才能豊かな友達の助けを、“いっぱい”借りて。
PHOTOGRAPH (THE VERY BEST) RINGO STARR

Photograph
It Don’t Come Easy
You’re Sixteen
(You’re Beautiful And You’re Mine)
Back Off Boogaloo
I’m The Greatest
Oh My My
Only You (And You Alone)
Beaucoups Of Blues
Early 1970
Snookeroo
The No-No Song
(It’s All Down To) Goodnight Vienna
Hey Baby
A Dose Of Rock ’N’ Roll
Weight Of The World
King Of Broken Hearts
Never Without You
Act Naturally (duet with Buck Owens)
Wrack My Brain
Fading In And Fading Out
しばらくでございます。 実は先週、体調を崩してしまいまして・・。
おまけに、PCの不具合もありまして、 記事も“固まった”状態でしたが、
ようやく、体も戻ってきたり、環境も整ったので、またポツポツと進めて参ります。
さて年も明け、昨年のビートルズ・リマスター騒動(私はそう呼んでます)から、
時間も経つにつれ、ずいぶん落ち着いた感があるように思います。
が。 当の“生きるビートル”2人は、どうしてるのかといいますと・・。
隠居なんて言葉は、いやはや、この2人の辞書には全くありません。
ベテランなどという域を遥かに超えた、“伝説”であるにも関わらず、精力的に
現役ミュージシャンとして活動しています。 嬉しいじゃありませんか。
まずポールは、昨年7月にニューヨークで行われた最新ライブを11月に緊急リリース
して、健在ぶりをアピール。 エラい人ですよ、ほんと。 この底のない
エンターテイナーぶり、“オーディエンス至上主義”のミュージシャン・シップは
ほんと頭が下がります。 素晴らしい。 ブラボー。 気持ちの“入り”が全然違う。
今のバンド・メンバーになって、間違いなく最高の出来。 まだまだ“できる”。
また機会を設けて、しっかりレビューしなくては。

そして、リンゴも、今月なんと2年ぶりのニュー・アルバム「Y Not」を発表。
(実は、コレを書いてる段階では、まだ未聴なんですが・・。)
今回は初のセルフ・プロデュース。 そして、またまた彼の人柄に魅せられた豪華な
ゲストが今回もたくさん参加してくれて、リンゴを盛りたてて、引き立てる。
しかも、98年の「ヴァーティカル・マン」以来となる、ポールも参加して、
デュエツトしたり、ベースまで弾いてくれたりと、これまたニンマリしてしまう。
本名・リチャード・スターキー。 芸名・リンゴ・スター。
ビートルズ加入前に在籍してたロリー・ストーム&ザ・ハリケーンズ時代、メンバーが
アダ名で呼び合ってた時、指輪(Ring)を4つも付けてた彼を「Rings」って呼んでて、
それが、なまって「Ringo」に、でも、リンゴ・スターキーじゃ、長ったらしいんで、
半分に縮め、Rを付けて、「リンゴ・スター」に。

今回は、他の3人よりも、ずいぶんレビューが遅くなってしまったけど、
(ごめんよ、リンゴ)
“偉大なる天才ドラマー、かつ、稀代の天然シンガー”である、
第4のビートル、リンゴ・スターの話でございます。 よろしくお付き合いを。
私は、ある人にこう言ったことがある。
「ビートルズは、3人の天才と1人の優れた才能を持った男の音楽集団だ」って。
3人の天才っていうのは、“あの2人”と、もう1人は“リンゴ”のことです。
(ジョージは天才じゃありません。 彼は優れた才能を持って生まれ、あの2人の
天才のもとに隠れ、その能力を温め、努力して、最後には見事に大開花させた人。)
「えっ、リンゴが天才?」 そう思う方も多いと思いますが、
これは、彼の天性のドラミング・センスが、タダものではないということ。
歌なんか、正直、そんなにうまくない。 いや、音痴とヘタウマのギリギリの
ラインを狙ってるっていうか・・。 いやはや、オンリー・ワンだ。
あの“Yellow Submarine”や、“With A Little Help For My Friends”
なんて、書いたあの2人が歌っても、“あの味”は出ない。 リンゴだけだ。
(例のリマスター盤を高く評価してる私ですが、ダメな曲だってありました。
リンゴの“美声”が最高に癒してくれる“Good Night”だけど、あれはダメ。
リマスターで、ストリングスとコーラスがクリアになったのはいいんだけど、
中盤以降、リンゴの声が埋没してしまう結果に。 MONOはもっとダメ。 )
音楽的才能も、う~ん・・なんだけど・・。 まぁ、ご愛嬌よろしく。
しかし、天才ですよ。 彼が叩いてなきゃ、あのビートルズ独特のグルーヴ感は絶対
生み出されていない。 そして、真似できない魅力があるんですよ、リンゴには。
まず、リンゴのドラミングは“前に出過ぎず、後ろに下がり過ぎず”曲の良さを
引き立てる的確なサポートが基本。 (手数が多くて“オカズ”の多い派手さはない)
初期から「LET IT BE」以前まで、一貫してシンプルな「ラディック」のジャズ・
セットモデルを愛用。 初期から中期は皮をピンと張ったハイ・チューニングの
跳ねる音。 (ノリと勢いに任せて、走ったりモタったりと、まぁ大騒ぎなこと)
後期は緩めに張って、深みの出るロー・チューニングの重厚な音へと変化していく。
この当時多かったジャズドラマーや鼓笛隊のようにスティックを逆手持ちせず、
手の甲を上に向けて叩く。 初期から中期のロック調の曲ではハイハット半開きの
往復ビンタ攻撃が得意技。 (イチローじゃないけど、振り子打法の原理です)
手首のスナップをフルに効かせています。 これが独特なグルーヴを生み出すんです。
(ノってくると、髪を振り乱して叩くんだけど、なぜかうるさくならない。
軽やか。)
ドラムやってる人なら、わかると思うんですが、
コレ、なかなか練習しても身に着くものじゃない。
持って生まれたセンスなんだろう。

またリンゴは、実は左利き。 でも、右利き用のドラムのセットで叩いてるんです。
だから、通常のドラム・アクセントにはならないような感じもわかる。
元来シャッフル・ビートが上手いんで、ロック的な8ビートを要求しても、
どこかシャッフル気味なドラミングになってしまうことが、ビートルズのサウンドの
特長にもなってる。
例えば、“Something”のイントロのフィルインなんかそう。
この曲では、ポールのベースが絶賛されるけど、これは、“黄金のバッテリー”だ。
ポールのベースとリンゴのドラムとの濃厚なデュエット。 この2人しかできない。
(この2人のベスト・ヘヴィー・グルーヴは、“Rain”。 やっぱ、これだろう。)
ジョージが泣くように、「♪I Don't Know~。 I Don't Know~。」と歌った
直後の下降フレーズの絡みとこなんか、円熟の域だ。
また、彼は太鼓の「1音」の温かみというか、深みというか、そういう味を持った
ドラマーでもある。 (ジョンの“Mother”での1音1音刻まれるスネアの見事なこと)
ビートルズって、どんなにアヴァンギャルドにぶちキレても、
どこか人なつっこい響きがするのは、このリンゴのドラムのおかげなんじゃないかぁ。
「あの3人とは、みんないい友達さ。」
「僕の曲なんて、アルバムに最低1曲入ってればOKさ。」
「人気投票だったら、他の3人には敵わないけど、
2番目に好きなメンバーは誰って投票なら、1番になれるよ。」
こんな彼の発言にある通り、リンゴの人柄がにじみ出てるコメントばかりだ。
この絶妙なポジション取りというか、自分をよく解ってるっていうか、
「徳」を持ってんですよ。 これも、“天性”の驚くべき才能だ。
だから、「ねぇ、ちょっと助けてくれないかなぁ・・。」なんて言うと、おいこらと
ばかりに、なぜかどんどん友達が集まってくる。 何もしなくても。
ソロ・アルバムを作るとなれば、作曲から演奏、コーラス、プロデュースと、
錚々たるミュージシャンが次から次へ、名を連ねる。 今日までに、
元同僚の3人、エリック・クラプトン、ドクター・ジョン、ボブ・ディラン、
ザ・バンドの面々、ビリー・プレストン、エルトン・ジョン、マーク・ボラン、
ブライアン・ウィルソン、ハリー・ニルソン、デヴィッド・フォスター、
ジェフ・リン(ELO)、オジー・オズボーン、ジョー・ウォルシュ(イーグルス)
などなど・・。 これは、ほんのごく一部。 あまりに幅広い交友関係だ。
ジャンルや国を問わず、あり得ないメンツばかりが、ズラリを顔を揃える。
シーンにカムバックした89年から、オールスター・バンドを構成してツアーを敢行。
現在に至るまでに、その都度、豪華なメンバーを入れ替えて、続けられてる。
みんな、リンゴが大好き。 みんなが、助けてくれるんです。
これは、リンゴ初のオールタイムのベスト盤。
ビートルズ解散後、CAPITOL(Apple)からリリースしていたが、
(アナログ時代のベスト盤「BLAST FROM YOUR PAST」以降、Appleを離れる)
その後、アトランティック、マーキュリー、ボードウォーク、THE RIGHT STUFF
など、(RING‐Oなんて、自身のレーベルも設立したこともあったけど、大失敗)
鳴かず飛ばずだった70年代後半から80年代は、様々なレーベルを渡り歩いていただけに
音源が四方八方に散乱していたけど、今回は、そのレーベルを越えたオールタイムな
ベスト盤となっただけに、それだけでも、とても意義がある内容。

CAPTOL時代の“It Don't Come Easy(明日への願い)”、“Photogragh”や、
“Back Off Boogaloo”、“You're Sixteen”などといった大ヒット曲から、
近代になる90年代から現在に至るまで、コンスタントに選曲された、
ヒストリー的ベスト盤だ。
(ただあまりに凋落の激しかった80年代からは、81年にギリギリTOP40ヒットになった
“Wrack My Brain”だけとは寂しいなぁ・・。 いい曲けっこうあったんだけど。)
ただ紛れもなく、リンゴは“ビートルズ”の一員。
他の3人と同様に、彼の残した音源は、貴重であるし、もっと大事にしないと。

私が、一番好きなのは、やっぱ“It Don't Come Easy(明日への願い)”。
70年2月に「SENTIMENTAL JOURNEY」制作時に録音されたが、オクラ入りに。
その後、71年4月に、英米共に4位の大ヒットを記録した、リンゴの出世作がコレ。
この曲って、リンゴ作だけあって、全然コード展開しないんだけど、ジョージの絶妙な
アレンジとセンスでもって、良質なポップ・ソングに仕上げたのは、さすが。
CS&Nのスティーヴン・スティルスがピアノで参加し、ハンブルグ時代の親友で
名ベーシスト兼画家のクラウス・フォアマンがベース。
(あの「REVOLVER」のジャケットを書いたのは彼)
そして、あの“My Sweet Lord”にも登場させるバッド・フィンガー率いる
「ハレ・クリシュナ隊」がバック・コーラスで、リンゴをしっかりサポート。
ジョージとしたら、「ALL THINGS MUST PASS」の“練習台”としては、
上々の出来だろう。
また続く、ジョージがプロデュースしたファンキーな“Back Off Boogaloo”は
“のほほん”としたリンゴの楽曲の中でも、スリリングな展開が魅力。
ジョージのスライドが縦横無尽に唸り、リンゴも珍しくドタバタとスネアを歪ませ、
フォアマンのベースも固くゴンゴンと刻んで、もの凄いヘヴィー・グルーヴを生む。

そして、ド派手なイルミネーションで自分の名前をタイトルにした、まさに、
リンゴ版「ザッツ・エンターテインメント」であり、かつ、リンゴの最高傑作である
「RINGO」のオープニングでもあった、ジョン作の“I'm The Greatest”だ。
「俺様は、偉大なる人物である」と、“豪語”できるというか、ハッタリかませるのは
リンゴだから。 (ジョンが、もしこの曲を歌ったもんなら、何を言われるか・・。)
この曲は、「“ポール”レス・ビートルズ」。 ポールに言わせたら、“3 Legs”。
「3本足の犬なんて、歩けっこないよ」って曲にしてるくらいだけど、いやいや、
ジョンが、ピアノとハモリでアクセントを加え、ジョージが決めのフレーズを入れる。
“彼”の代わりに、ビリー・プレストン(Org)と、フォアマンがベースに加わり、
リンゴにしたら、少々辛めの切れ味鋭い、屈折ポップに。 これは、かっこいい。
しかし、ポールも、この「RINGO」では、“You're Sixteen”では、ひょうきんに、
バック・コーラスに参加。 のんびりとしたポールらしい“Six O'clock”を提供。
あの近親憎悪ともいえる、お家騒動や罵り合いの真っ最中に、この「RINGO」では、
リンゴの音頭取り一つで、全員が同じスタジオで演奏こそなかったものの、
あの“FAB 4”が勢ぞろい。 アルバムに「ビートルズ」が共存しているのだ。
この事実だけでも、リンゴの役割、位置取り、キャラクターがわかる。
先の“It Don't Come Easy”のB面だった、“Early 1970”は、“あの3人”について
その微妙な距離感と、自分の率直な気持ちを綴った歌だ。
農場に住んでて、愛嬌もたっぷり。
牛は飼ってないけど、羊はいっぱい飼ってるんだ。
新しい奥さんと家族に囲まれてる。
そして、彼がこの街にやってきたら、
僕と一緒にプレイしてくれるのかなぁ・・。
ベッドに横たわって、テレビばっか見てる、
クッキーと彼女をそばに、はべらせてさ。
彼女は日本人さ。 大声で叫んだかと思ったら、
もう彼らは自由の身なんだ。
そして、彼がこの街にやってきたら、
僕と一緒にプレイしてくれるに決まってるのさ。
彼は、内股で髪の長いギタリストさ。
脚の長い彼女は、雛菊を庭で摘んでスープに入れるんだ。
40エーカーもある家で、彼を見ることなんてないんだ。
なぜなら、彼はいつでも僕と一緒にプレイしてるからさ。
そして、僕が街に行ったら、3人みんなで会いたいなぁ・・。
当時、この曲を聴いて、心を痛めていた、世界中のビートルズ・ファンは、
どれだけ、救われたことでしょう。 癒されたことでしょう。

やっぱ、「リンゴはリンゴ」だ。
たぶん、リンゴの作品をまとも(?)に聴いているのは、99%ビートルズ・ファン
だと思うけど、、けっして、リンゴに傑作を求めるファンはいないのでは・・。
悪い意味ではありません。 聴いていて、心地良ければそれでいい。
盛り上がってくる、ノッテくる、アドレナリンが出まくってくる雰囲気を
一気にクールダウンさせる、生ぬる~い、負のパワー。
良くも悪くも、マイナスイオン出しまくりの存在感。
ビートルズの張り詰めた、研ぎ澄まされた緊張感には、最高の中和剤。
これが、リンゴの真骨頂。
ビートルズ時代から、リンゴの曲を聴いた後に、
「人と争いたくなりますか? ケンカしたくなりますか?」と言いたくなる。
落ち目だった70年代後半以降からは、日本のCMにも、たくさん出てた。
大昔に何のCMかは忘れちゃったけど、UFOから宇宙服来て降りて出てきたり、
炭酸飲料とか、チュウハイのやつだと、「リンゴ、擦ったぁ~」って・・。
笑顔でニッコリ。(失笑よりも、ちょっと悲しかった記憶があるけど)
リンゴは、仕事も選びません。
人徳は強し。 究極の癒しキャラ。 みんなが、ニコニコしていられる。
だから、リンゴの元にはいつも一流のミュージシャンが揃うのだ。
「♪僕がキーをはずして歌ったら、君はどう思うのかな。
音程をはずさないように、精一杯頑張って歌うよ。
僕には、友達が助けてくれるから、うまく歌えるし、楽しく歌えるんだ。」
20代そこそこで、「最高の友達たち」が、この曲をリンゴにプレゼントしてくれた。
これが、まるで予言していたかのように、今後の彼の音楽人生を
そのまま物語るなんて・・。

Photograph
It Don’t Come Easy
You’re Sixteen
(You’re Beautiful And You’re Mine)
Back Off Boogaloo
I’m The Greatest
Oh My My
Only You (And You Alone)
Beaucoups Of Blues
Early 1970
Snookeroo
The No-No Song
(It’s All Down To) Goodnight Vienna
Hey Baby
A Dose Of Rock ’N’ Roll
Weight Of The World
King Of Broken Hearts
Never Without You
Act Naturally (duet with Buck Owens)
Wrack My Brain
Fading In And Fading Out
しばらくでございます。 実は先週、体調を崩してしまいまして・・。
おまけに、PCの不具合もありまして、 記事も“固まった”状態でしたが、
ようやく、体も戻ってきたり、環境も整ったので、またポツポツと進めて参ります。
さて年も明け、昨年のビートルズ・リマスター騒動(私はそう呼んでます)から、
時間も経つにつれ、ずいぶん落ち着いた感があるように思います。
が。 当の“生きるビートル”2人は、どうしてるのかといいますと・・。
隠居なんて言葉は、いやはや、この2人の辞書には全くありません。
ベテランなどという域を遥かに超えた、“伝説”であるにも関わらず、精力的に
現役ミュージシャンとして活動しています。 嬉しいじゃありませんか。
まずポールは、昨年7月にニューヨークで行われた最新ライブを11月に緊急リリース
して、健在ぶりをアピール。 エラい人ですよ、ほんと。 この底のない
エンターテイナーぶり、“オーディエンス至上主義”のミュージシャン・シップは
ほんと頭が下がります。 素晴らしい。 ブラボー。 気持ちの“入り”が全然違う。
今のバンド・メンバーになって、間違いなく最高の出来。 まだまだ“できる”。
また機会を設けて、しっかりレビューしなくては。


そして、リンゴも、今月なんと2年ぶりのニュー・アルバム「Y Not」を発表。
(実は、コレを書いてる段階では、まだ未聴なんですが・・。)
今回は初のセルフ・プロデュース。 そして、またまた彼の人柄に魅せられた豪華な
ゲストが今回もたくさん参加してくれて、リンゴを盛りたてて、引き立てる。
しかも、98年の「ヴァーティカル・マン」以来となる、ポールも参加して、
デュエツトしたり、ベースまで弾いてくれたりと、これまたニンマリしてしまう。
本名・リチャード・スターキー。 芸名・リンゴ・スター。
ビートルズ加入前に在籍してたロリー・ストーム&ザ・ハリケーンズ時代、メンバーが
アダ名で呼び合ってた時、指輪(Ring)を4つも付けてた彼を「Rings」って呼んでて、
それが、なまって「Ringo」に、でも、リンゴ・スターキーじゃ、長ったらしいんで、
半分に縮め、Rを付けて、「リンゴ・スター」に。

今回は、他の3人よりも、ずいぶんレビューが遅くなってしまったけど、
(ごめんよ、リンゴ)
“偉大なる天才ドラマー、かつ、稀代の天然シンガー”である、
第4のビートル、リンゴ・スターの話でございます。 よろしくお付き合いを。
私は、ある人にこう言ったことがある。
「ビートルズは、3人の天才と1人の優れた才能を持った男の音楽集団だ」って。
3人の天才っていうのは、“あの2人”と、もう1人は“リンゴ”のことです。
(ジョージは天才じゃありません。 彼は優れた才能を持って生まれ、あの2人の
天才のもとに隠れ、その能力を温め、努力して、最後には見事に大開花させた人。)
「えっ、リンゴが天才?」 そう思う方も多いと思いますが、
これは、彼の天性のドラミング・センスが、タダものではないということ。
歌なんか、正直、そんなにうまくない。 いや、音痴とヘタウマのギリギリの
ラインを狙ってるっていうか・・。 いやはや、オンリー・ワンだ。
あの“Yellow Submarine”や、“With A Little Help For My Friends”
なんて、書いたあの2人が歌っても、“あの味”は出ない。 リンゴだけだ。
(例のリマスター盤を高く評価してる私ですが、ダメな曲だってありました。
リンゴの“美声”が最高に癒してくれる“Good Night”だけど、あれはダメ。
リマスターで、ストリングスとコーラスがクリアになったのはいいんだけど、
中盤以降、リンゴの声が埋没してしまう結果に。 MONOはもっとダメ。 )
音楽的才能も、う~ん・・なんだけど・・。 まぁ、ご愛嬌よろしく。
しかし、天才ですよ。 彼が叩いてなきゃ、あのビートルズ独特のグルーヴ感は絶対
生み出されていない。 そして、真似できない魅力があるんですよ、リンゴには。
まず、リンゴのドラミングは“前に出過ぎず、後ろに下がり過ぎず”曲の良さを
引き立てる的確なサポートが基本。 (手数が多くて“オカズ”の多い派手さはない)
初期から「LET IT BE」以前まで、一貫してシンプルな「ラディック」のジャズ・
セットモデルを愛用。 初期から中期は皮をピンと張ったハイ・チューニングの
跳ねる音。 (ノリと勢いに任せて、走ったりモタったりと、まぁ大騒ぎなこと)
後期は緩めに張って、深みの出るロー・チューニングの重厚な音へと変化していく。
この当時多かったジャズドラマーや鼓笛隊のようにスティックを逆手持ちせず、
手の甲を上に向けて叩く。 初期から中期のロック調の曲ではハイハット半開きの
往復ビンタ攻撃が得意技。 (イチローじゃないけど、振り子打法の原理です)
手首のスナップをフルに効かせています。 これが独特なグルーヴを生み出すんです。
(ノってくると、髪を振り乱して叩くんだけど、なぜかうるさくならない。
軽やか。)
ドラムやってる人なら、わかると思うんですが、
コレ、なかなか練習しても身に着くものじゃない。
持って生まれたセンスなんだろう。

またリンゴは、実は左利き。 でも、右利き用のドラムのセットで叩いてるんです。
だから、通常のドラム・アクセントにはならないような感じもわかる。
元来シャッフル・ビートが上手いんで、ロック的な8ビートを要求しても、
どこかシャッフル気味なドラミングになってしまうことが、ビートルズのサウンドの
特長にもなってる。
例えば、“Something”のイントロのフィルインなんかそう。
この曲では、ポールのベースが絶賛されるけど、これは、“黄金のバッテリー”だ。
ポールのベースとリンゴのドラムとの濃厚なデュエット。 この2人しかできない。
(この2人のベスト・ヘヴィー・グルーヴは、“Rain”。 やっぱ、これだろう。)
ジョージが泣くように、「♪I Don't Know~。 I Don't Know~。」と歌った
直後の下降フレーズの絡みとこなんか、円熟の域だ。
また、彼は太鼓の「1音」の温かみというか、深みというか、そういう味を持った
ドラマーでもある。 (ジョンの“Mother”での1音1音刻まれるスネアの見事なこと)
ビートルズって、どんなにアヴァンギャルドにぶちキレても、
どこか人なつっこい響きがするのは、このリンゴのドラムのおかげなんじゃないかぁ。
「あの3人とは、みんないい友達さ。」
「僕の曲なんて、アルバムに最低1曲入ってればOKさ。」
「人気投票だったら、他の3人には敵わないけど、
2番目に好きなメンバーは誰って投票なら、1番になれるよ。」
こんな彼の発言にある通り、リンゴの人柄がにじみ出てるコメントばかりだ。
この絶妙なポジション取りというか、自分をよく解ってるっていうか、
「徳」を持ってんですよ。 これも、“天性”の驚くべき才能だ。
だから、「ねぇ、ちょっと助けてくれないかなぁ・・。」なんて言うと、おいこらと
ばかりに、なぜかどんどん友達が集まってくる。 何もしなくても。
ソロ・アルバムを作るとなれば、作曲から演奏、コーラス、プロデュースと、
錚々たるミュージシャンが次から次へ、名を連ねる。 今日までに、
元同僚の3人、エリック・クラプトン、ドクター・ジョン、ボブ・ディラン、
ザ・バンドの面々、ビリー・プレストン、エルトン・ジョン、マーク・ボラン、
ブライアン・ウィルソン、ハリー・ニルソン、デヴィッド・フォスター、
ジェフ・リン(ELO)、オジー・オズボーン、ジョー・ウォルシュ(イーグルス)
などなど・・。 これは、ほんのごく一部。 あまりに幅広い交友関係だ。
ジャンルや国を問わず、あり得ないメンツばかりが、ズラリを顔を揃える。
シーンにカムバックした89年から、オールスター・バンドを構成してツアーを敢行。
現在に至るまでに、その都度、豪華なメンバーを入れ替えて、続けられてる。
みんな、リンゴが大好き。 みんなが、助けてくれるんです。
これは、リンゴ初のオールタイムのベスト盤。
ビートルズ解散後、CAPITOL(Apple)からリリースしていたが、
(アナログ時代のベスト盤「BLAST FROM YOUR PAST」以降、Appleを離れる)
その後、アトランティック、マーキュリー、ボードウォーク、THE RIGHT STUFF
など、(RING‐Oなんて、自身のレーベルも設立したこともあったけど、大失敗)
鳴かず飛ばずだった70年代後半から80年代は、様々なレーベルを渡り歩いていただけに
音源が四方八方に散乱していたけど、今回は、そのレーベルを越えたオールタイムな
ベスト盤となっただけに、それだけでも、とても意義がある内容。

CAPTOL時代の“It Don't Come Easy(明日への願い)”、“Photogragh”や、
“Back Off Boogaloo”、“You're Sixteen”などといった大ヒット曲から、
近代になる90年代から現在に至るまで、コンスタントに選曲された、
ヒストリー的ベスト盤だ。
(ただあまりに凋落の激しかった80年代からは、81年にギリギリTOP40ヒットになった
“Wrack My Brain”だけとは寂しいなぁ・・。 いい曲けっこうあったんだけど。)
ただ紛れもなく、リンゴは“ビートルズ”の一員。
他の3人と同様に、彼の残した音源は、貴重であるし、もっと大事にしないと。

私が、一番好きなのは、やっぱ“It Don't Come Easy(明日への願い)”。
70年2月に「SENTIMENTAL JOURNEY」制作時に録音されたが、オクラ入りに。
その後、71年4月に、英米共に4位の大ヒットを記録した、リンゴの出世作がコレ。
この曲って、リンゴ作だけあって、全然コード展開しないんだけど、ジョージの絶妙な
アレンジとセンスでもって、良質なポップ・ソングに仕上げたのは、さすが。
CS&Nのスティーヴン・スティルスがピアノで参加し、ハンブルグ時代の親友で
名ベーシスト兼画家のクラウス・フォアマンがベース。
(あの「REVOLVER」のジャケットを書いたのは彼)
そして、あの“My Sweet Lord”にも登場させるバッド・フィンガー率いる
「ハレ・クリシュナ隊」がバック・コーラスで、リンゴをしっかりサポート。
ジョージとしたら、「ALL THINGS MUST PASS」の“練習台”としては、
上々の出来だろう。
また続く、ジョージがプロデュースしたファンキーな“Back Off Boogaloo”は
“のほほん”としたリンゴの楽曲の中でも、スリリングな展開が魅力。
ジョージのスライドが縦横無尽に唸り、リンゴも珍しくドタバタとスネアを歪ませ、
フォアマンのベースも固くゴンゴンと刻んで、もの凄いヘヴィー・グルーヴを生む。

そして、ド派手なイルミネーションで自分の名前をタイトルにした、まさに、
リンゴ版「ザッツ・エンターテインメント」であり、かつ、リンゴの最高傑作である
「RINGO」のオープニングでもあった、ジョン作の“I'm The Greatest”だ。
「俺様は、偉大なる人物である」と、“豪語”できるというか、ハッタリかませるのは
リンゴだから。 (ジョンが、もしこの曲を歌ったもんなら、何を言われるか・・。)
この曲は、「“ポール”レス・ビートルズ」。 ポールに言わせたら、“3 Legs”。
「3本足の犬なんて、歩けっこないよ」って曲にしてるくらいだけど、いやいや、
ジョンが、ピアノとハモリでアクセントを加え、ジョージが決めのフレーズを入れる。
“彼”の代わりに、ビリー・プレストン(Org)と、フォアマンがベースに加わり、
リンゴにしたら、少々辛めの切れ味鋭い、屈折ポップに。 これは、かっこいい。
しかし、ポールも、この「RINGO」では、“You're Sixteen”では、ひょうきんに、
バック・コーラスに参加。 のんびりとしたポールらしい“Six O'clock”を提供。
あの近親憎悪ともいえる、お家騒動や罵り合いの真っ最中に、この「RINGO」では、
リンゴの音頭取り一つで、全員が同じスタジオで演奏こそなかったものの、
あの“FAB 4”が勢ぞろい。 アルバムに「ビートルズ」が共存しているのだ。
この事実だけでも、リンゴの役割、位置取り、キャラクターがわかる。
先の“It Don't Come Easy”のB面だった、“Early 1970”は、“あの3人”について
その微妙な距離感と、自分の率直な気持ちを綴った歌だ。
農場に住んでて、愛嬌もたっぷり。
牛は飼ってないけど、羊はいっぱい飼ってるんだ。
新しい奥さんと家族に囲まれてる。
そして、彼がこの街にやってきたら、
僕と一緒にプレイしてくれるのかなぁ・・。
ベッドに横たわって、テレビばっか見てる、
クッキーと彼女をそばに、はべらせてさ。
彼女は日本人さ。 大声で叫んだかと思ったら、
もう彼らは自由の身なんだ。
そして、彼がこの街にやってきたら、
僕と一緒にプレイしてくれるに決まってるのさ。
彼は、内股で髪の長いギタリストさ。
脚の長い彼女は、雛菊を庭で摘んでスープに入れるんだ。
40エーカーもある家で、彼を見ることなんてないんだ。
なぜなら、彼はいつでも僕と一緒にプレイしてるからさ。
そして、僕が街に行ったら、3人みんなで会いたいなぁ・・。
当時、この曲を聴いて、心を痛めていた、世界中のビートルズ・ファンは、
どれだけ、救われたことでしょう。 癒されたことでしょう。

やっぱ、「リンゴはリンゴ」だ。
たぶん、リンゴの作品をまとも(?)に聴いているのは、99%ビートルズ・ファン
だと思うけど、、けっして、リンゴに傑作を求めるファンはいないのでは・・。
悪い意味ではありません。 聴いていて、心地良ければそれでいい。
盛り上がってくる、ノッテくる、アドレナリンが出まくってくる雰囲気を
一気にクールダウンさせる、生ぬる~い、負のパワー。
良くも悪くも、マイナスイオン出しまくりの存在感。
ビートルズの張り詰めた、研ぎ澄まされた緊張感には、最高の中和剤。
これが、リンゴの真骨頂。
ビートルズ時代から、リンゴの曲を聴いた後に、
「人と争いたくなりますか? ケンカしたくなりますか?」と言いたくなる。
落ち目だった70年代後半以降からは、日本のCMにも、たくさん出てた。
大昔に何のCMかは忘れちゃったけど、UFOから宇宙服来て降りて出てきたり、
炭酸飲料とか、チュウハイのやつだと、「リンゴ、擦ったぁ~」って・・。
笑顔でニッコリ。(失笑よりも、ちょっと悲しかった記憶があるけど)
リンゴは、仕事も選びません。
人徳は強し。 究極の癒しキャラ。 みんなが、ニコニコしていられる。
だから、リンゴの元にはいつも一流のミュージシャンが揃うのだ。
「♪僕がキーをはずして歌ったら、君はどう思うのかな。
音程をはずさないように、精一杯頑張って歌うよ。
僕には、友達が助けてくれるから、うまく歌えるし、楽しく歌えるんだ。」
20代そこそこで、「最高の友達たち」が、この曲をリンゴにプレゼントしてくれた。
これが、まるで予言していたかのように、今後の彼の音楽人生を
そのまま物語るなんて・・。