって初の公式ライブ盤。 しかし、かなり異色の内容だった。
当時、飛ぶ鳥を落とす勢いのビリー。 ヒット曲満載の構成かと思いきや、
「THE STRANGER」でビッグ・ヒットした以降の曲は、まるで無視して、
メジャー・デビューして、初期の全く売れなかった時代の4作品からの選曲に。
自身初のライブ盤としては、ある意味“無謀”な企画。
皆が“素顔のままで”や、“マイ・ライフ”が聴きたいはずなのに。
「SONGS IN THE ATTIC (屋根裏部屋にしまっておいた曲たち)」

ビリーは今まで、日の当たらなかった隠れた曲ばかりをあえて選んだ。
思うに、自らの曲に対する愛情が我々の想像を超えるほど深いこと。
そして、とても大事にしていること。 売れてる売れてないは関係ない。
ヒット曲という“地位”、“称号”は、我々ファンが与えるもの。
ビリー自身にとっては、ヒット曲。 イコール。 愛情が深いとはならないんだ。
この80年くらいに、ビリーのバンドが、がっちり固定された。
ドラムにリバティ・デヴィート。 ベースにダグ・スティグマイヤー。(95年に没)
の土台に、ギタリストにデヴィッド・ブラウンとラッセル・ジャヴァーズ。
花形サックスは、あのリッチー・カナータ。 そして、天才ピアノマンのビリー。
このバンドの演奏力と安定感が“屋根裏の曲”に、新たな生命力と輝きを与える。
影の大傑作「ニューヨーク物語(TURNSTILES)」から4曲セレクトされているが、
聴き始めた当初は、“さよならハリウッド”の爽快で切れのあるアレンジに圧倒、
(アルバムでは、スペクターの“音の壁”をオマージュした作りだったけど)
“夏、ハイランドフォールにて”の切ないメロディと、“楽しかった日々”での美しい
ピアノの旋律に涙がちょちょ切れ。 すぐにアルバムの虜になってしまうはめに。
ただ、“マイアミ2017”の歌詞には、当時は非現実的な歌詞だなぁと思ってたけど、
まさか、あの悲劇(9・11)を予言してたかの内容は、今でもショックを覚える。
( 「ブロードウェイの灯が消えてしまった・・。
エンパイア・ステイト・ビルは倒されてしまい、人々は避難する。」
この曲を、2001年のMSGでのNY追悼チャリティ・ライブで歌うビリー。
怒ってた。 心底、怒ってた。 アツかった。 これぞ、ロックだ。 )
また、隠れデビュー作の「COLD SPRING HARBOR」の存在を知ったことも。
(才能の片鱗は見せたのもの、まだ原石のまま。 案の定、全く売れず。
おまけにトラックダウンの際に、マスターテープのスピードを速く録音されて、
ビリーの歌がやたらカン高くて、聴きづらい。 スタッフ何してんの?
悪徳プロデューサーによる印税の呪縛から解放され、83年12月には、
テープ回転が、きっちり修正され、一部アレンジも変えて再発された。)
“She's Got A Way”は、この叙情的でしっとりした雰囲気と美しさは、
この頃からすでに“オネスティ”のプロトタイプを書いていたといえるし、
オリジナルでの、ビリーの超人的早弾きと、流暢なメロディラインが印象的な
“Everybody Loves You Now”は、このバンドでは、ギター・カッテイングで
アレンジされ、アコースティック・ロックに甦らせる。 このセンスには脱帽。
でもやっぱ日本じゃ、ビリーは、“素顔のまま”であり、“オネスティ”であり、
“ストレンジャー”だ。 素晴らしい曲だし、当然、私も大好きな曲。 大事な曲。
しかし、このライブを聴き、なおかつ、ここ近年の精力的なライブ活動を知ると、
ビリーの最大の魅力は、”静と動のコントラスト。” これなんじゃないかなぁ。

美しいメロディと情景が目に浮かぶような詩の世界。 そして、ピアノの調べ。
これが、“静”の魅力。 (コレが日本人の心の琴線を触れさせるのだ。)
このライブに見られるようなエネルギッシュで、汗がほとばしるようなアツさ。
そして時に、社会的メッセージを掲げ、怒りや疑問を硬派に問うアツさ。
鍵盤の上に立ち上がり、拳を突き上げるほど、湧き上がってくるエネルギー。
これが、“動”の魅力。 (コレがあるから、永遠に我々を魅了させるんだ。)
相反する魅力。 泣かせといて、盛り上げる。 やっぱこういうのには弱いのよ。
このアルバムには、ビリー自身がライナーノーツを寄せている。
よほどの愛情がこめられているんだろう。 その最後の一節にこうある。
「 君の家にPAシステムがないことはわかってるけど、
本物に近い音が聴きたいなら、うるさい隣の人を自宅に呼んで、
出来るだけ大きな音で聴いてごらん。 」
ビリーがこんなアツい奴だなんて思わなかった人。
それこそ、火傷しますよ。
今年の中途半端な夏よりも、こんなにもエネルギッシュで、断然にアツイ。
最高の一枚だ。