“音の壁”の内なる小宇宙。(前編)
ALL THINGS MUST PASS GEORGE HARRISON

I'd Have You Anytime
My Sweet Lord
Wah‐Wah
Isn't It A Pity (Version 1)
What Is Life
If Not For You
Behind That Locked Door
Let It Down
Run Of The Mill
Beware Of Darkness
Apple Scruffs
Ballad Of Sir Frankie Crisp (Let It Roll)
Awaiting On You All
All Things Must Pass
I Dig Love
Art Of Dying
Isn't It A Pity (Version 2)
Hear Me Lord
~ APPLE JAM ~
Out Of The Blue
It's Johnny's Birthday
Plug Me In
I Remember Jeep
Thanks For The Pepperoni
今日11月27日は、ロック史上最高の“第3の男”であるジョージ・ハリスンの
輝かしき大傑作「ALL THINGS MUST PASS」の発売日なのだ。
1970年11月27日発売なんで、今年で39年目。 最新リマスターされた、
ニュー・センチュリー版も、2001年から数えて、8年経った。
実は、ずいぶん前から何度か書かなきゃと思ってたアルバムでして。
やっと書く気になったというか・・。 またまた、今さらなんですが。
このジョージ永遠の一枚に、よろしくお付き合いのほどを。
まず、考えてみると・・。
私にとっては、いろんな意味で、“時間のかかったアルバム”。
聴く前から、前評判や予備知識で頭がいっぱいのアルバムだった。
ゆえに、実はなかなか手が出せなかったアルバムだったんだよなぁ・・。
(もうこの時点で、時間がかかってますもん)
「70年代を代表するロックの金字塔」だの、「ジョージの才能が爆発的に開花」
だの、「ビートルズ解散後、ジョンやポールよりも早く成功したビートル」だの、
聴きたい欲望と期待を煽る言葉の数々が乱れ飛んでる、このアルバム。
“My Sweet Lord”と、“What Is Life”くらいは聴いたことがあっても、
当時、ロック初心者のこの私には、この賛辞の嵐に心は高まるばかり。
「早く聴きてぇ・・。 いや。 聴かなきゃいけないんだ。」とか、
自分勝手に使命感まで植えつけちゃって。
しかし、手が出なかった。 高くて。
しっかり装丁された箱に収めた3枚組。 帯には“ロックの金字塔”の文字が。
確か6000円だった。 (改訂価格前は5000円だったかなぁ)
「欲しいなぁ・・」 店頭で手にとっては、ため息ばっかついてたっけ・・。
このアルバムだけは、レンタルで済まそうとの邪心が不思議と起こらなかった。
ようやく手に入れたのは、彼がクラプトンをバックに従えて、ビートルズ初来日
以来の、“奇跡”のジャパン・ツアーをした91年の秋くらいだったんで、
結果的には、「CLOUDNINE」やトラヴェリング・ウィルベリーズよりも後に、
耳にすることになってしまった。 正直インパクトよりも、なぜかぼんやりとした
深い魅力に取りつかれたんで、私にはハマるまで時間がかかってしまうことに。
共同プロデューサーは、“Mr・ウォール・オブ・サウンド”ことフィル・スペクター。
あの「GET BACK」をリミックスし、「LET IT BE」を作った男だ。
他のメンバーがソッポを向いたオーヴァーダブの作業に顔を出していたのは
ジョージだけ。 スペクターの音の構築の仕方に感銘を受けたジョージは、
その場で、ソロ・アルバムのプロデュースを依頼、快諾を受けている。

ビートルズ中期からの、ジョージの宗教への傾倒、接近には、私自身、
実のところ、うさんくさい思いを抱いていたんだけど、スペクターによる
分厚い“音の壁”に、「宗教色」もうまく包み込まれて、摩訶不思議な、
内なる小宇宙を見事に形成。 第3の男が、ロック史上の大傑作を創ったのだ。
ジョージを盛り立てるメンツも、凄い奴らが集まった。
69年末に、デラニー&ボニーのツアーに参加したことがきっかけで、
ジョージの人柄に魅せられた“友達”がいっぱい集まってくれた。
エリック・クラプトン、デイヴ・メイスン (ギター) ピート・ドレイク (ペダル)
クラウス・フォアマン、カール・レイドル (ベース)
リンゴ・スター、ジム・ゴードン、アラン・ホワイト (ドラムス)
ビリー・プレストン、ボビー・ホイットロック、ゲイリー・ライト (キーボード)
ボビー・キーズ (テナー・サックス) バッドフィンガー(アコギとハーモニー)
などなど、書き切れないほどの英米問わず、様々なメンツが揃った。
後のデレク&ザ・ドミノスとなるリズム・セクションを核に、当時のアメリカ南部
の泥臭いロック(スワンプ・ロック)を、偏執的に音を重ね合わせ、分厚い音圧で
彩られた“ウォール・オブ・サウンド”でコーティングし、壮大なロックの巨像を
築き上げた。
オリジナルの1枚目のA面は、「起承転結」の言葉が相応しい。
この大作の頭に、こんな地味な“I'd Have You Anytime ”を持ってきたのは、
ジョージの自信の現れなんだろう。 (これに気付くのにも時間がかかったが)
これは、なかなかできない。 A面1曲目はまずインパクトが勝負だからだ。
順当なら、“My Sweet Lord”や“What Is Life”。 いや、ドライブ・ハードな
“Art Of Dying”や、もろウォールしてる“Awaiting On You All”でも
面白かったかもしれない。 でも、ジョージはあえてコレで勝負をかけた。
ディランとの共作というフロックも、シンプルで素朴なアレンジは、“Something”
あたりからの流れを汲んで、旅立ちの序曲としては、この上ない曲。
“My Sweet Lord”は美しすぎる。 素晴らしい。 なんと崇高な曲なんだろう。
(パクリ問題などナンセンスの極み。ズバリ“He's So Fine”なんかより優れた曲だ)
バッドフィンガー隊が紡ぐアコギのストロークからドラムとベースが入ってくる
タイミングは完璧。 エコーのかけ方、響かせ方も、最後の神の名を連呼する
コーラスも、あくまでポップ。 これはスペクターのアレンジ・センス爆発だろう。
そしてイントロのスライドだ。 “白い(白人の)スライドギター”はこれで知れ渡った。
(ジョージの代名詞にもなった) 何と言われようと、この曲はジョージの出世作
であることは永遠に変わらないのだ。

“Wah‐Wah” は、70年代ウォール・オブ・サウンドの見本のような曲。
圧倒される“音の壁”から放たれる音の洪水。(ジョージが溺れてる・・)
左にジョージ、右にクラプトンの強烈なワウ・ペダルを配置する、
後のデレク&ザ・ドミノスの面々のファンキーなプレイから、全ての音が
大迫力で雪崩れ込んでくる。 (いったい何本ギターを重ねてるんだろう)
歌詞では「ワーワー言わないでくれ(わめき散らさないでくれ)」と言ってるのに、
バックはこれでもかとばかりの「Wah Wah」だ。 もちろん意図的にだ。
ジョージが歌詞の主人公で、バックが「きみ」ということか。
あの映画で、「きみ」に弾き方をダメ出しされ、嫌気がさして家に帰っちゃった日、
その悔しさをぶつけて書き上げたのがこの曲。 ガマンしてたんだね、ジョージ。
アルバム中2回登場する“Isn't It A Pity”の最初のヴァージョンは、
7分を超える壮大なバラードに仕上がっている。 シンプルなラインの反復を
ジョン・バーラムの編曲によるオーケストラが覆い尽くす。 これは、トゥー・マッチ。
しかし、ウォール・オブ・サウンドの効果が強力に現れているナンバーとも言える。
ドラマティックな構成も、ストリングスはさることながら、ビリー・プレストンに
「何度も同じことを引かされて退屈だった」と言わせただけある。
とにかく重ねに重ねたり、よくもトラック数が足りたもんだというサウンドは、
まさしくアルバム最大のハイライトに相応しい。
よくできてるよなぁ、この見事な曲の流れ。 その余韻のまま、裏返しますと・・。
ジョージのポップ・センス大炸裂の“What Is Life” は、分厚いブラスが鳴り響く中、
やたら軽快なバッキング。 そして、線の細いジョージの頼りないヴォーカルが
なぜかマッチするファンキー・ソング。 元々は、ビリー・プレストン用に書いた曲
なんで、やけに黒っぽい感じ。 でも、コーラスの展開やレスポンスの盛り上がり
なんかスペクターとジョージの頭の中には、がっちり計算された音像の青写真が
あったんじゃないだろうか。 よく出来てるんだ、コレ。

“If Not For You ”はディランのカヴァー。 (70年の「NEW MORNING」収録)
カヴァーと言っても、ジョージはこの曲のディランのオリジナル・ヴァージョンに
参加していた(当時未発表だったが、ブートレグ・シリーズで陽の目を見る)わけで、
準オリジナルと考えていいかも。 ジョージのヴァージョンは、オリジナルの
フォーク・ロック調から、何故かトロピカル方面に振られていて、これが妙に
和んでいい感じ。 なんかぬるいんだよなぁ~。 クラプトンのドフロもシブい。
“Behind That Locked Door” は、ディラン復活を題材にした曲だという。
(ディランは、66年にバイク事故で首の骨折してからの隠居生活から復帰。)
この曲がディランのカヴァーの次に入っているのは偶然ではないのでは。
ここでも、トロピカルなアレンジがされているんだけど、
ピート・ドレイクのペダル・スティールがフューチャーされたカントリー・ワルツ。
こってりの“音の壁”が続いたあとの、この流れは落ち着いてとても良い。
“Let It Down” は、スペクターの巨大なるウォール・オブ・サウンドと、
ジョージらしい落ち着いたサウンドが同居しているダイナミックな展開がミソ。
ここでのスライドは、ジョージの名演に数えられるべきだ。
ジョージの音色ってクラプトンにも負けていないと思うんだけど。
それにしても、ここでの「ビッグ・バンド」は、アルバムの中でも一番物凄い。
B面を締める“Run Of The Mill ”は、ヴォーカルに絡んでくるドラミング
(おそらくリンゴ)が印象的だ。 短い曲だけど、これも「きみ」に向けた曲。
しかしジョンに比べたら、とても遠慮がち。 アコギのイントロから、途中の
変拍子が挿入される曲展開や、ホーンのかぶさり方もいい。 ザ・バンドみたい。
書き出したら、とても収まりきれないんで、後編に続けることにします。
後編は、2枚目と3枚目のアップル・ジャムに、ニュー・センチュリー版のことも
触れようかなと。 また時間かかりそうだ・・。

I'd Have You Anytime
My Sweet Lord
Wah‐Wah
Isn't It A Pity (Version 1)
What Is Life
If Not For You
Behind That Locked Door
Let It Down
Run Of The Mill
Beware Of Darkness
Apple Scruffs
Ballad Of Sir Frankie Crisp (Let It Roll)
Awaiting On You All
All Things Must Pass
I Dig Love
Art Of Dying
Isn't It A Pity (Version 2)
Hear Me Lord
~ APPLE JAM ~
Out Of The Blue
It's Johnny's Birthday
Plug Me In
I Remember Jeep
Thanks For The Pepperoni
今日11月27日は、ロック史上最高の“第3の男”であるジョージ・ハリスンの
輝かしき大傑作「ALL THINGS MUST PASS」の発売日なのだ。
1970年11月27日発売なんで、今年で39年目。 最新リマスターされた、
ニュー・センチュリー版も、2001年から数えて、8年経った。
実は、ずいぶん前から何度か書かなきゃと思ってたアルバムでして。
やっと書く気になったというか・・。 またまた、今さらなんですが。
このジョージ永遠の一枚に、よろしくお付き合いのほどを。
まず、考えてみると・・。
私にとっては、いろんな意味で、“時間のかかったアルバム”。
聴く前から、前評判や予備知識で頭がいっぱいのアルバムだった。
ゆえに、実はなかなか手が出せなかったアルバムだったんだよなぁ・・。
(もうこの時点で、時間がかかってますもん)
「70年代を代表するロックの金字塔」だの、「ジョージの才能が爆発的に開花」
だの、「ビートルズ解散後、ジョンやポールよりも早く成功したビートル」だの、
聴きたい欲望と期待を煽る言葉の数々が乱れ飛んでる、このアルバム。
“My Sweet Lord”と、“What Is Life”くらいは聴いたことがあっても、
当時、ロック初心者のこの私には、この賛辞の嵐に心は高まるばかり。
「早く聴きてぇ・・。 いや。 聴かなきゃいけないんだ。」とか、
自分勝手に使命感まで植えつけちゃって。
しかし、手が出なかった。 高くて。
しっかり装丁された箱に収めた3枚組。 帯には“ロックの金字塔”の文字が。
確か6000円だった。 (改訂価格前は5000円だったかなぁ)
「欲しいなぁ・・」 店頭で手にとっては、ため息ばっかついてたっけ・・。
このアルバムだけは、レンタルで済まそうとの邪心が不思議と起こらなかった。
ようやく手に入れたのは、彼がクラプトンをバックに従えて、ビートルズ初来日
以来の、“奇跡”のジャパン・ツアーをした91年の秋くらいだったんで、
結果的には、「CLOUDNINE」やトラヴェリング・ウィルベリーズよりも後に、
耳にすることになってしまった。 正直インパクトよりも、なぜかぼんやりとした
深い魅力に取りつかれたんで、私にはハマるまで時間がかかってしまうことに。
共同プロデューサーは、“Mr・ウォール・オブ・サウンド”ことフィル・スペクター。
あの「GET BACK」をリミックスし、「LET IT BE」を作った男だ。
他のメンバーがソッポを向いたオーヴァーダブの作業に顔を出していたのは
ジョージだけ。 スペクターの音の構築の仕方に感銘を受けたジョージは、
その場で、ソロ・アルバムのプロデュースを依頼、快諾を受けている。

ビートルズ中期からの、ジョージの宗教への傾倒、接近には、私自身、
実のところ、うさんくさい思いを抱いていたんだけど、スペクターによる
分厚い“音の壁”に、「宗教色」もうまく包み込まれて、摩訶不思議な、
内なる小宇宙を見事に形成。 第3の男が、ロック史上の大傑作を創ったのだ。
ジョージを盛り立てるメンツも、凄い奴らが集まった。
69年末に、デラニー&ボニーのツアーに参加したことがきっかけで、
ジョージの人柄に魅せられた“友達”がいっぱい集まってくれた。
エリック・クラプトン、デイヴ・メイスン (ギター) ピート・ドレイク (ペダル)
クラウス・フォアマン、カール・レイドル (ベース)
リンゴ・スター、ジム・ゴードン、アラン・ホワイト (ドラムス)
ビリー・プレストン、ボビー・ホイットロック、ゲイリー・ライト (キーボード)
ボビー・キーズ (テナー・サックス) バッドフィンガー(アコギとハーモニー)
などなど、書き切れないほどの英米問わず、様々なメンツが揃った。
後のデレク&ザ・ドミノスとなるリズム・セクションを核に、当時のアメリカ南部
の泥臭いロック(スワンプ・ロック)を、偏執的に音を重ね合わせ、分厚い音圧で
彩られた“ウォール・オブ・サウンド”でコーティングし、壮大なロックの巨像を
築き上げた。
オリジナルの1枚目のA面は、「起承転結」の言葉が相応しい。
この大作の頭に、こんな地味な“I'd Have You Anytime ”を持ってきたのは、
ジョージの自信の現れなんだろう。 (これに気付くのにも時間がかかったが)
これは、なかなかできない。 A面1曲目はまずインパクトが勝負だからだ。
順当なら、“My Sweet Lord”や“What Is Life”。 いや、ドライブ・ハードな
“Art Of Dying”や、もろウォールしてる“Awaiting On You All”でも
面白かったかもしれない。 でも、ジョージはあえてコレで勝負をかけた。
ディランとの共作というフロックも、シンプルで素朴なアレンジは、“Something”
あたりからの流れを汲んで、旅立ちの序曲としては、この上ない曲。
“My Sweet Lord”は美しすぎる。 素晴らしい。 なんと崇高な曲なんだろう。
(パクリ問題などナンセンスの極み。ズバリ“He's So Fine”なんかより優れた曲だ)
バッドフィンガー隊が紡ぐアコギのストロークからドラムとベースが入ってくる
タイミングは完璧。 エコーのかけ方、響かせ方も、最後の神の名を連呼する
コーラスも、あくまでポップ。 これはスペクターのアレンジ・センス爆発だろう。
そしてイントロのスライドだ。 “白い(白人の)スライドギター”はこれで知れ渡った。
(ジョージの代名詞にもなった) 何と言われようと、この曲はジョージの出世作
であることは永遠に変わらないのだ。

“Wah‐Wah” は、70年代ウォール・オブ・サウンドの見本のような曲。
圧倒される“音の壁”から放たれる音の洪水。(ジョージが溺れてる・・)
左にジョージ、右にクラプトンの強烈なワウ・ペダルを配置する、
後のデレク&ザ・ドミノスの面々のファンキーなプレイから、全ての音が
大迫力で雪崩れ込んでくる。 (いったい何本ギターを重ねてるんだろう)
歌詞では「ワーワー言わないでくれ(わめき散らさないでくれ)」と言ってるのに、
バックはこれでもかとばかりの「Wah Wah」だ。 もちろん意図的にだ。
ジョージが歌詞の主人公で、バックが「きみ」ということか。
あの映画で、「きみ」に弾き方をダメ出しされ、嫌気がさして家に帰っちゃった日、
その悔しさをぶつけて書き上げたのがこの曲。 ガマンしてたんだね、ジョージ。
アルバム中2回登場する“Isn't It A Pity”の最初のヴァージョンは、
7分を超える壮大なバラードに仕上がっている。 シンプルなラインの反復を
ジョン・バーラムの編曲によるオーケストラが覆い尽くす。 これは、トゥー・マッチ。
しかし、ウォール・オブ・サウンドの効果が強力に現れているナンバーとも言える。
ドラマティックな構成も、ストリングスはさることながら、ビリー・プレストンに
「何度も同じことを引かされて退屈だった」と言わせただけある。
とにかく重ねに重ねたり、よくもトラック数が足りたもんだというサウンドは、
まさしくアルバム最大のハイライトに相応しい。
よくできてるよなぁ、この見事な曲の流れ。 その余韻のまま、裏返しますと・・。
ジョージのポップ・センス大炸裂の“What Is Life” は、分厚いブラスが鳴り響く中、
やたら軽快なバッキング。 そして、線の細いジョージの頼りないヴォーカルが
なぜかマッチするファンキー・ソング。 元々は、ビリー・プレストン用に書いた曲
なんで、やけに黒っぽい感じ。 でも、コーラスの展開やレスポンスの盛り上がり
なんかスペクターとジョージの頭の中には、がっちり計算された音像の青写真が
あったんじゃないだろうか。 よく出来てるんだ、コレ。

“If Not For You ”はディランのカヴァー。 (70年の「NEW MORNING」収録)
カヴァーと言っても、ジョージはこの曲のディランのオリジナル・ヴァージョンに
参加していた(当時未発表だったが、ブートレグ・シリーズで陽の目を見る)わけで、
準オリジナルと考えていいかも。 ジョージのヴァージョンは、オリジナルの
フォーク・ロック調から、何故かトロピカル方面に振られていて、これが妙に
和んでいい感じ。 なんかぬるいんだよなぁ~。 クラプトンのドフロもシブい。
“Behind That Locked Door” は、ディラン復活を題材にした曲だという。
(ディランは、66年にバイク事故で首の骨折してからの隠居生活から復帰。)
この曲がディランのカヴァーの次に入っているのは偶然ではないのでは。
ここでも、トロピカルなアレンジがされているんだけど、
ピート・ドレイクのペダル・スティールがフューチャーされたカントリー・ワルツ。
こってりの“音の壁”が続いたあとの、この流れは落ち着いてとても良い。
“Let It Down” は、スペクターの巨大なるウォール・オブ・サウンドと、
ジョージらしい落ち着いたサウンドが同居しているダイナミックな展開がミソ。
ここでのスライドは、ジョージの名演に数えられるべきだ。
ジョージの音色ってクラプトンにも負けていないと思うんだけど。
それにしても、ここでの「ビッグ・バンド」は、アルバムの中でも一番物凄い。
B面を締める“Run Of The Mill ”は、ヴォーカルに絡んでくるドラミング
(おそらくリンゴ)が印象的だ。 短い曲だけど、これも「きみ」に向けた曲。
しかしジョンに比べたら、とても遠慮がち。 アコギのイントロから、途中の
変拍子が挿入される曲展開や、ホーンのかぶさり方もいい。 ザ・バンドみたい。
書き出したら、とても収まりきれないんで、後編に続けることにします。
後編は、2枚目と3枚目のアップル・ジャムに、ニュー・センチュリー版のことも
触れようかなと。 また時間かかりそうだ・・。