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“4次元ビートルズ”を覚えてる? 

         Free As A Bird       THE BEATLES 

             

               Free As A Bird
               I Saw Her Standing There
               This Boy
               Christmas Time (Is Here Again)

 ついに来ました、Xデー。   09.09.09.   ビートルズ・リマスター。

 各マスコミ、プレスはもちろん、各ブログ、巷でも、この話題で持ちきりです。
 大変喜ばしいんだけど、 どっこい、この私。
 構えております。  ドシっと。  ドンとこい、とばかりに。
 浮かれてはなりませんぞ。 あのビートルズのオフィシャル音源が変わるんです。
 これは、大変なことなんです。  あなどってはダメですよ。

 ゆえに、みんなこぞって、リマスター音源について書かれることでしょう。
   
 しか~し。 小生、みんなと同じこと書いてたんじゃ、面白くない。
 私なりのリマスター音源レビューは、じっくり掘り下げたうえでアップしたく
 思うんで、 ここは、変化球投げます。 

 今では、もう誰も語らなくなった、「ビートルズ・アンソロジー」。
 リマスター騒ぎで盛り上がる中、私なりに、あの“出来事”は何だったのか、
 14年の時を経て、改めて考えてみようと思う。

  

 まずは、覚えてますか?  ビートルズが再結成をしたことがあった事実を。

 1995年、ビートルズ解散25周年を記念(?)しての、大型プロジェクトであった
 「ビートルズ・アンソロジー」。 ビートルズの歴史を各メンバーが振り返った
 総括的プロジェクトで、来たる世紀末を目前に、彼ら当事者からビートルズの
 “事実”を、きっちり記録しておく必要性から、このプロジェクトは発展していく。

 膨大なフィルムから、ドキュメンタリー制作が進んでいく際に、
 残った3人で、映像に付随する音楽を作ろうとのアイデアが出た。
 しかし、ジョンがいない。 これには、どうしても納得がいかなかった。

 そこで、ポールは、ヨーコに連絡。 「ジョンの残したデモテープから、作品を
 仕上げたらどうだろう?」  ヨーコも同意。 ジョージとリンゴも、
 「ジョンがいるなら、問題ないよ」   これで、決まり。

 94年、ヨーコは、ジョンの残したデモテープの何曲かをポールに渡した。
 当初その中から3曲が選ばれ(“Free As A Bird”、“Real Love”の2曲は採用
 されたけど、後に最後の1曲がポールとジョージが意見が合わないことからか
 ボツになる。 それは、あの“Now And Then”と“Grow Old With Me”
 だった)、
 アレンジし直して新曲としてリリースされることになった。 その記念すべき、
 最初の曲が、この“Free As A Bird”だ。

 渡されたデモテープの中で、ポールが一番気に入った曲が、この曲。
 ただジョンがピアノで鼻歌まじりに弾き語ってるモノラル録音のテープ。
 ヴォーカルもピアノも分離されておらず、テンポもバラバラで、ノイズもひどい。

 こいつを、どう料理しようか・・。

 そこで、招かれたのが、ジョージいち押しの紹介で、元ELOのジェフ・リンと、
 エンジニアのジェフ・エメリック。 (低迷してたジョージ復活の立役者だ)
 彼らは、最新の技術でノイズの除去し、モノラル録音から、ヴォーカルのみを
 抜き出してテンポを調整。 これで、テープに合わせて歌うことが可能に。
 テクノロジーは、不可能を可能にするんです。

       

 まず、ポールのベース・トラックから。 おとなしいラインだ。 でも、堅いプレイ。
 中後期ビートルズのポールのベースは躍動感と創造性あふれるラインと
 リリシズムあふれるテクニックで、まさに“歌うベース・ライン”そのものだった。
 しかし、今回はシンプルなルート・プレイに徹して、曲の基礎を固めた。
 (後期やウィングスでよく使用したリッケンバッカーじゃ太すぎるのか、
  あの当時から、再び握り出したヘフナーの音だと思う。 線はやや軽め。)
   
 次に、リンゴのドラムを重ねる。  これも、堅いプレイ。 実に堅い。
 曲のオープニングは、スネアの連打から始まるが、この音の処理(歪ませ方)は、
 ジェフ・リンの専売特許。(音が抜けず、箱庭的音像にパッケージさせる感じに)

 これに、ポールとジョージが、ジョンのテープに合わせて、ハモってみる。
 「おお、ビートルズっぽいじゃん」とリンゴ。 

 そして、ジョージのギター・パートに取り掛かる。 ジェフは、
 スライドを提案するが、
 ポールは、待ったをかける。 あまりに、ジョージの個性が強くなってしまい、
 ビートルズとしてのカラーが弱まってしまうことを懸念してのことだ。 そこで、
 「メロディに走らず、シンプルでブルージーに弾いてくれ」とアドバイスを送る。
 これにジョージは、ポールも大絶賛する最高のスライドで、見事に答える。
 これが、激シブ。 凄過ぎるプレイ。 ジョージしか弾けない。
 “むせび泣く”というよりは、“よれてなお、枯れてなお”。 成熟の極みだ。
 (「LET IT BE」での、あの因縁に、25年越しで、ようやくケリをつけたね。)

 問題は歌詞。 ジョンも完成できずじまいだった、サビの部分をどうするか。
 まずポールが、言葉を考えて歌ってみたが、イマイチしっくりこない。
 ジョージやジェフもダメ出し。 そこで、ジョージがポールの書いた詩をバラバラに
 し始めた。 ポールは面白くなかったそう。 あの当時じゃ、考えられないことです。
 しかし、「ジョージは正しいんだ」と言い聞かせ、ジョージが組み立てた歌詞は
 シンプルで、美しく力強い歌詞に改造。 “初の3人での共作”が誕生した。
  
 構成としては、Aメロがジョンで、サビをポールとジョージがそれぞれ歌うという形に。
 はかなげなジョンの歌声と淡白な美しさを持ったメロディが実に印象的。
 それを繊細に包みこむ“FAB 3”の声と演奏がジョンを引き立てる。
 浮遊感あふれるサウンドは自由に空を飛ぶ鳥のようで、曲のタイトルにふさわしい。
 リンゴのヘヴィなドラム、甘く厚みを持ったコーラスは時代を越えて響き渡る。

 ただサウンド的にはオーバー・プロデュース気味とか、元々、この再結成を認めない
 一部のファンからは、いまだに批判が出るのも分かる仕上がりではある。

 もし、ジョージ・マーティンがこの曲を手掛けていたら、こんな音にはならなかった。
 (もっとジョンのピアノを生かして、アコースティックとストリングスで味付け
 したはず)
 それでも、今の時代(といっても10年以上前だが)に、ビートルズを甦らせるとしたら、
 こんな感じが妥当ではないかと、私は思う。  大いに、“有り”な音だ。
 少なくとも彼らの名を汚すクオリティではないし、再結成の目玉企画としては上々だ。
 天国のジョンも、「最高だ」とは言わないまでも、(絶対に言うはずないよ)
 「悪くはないね」と、ほくそ笑んでいるのではないだろうか。 (そう思いたい)

 最後にプロモーション・ビデオ。 これは物凄い。 何度、繰り返し観たことか。
 これまでの曲名とか歌の内容とかに引っ掛けまくった映像がずっと流され続ける。
 驚異の編集技術。 ここでいちいち解説することなど到底出来ない程の情報量。
 何か「REVOLVER」、「SGT.PEPPER~」とかみたいな、“謎解きセンス”も良い。
 ビートルズをある程度網羅してから観ると、何度もニヤリとさせる仕組み。
 これは見事としか言いようが無い。 本当に、よくこんなの作ったもんだ。

  (このビデオの謎解きを解説したサイトを発見したんで、英文ですが、
   興味のある方は、こちらをどうぞ。 恐るべしマニア魂、参りました。)

 今回は、ここまで。
 “Real Love”と、アンソロジー総括は次回にします。  (続く)

2009/09/13 Sun. 23:06 [edit]

Category: ビートルズ

Thread:洋楽CDレビュー  Janre:音楽

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