世界一有名な横断歩道とスタジオに何を思う。(後編)
ABBEY ROAD THE BEATLES

前回は、アビー・ロード・スタジオ売却の話題から話して参りましたが、
2月21日付の報道によると、この問題について、白紙に戻され、EMI側から、
アビー・ロード・スタジオを、今後も所有しておきたいとの意向を示し、
イギリス政府も、このスタジオを歴史的建造物として指定にして、
簡単に壊したり、改築することができなくなるようにするという。
莫大な負債を抱えているEMIの再生方法については、第3者と予備的な協議をしている
そうだけど、ポールが、「どうにかして、スタジオを救いたい」と、
何とか力になりたいとの、頼もしいコメントを発表してくれたのを筆頭に、
ミュージシャンの有志が、スタジオを何とか救おうと、声を上げてくれました。
嬉しいじゃありませんか。
“アビー・ロード・スタジオ”騒動は、一件落着しましたが、
改めて歴史を重んじる、イギリス国民の“早い決断力”に感動した次第です。
(あ~だこ~だ言って、ちっとも問題解決できない、どっかの島国とは違います)
前回は、あえて触れなかったんですが、「ABBEY ROAD」のジャケットの話を
しておいて、ビートルズ史上屈指の都市伝説である「ポール死亡説」について、
やはり触れないワケには参りません・・。

「ポール死亡説」(Paul is Dead)とは、1969年にアメリカ合衆国イリノイ州立大学の
学生新聞「ノーザン・スター」(同年9月23日付)に掲載された記事で、
『ポール・マッカートニーは1967年1月に自動車事故で死亡している』というものだ。
また、「今いるポールは替え玉だ」というガセネタを、FM局が発表してしまったんで、
アメリカを中心に広まってしまった都市伝説。 その替え玉が、あの「SGTペパー」の
“ビリー・シアーズ”だと言うガセネタも流れたけど、その年までに発売された
ビートルズのアルバムや楽曲に「証拠」として、こじつけの出来る箇所が数多く
見つかった結果、多くの人に信じられてしまった。
その“こじつけ”は、「SGTペパー」のジャケットくらいまで遡って、“研究”してるが、
ここでは、この騒動の発端となった「ABBEY ROAD」のジャケットを見てみよう。



1. 表ジャケットの写真で、ポールのみ裸足であり、これは死者を意味する。
(同日に撮られた別の写真では、サンダルを履いている。(トップの写真)
ポールは裸足になった理由を「ただ暑かったからさ」と述べている)
2. 表ジャケットの写真で、ポールのみが右脚を前に出しており(他の3人は左脚)、
ポールが遊離して見える(これは目立ちたがり屋のポールの発想という説がある)
3. 表ジャケットの写真で、本来左利きのポールが右手にタバコを持っており、
これはポールが替え玉である証拠である。
(しかし実際には「生前」のポールも右手で持つことがあった)
4. 表ジャケットの写真で、後方に写っているワーゲンのナンバー・プレート
「28IF」は、「もし(IF)ポールが生きていたら28歳だ」とのメッセージである
(実際には「281F」であり、しかも、1942年生まれのポールは当時27歳だった)
これに対して「東洋思想に傾倒していたビートルズは数え年を使用していた」
との、何とも無理やりな反論まであった。
5. 表ジャケットの写真は、ポールの葬列を意味していて、ジョンは神父、
リンゴは葬儀屋、ポールは死体、ジョージは墓堀り人夫を表している。
6. 表ジャケットの写真で、ポールが目をつぶって歩いている。
7. 裏ジャケットの写真の"THE BEATLES"と書かれたタイルにひびが入っており、
グループの分裂を暗示している。 しかもそのヒビは複数形の"S"に入ってある。
8. 上記の"THE BEATLES"の左側に黒く丸い跡のようなものがあるけど、
その8個の丸い跡を繋ぐと、ビートルズは「4」人だが「3」になる。
収録曲にも、あらぬ“こじつけ”が・・。
9. “Come Together”で、「♪One and One and One Is Three」
(1+1+1=3だ)と歌っている。
この意味は、上記の裏ジャケ跡の3と同じである。
10. “Something”を逆転再生すると、「♪Where the Beatles's Paul?」
(ビートルズのポールはどこに行った?)と聞こえる。
11. “Oh Darling”の、「Oh, Darlin'!」を逆回転させると、
「In Me Lives He.」(彼は私の中で生きてる)に聞こえ、
「Oh」を逆回転させると「Paul」と聞こえる。
など、まだ探せば出てきそうだけど、ここまで来ると、空耳も、ほとんど病気・・。
逆回転なんて発想は、いやはや、なんともアナログチックな発想といい、
(もし「ポールの替え玉」が、ほんとなら、この替え玉は、とんでもない奴だっての)
はっきり言って、これは、究極のこじつけと、奇跡的な“偶然の一致”に他ならない。
もちろん、ポールは、いまだにご健在でございます。
では、前回に引き続き、「ABBEY ROAD」B面から、再スタート致します。
「毎日Appleへ行くことが学校みたいになって、まるでビジネスマンのように
書類にサインばかりしてたよ。 でも、ある日決めたんだ。
サボっちゃおうって。 そして、エリック(クラプトン)の家に行って、
庭を散歩したよ。 経理の奴らの顔なんて見なくてもいいしさ。
ほんとに気が休まったよ。 そして、エリックにアコギを借りて書いたんだ」
おてんとさんが、ニコニコ、ポカポカ、こんにちは。
よほど天気も良く、気分も健やかだったんでしょう。
ジョージは、ここでも大傑作“Here Comes the Sun”を生み出します。
アコースティックな音色がシンプルに響くけど、実は凄く複雑な音の重なり
で構成されてる。 モーグ・シンセの異なる音色を数回オーヴァーダヴして、
メロディを色付けたり、陰影を付けたり、曲のコントラストを決めて、
オーケストラにコーラスも加えて、実に凝った音で出来てる。
(ここでも、“出たがり屋さん”のベース・ラインは非凡のセンスで歌います)
“Because”は、ビートルズの芳醇なコーラス・ヴォーカルが堪能できる。
ビートルズがコーラス・グループとしても大変優れていることを示す。
ジョン、ポール、ジョージの3人が各3パート歌い、それを3重に重ね合わせた
トータルで9パートの声が、緻密かつ完璧なピッチで、夢幻的空間を創り出す。
「僕は泣けてくるんだ。 だって、空が青いからさ・・。」
なんて素朴で美しいハーモニーなんだろう。
そして、ここからが「ABBEY ROAD」のハイライトである組曲が紡いでいく。
1曲1曲が独立して成立した曲はなく、歌われる内容にもテーマ性は全く無い。
(この脈絡のないメドレー方式は、「SGTペパー」に似てなくもないが・・)
部分的に未完成な曲が、そのままになっていたんで、これらを繋げるという
ポールの発案だが、ジョンは生前ギリギリまで、このメドレーは嫌いと言い切る。
ポールが、切なく「Appleのお金の議論」に愚痴ると、ジョンが、
夢の中で浮かんだ「太陽の王様」は、デタラメなスペイン語で浮遊して繋ぎ、
「ホームレスのすけべじじい」に、「ポリ袋で変態的プレイ」でダイナミックに
展開、(ポールのブースターをミックスしたファズ・ベースが唸りまくる)
「どの曲もクズみたいな曲」とバッサリ切られるジョンの曲群は、
このメドレーでは、なかなかいいポジションで貢献している。
ポールも負けじと、「彼の風呂場の窓から侵入してくる危ないファン」を
こきおろすように、グルーヴにのせてグイグイと引っ張り回すのだ。
メドレーは、リセットされて、ポールは鍵盤の前で、子守唄を弾き語る。
「昔は、帰り道もあったのに・・。」と、ストリングスがメロディを引き立てる。
しかし、彼らは、「とてつもない名声と責任を背負って生きていかねばならない」
と壮大に歌い上げる。 これは、自らが“ビートルズ”であったことに対する、
これからの“決意表明”だ。
リンゴの“初”であるドラム・ソロは、バスドラを響かせて、スリル感満点のまま、
ポール、ジョージ、ジョンの順で、ある意味“ヘタウマ”なギター・リレーに突入。
メロディックなポールに、職人的ジョージの巧さに、リズミカルなジョンの
それぞれの個性が、短くもバトルを繰り広げ、
「そして最後は、君が奪った愛は、君が与える愛と同じなんだ」と
哲学的メッセージを残し、ビートルズは終焉を迎えたのだった。
見事だ。 これぞ永遠のカタルシス。 あまりに美しい散り方であった。
(もともと、“Mean Mr. Mustard”と“Polythene Pam”の間に入れるはずだった
“Her Majesty”は、(いきなりジャ~ンって始まるのは、“Mean Mr. Mustard”
の最後の音だ) ラフ・ミックスの段階で、ポールが考えを変えて、
「やっぱ、よくないなぁ。 カットしといてくれ。」と指示されたエンジニアが、
テープをカットしたが、ポールが去った後、常々テープは、何でも
捨てるなって言われてたんで、そのテープに赤のリーダー・テープをつけて、
マスターの一番お尻にくっつけて置いてたらしい。 しかし次の日、
別のエンジニアが、プレイバック用のラッカー盤をカッティングする際に、
「“Her Majesty”は不要」って、箱の上に紙に書いて伝達してあったが、
「う~ん。何でも捨てるなって言われてるしなぁ」と、そのままにしておいた。
後で、それを聴いたポールが気に入って、そのまま採用となった。)

ラストに、今回リマスターされたステレオ・ミックスの音はどうなのか。
(このアルバムは、基本的にリアル・モノラル・ミックスは存在しない)
もともと、この「ABBEY ROAD」は、LP時代から音が良く、マスターの録音の良さが
際立っていたが、1986年の初CD化の時も、かなり素晴らしい音質で、当時
「おお~。これがCDの音か」と驚いたもんです。 なので、今回のリマスターに
先立ち、この「ABBEY ROAD」については、リマスタリングの効果は
あまり無いのでは、と思ってたんです。(一番期待していない作品でした)
ところがです。 今回のリマスターで、一番効果が高かったのがコレだったんです。
音の分離がはっきりした結果、ヴォーカル、コーラスの輪郭も浮き出て、
ポールの驚愕のベース・ラインが、更に際立つ、コレは、鳥肌もの。
これは今回のリマスター全般に言えることなんですが、音のエッジが円滑になって、
音が非常に滑らかに感じる。 そして、ノイズ感が非常に抑制されている。とはいえ、
必要なノイズはしっかり残っていて、(“I Want You”のヒスノイズはそのままだ)
不要なノイズだけを選択して抑えたって感じ。 だから、“とても聴き易い”し、
“耳に優しい”。 ”アビー・ロード7人衆”の一人であるガイ・マッセイが
「アナログ時代のLP時代の音に限りなく近づける」と言う目的が達成されてるのだ。
最後に、もう一度言います。
『 「ABBEY ROAD」は、ベースで聴け 』。

前回は、アビー・ロード・スタジオ売却の話題から話して参りましたが、
2月21日付の報道によると、この問題について、白紙に戻され、EMI側から、
アビー・ロード・スタジオを、今後も所有しておきたいとの意向を示し、
イギリス政府も、このスタジオを歴史的建造物として指定にして、
簡単に壊したり、改築することができなくなるようにするという。
莫大な負債を抱えているEMIの再生方法については、第3者と予備的な協議をしている
そうだけど、ポールが、「どうにかして、スタジオを救いたい」と、
何とか力になりたいとの、頼もしいコメントを発表してくれたのを筆頭に、
ミュージシャンの有志が、スタジオを何とか救おうと、声を上げてくれました。
嬉しいじゃありませんか。
“アビー・ロード・スタジオ”騒動は、一件落着しましたが、
改めて歴史を重んじる、イギリス国民の“早い決断力”に感動した次第です。
(あ~だこ~だ言って、ちっとも問題解決できない、どっかの島国とは違います)
前回は、あえて触れなかったんですが、「ABBEY ROAD」のジャケットの話を
しておいて、ビートルズ史上屈指の都市伝説である「ポール死亡説」について、
やはり触れないワケには参りません・・。

「ポール死亡説」(Paul is Dead)とは、1969年にアメリカ合衆国イリノイ州立大学の
学生新聞「ノーザン・スター」(同年9月23日付)に掲載された記事で、
『ポール・マッカートニーは1967年1月に自動車事故で死亡している』というものだ。
また、「今いるポールは替え玉だ」というガセネタを、FM局が発表してしまったんで、
アメリカを中心に広まってしまった都市伝説。 その替え玉が、あの「SGTペパー」の
“ビリー・シアーズ”だと言うガセネタも流れたけど、その年までに発売された
ビートルズのアルバムや楽曲に「証拠」として、こじつけの出来る箇所が数多く
見つかった結果、多くの人に信じられてしまった。
その“こじつけ”は、「SGTペパー」のジャケットくらいまで遡って、“研究”してるが、
ここでは、この騒動の発端となった「ABBEY ROAD」のジャケットを見てみよう。



1. 表ジャケットの写真で、ポールのみ裸足であり、これは死者を意味する。
(同日に撮られた別の写真では、サンダルを履いている。(トップの写真)
ポールは裸足になった理由を「ただ暑かったからさ」と述べている)
2. 表ジャケットの写真で、ポールのみが右脚を前に出しており(他の3人は左脚)、
ポールが遊離して見える(これは目立ちたがり屋のポールの発想という説がある)
3. 表ジャケットの写真で、本来左利きのポールが右手にタバコを持っており、
これはポールが替え玉である証拠である。
(しかし実際には「生前」のポールも右手で持つことがあった)
4. 表ジャケットの写真で、後方に写っているワーゲンのナンバー・プレート
「28IF」は、「もし(IF)ポールが生きていたら28歳だ」とのメッセージである
(実際には「281F」であり、しかも、1942年生まれのポールは当時27歳だった)
これに対して「東洋思想に傾倒していたビートルズは数え年を使用していた」
との、何とも無理やりな反論まであった。
5. 表ジャケットの写真は、ポールの葬列を意味していて、ジョンは神父、
リンゴは葬儀屋、ポールは死体、ジョージは墓堀り人夫を表している。
6. 表ジャケットの写真で、ポールが目をつぶって歩いている。
7. 裏ジャケットの写真の"THE BEATLES"と書かれたタイルにひびが入っており、
グループの分裂を暗示している。 しかもそのヒビは複数形の"S"に入ってある。
8. 上記の"THE BEATLES"の左側に黒く丸い跡のようなものがあるけど、
その8個の丸い跡を繋ぐと、ビートルズは「4」人だが「3」になる。
収録曲にも、あらぬ“こじつけ”が・・。
9. “Come Together”で、「♪One and One and One Is Three」
(1+1+1=3だ)と歌っている。
この意味は、上記の裏ジャケ跡の3と同じである。
10. “Something”を逆転再生すると、「♪Where the Beatles's Paul?」
(ビートルズのポールはどこに行った?)と聞こえる。
11. “Oh Darling”の、「Oh, Darlin'!」を逆回転させると、
「In Me Lives He.」(彼は私の中で生きてる)に聞こえ、
「Oh」を逆回転させると「Paul」と聞こえる。
など、まだ探せば出てきそうだけど、ここまで来ると、空耳も、ほとんど病気・・。
逆回転なんて発想は、いやはや、なんともアナログチックな発想といい、
(もし「ポールの替え玉」が、ほんとなら、この替え玉は、とんでもない奴だっての)
はっきり言って、これは、究極のこじつけと、奇跡的な“偶然の一致”に他ならない。
もちろん、ポールは、いまだにご健在でございます。
では、前回に引き続き、「ABBEY ROAD」B面から、再スタート致します。
「毎日Appleへ行くことが学校みたいになって、まるでビジネスマンのように
書類にサインばかりしてたよ。 でも、ある日決めたんだ。
サボっちゃおうって。 そして、エリック(クラプトン)の家に行って、
庭を散歩したよ。 経理の奴らの顔なんて見なくてもいいしさ。
ほんとに気が休まったよ。 そして、エリックにアコギを借りて書いたんだ」
おてんとさんが、ニコニコ、ポカポカ、こんにちは。
よほど天気も良く、気分も健やかだったんでしょう。
ジョージは、ここでも大傑作“Here Comes the Sun”を生み出します。
アコースティックな音色がシンプルに響くけど、実は凄く複雑な音の重なり
で構成されてる。 モーグ・シンセの異なる音色を数回オーヴァーダヴして、
メロディを色付けたり、陰影を付けたり、曲のコントラストを決めて、
オーケストラにコーラスも加えて、実に凝った音で出来てる。
(ここでも、“出たがり屋さん”のベース・ラインは非凡のセンスで歌います)
“Because”は、ビートルズの芳醇なコーラス・ヴォーカルが堪能できる。
ビートルズがコーラス・グループとしても大変優れていることを示す。
ジョン、ポール、ジョージの3人が各3パート歌い、それを3重に重ね合わせた
トータルで9パートの声が、緻密かつ完璧なピッチで、夢幻的空間を創り出す。
「僕は泣けてくるんだ。 だって、空が青いからさ・・。」
なんて素朴で美しいハーモニーなんだろう。
そして、ここからが「ABBEY ROAD」のハイライトである組曲が紡いでいく。
1曲1曲が独立して成立した曲はなく、歌われる内容にもテーマ性は全く無い。
(この脈絡のないメドレー方式は、「SGTペパー」に似てなくもないが・・)
部分的に未完成な曲が、そのままになっていたんで、これらを繋げるという
ポールの発案だが、ジョンは生前ギリギリまで、このメドレーは嫌いと言い切る。
ポールが、切なく「Appleのお金の議論」に愚痴ると、ジョンが、
夢の中で浮かんだ「太陽の王様」は、デタラメなスペイン語で浮遊して繋ぎ、
「ホームレスのすけべじじい」に、「ポリ袋で変態的プレイ」でダイナミックに
展開、(ポールのブースターをミックスしたファズ・ベースが唸りまくる)
「どの曲もクズみたいな曲」とバッサリ切られるジョンの曲群は、
このメドレーでは、なかなかいいポジションで貢献している。
ポールも負けじと、「彼の風呂場の窓から侵入してくる危ないファン」を
こきおろすように、グルーヴにのせてグイグイと引っ張り回すのだ。
メドレーは、リセットされて、ポールは鍵盤の前で、子守唄を弾き語る。
「昔は、帰り道もあったのに・・。」と、ストリングスがメロディを引き立てる。
しかし、彼らは、「とてつもない名声と責任を背負って生きていかねばならない」
と壮大に歌い上げる。 これは、自らが“ビートルズ”であったことに対する、
これからの“決意表明”だ。
リンゴの“初”であるドラム・ソロは、バスドラを響かせて、スリル感満点のまま、
ポール、ジョージ、ジョンの順で、ある意味“ヘタウマ”なギター・リレーに突入。
メロディックなポールに、職人的ジョージの巧さに、リズミカルなジョンの
それぞれの個性が、短くもバトルを繰り広げ、
「そして最後は、君が奪った愛は、君が与える愛と同じなんだ」と
哲学的メッセージを残し、ビートルズは終焉を迎えたのだった。
見事だ。 これぞ永遠のカタルシス。 あまりに美しい散り方であった。
(もともと、“Mean Mr. Mustard”と“Polythene Pam”の間に入れるはずだった
“Her Majesty”は、(いきなりジャ~ンって始まるのは、“Mean Mr. Mustard”
の最後の音だ) ラフ・ミックスの段階で、ポールが考えを変えて、
「やっぱ、よくないなぁ。 カットしといてくれ。」と指示されたエンジニアが、
テープをカットしたが、ポールが去った後、常々テープは、何でも
捨てるなって言われてたんで、そのテープに赤のリーダー・テープをつけて、
マスターの一番お尻にくっつけて置いてたらしい。 しかし次の日、
別のエンジニアが、プレイバック用のラッカー盤をカッティングする際に、
「“Her Majesty”は不要」って、箱の上に紙に書いて伝達してあったが、
「う~ん。何でも捨てるなって言われてるしなぁ」と、そのままにしておいた。
後で、それを聴いたポールが気に入って、そのまま採用となった。)

ラストに、今回リマスターされたステレオ・ミックスの音はどうなのか。
(このアルバムは、基本的にリアル・モノラル・ミックスは存在しない)
もともと、この「ABBEY ROAD」は、LP時代から音が良く、マスターの録音の良さが
際立っていたが、1986年の初CD化の時も、かなり素晴らしい音質で、当時
「おお~。これがCDの音か」と驚いたもんです。 なので、今回のリマスターに
先立ち、この「ABBEY ROAD」については、リマスタリングの効果は
あまり無いのでは、と思ってたんです。(一番期待していない作品でした)
ところがです。 今回のリマスターで、一番効果が高かったのがコレだったんです。
音の分離がはっきりした結果、ヴォーカル、コーラスの輪郭も浮き出て、
ポールの驚愕のベース・ラインが、更に際立つ、コレは、鳥肌もの。
これは今回のリマスター全般に言えることなんですが、音のエッジが円滑になって、
音が非常に滑らかに感じる。 そして、ノイズ感が非常に抑制されている。とはいえ、
必要なノイズはしっかり残っていて、(“I Want You”のヒスノイズはそのままだ)
不要なノイズだけを選択して抑えたって感じ。 だから、“とても聴き易い”し、
“耳に優しい”。 ”アビー・ロード7人衆”の一人であるガイ・マッセイが
「アナログ時代のLP時代の音に限りなく近づける」と言う目的が達成されてるのだ。
最後に、もう一度言います。
『 「ABBEY ROAD」は、ベースで聴け 』。