スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

--/--/-- --. --:-- [edit]

Category: スポンサー広告

TB: --  /  CM: --

top △

真夜中に木霊する哀愁の旋律と口笛の響き。 

          THE STRANGER      BILLY JOEL

            

       Movin' Out (Anthony's Song)    ムーヴィン・アウト
       The Stranger             ストレンジャー
       Just the Way You Are         素顔のままで
       Scenes from an Italian Restaurant  イタリアン・レストランで
       Vienna                 ウィーン
       Only the Good Die Young     若死にするのは善人だけ
       She's Always a Woman   シーズ・オールウェイズ・ア・ウーマン
       Get It Right the First Time       最初が肝心
       Everybody Has a Dream    エブリバディ・ハズ・ア・ドリーム


 日本には、変な迷信がいっぱいあります。
 「夜、口笛を吹くとヘビが出るぞ」なんて、子供の頃に、よく親に怒られたもんです。
 逆に、ヘビ見たさに夜、覚えたての口笛をピーピー鳴らしたりして。


 真っ暗になった部屋の中で、ラジカセのイヤホンから流れてくる、あの哀愁の旋律。
 そして、絶妙なタイミングで入ってくる、あの口笛の響き。
 そして、一瞬のブレイクの“間”の後、入ってくるビートとギター・フレーズ。
 どれをとっても、全てが新鮮で衝撃的。 メロディも転調も素晴らしい。
 それはまるで、見知らぬ都会の慟哭を歌っているかのように聴こえた・・。

 深夜遅く自室に戻り、それまで“外”へ向けて被っていた虚飾のマスクを外し、
 本当の自分に戻る。  つけていた能面(マスク)と向かい合う男。
 「人々は仮面を付けて、外側から身を守る。」 
 つまり、自分の中にある仮面(他人)と向き合うことを余儀なくされる。
 それは、大都会ニューヨークに住む人々の癒されない孤独感と心模様(ドラマ)を
 描いた“音の絵画”。 人間の弱さ、もろさを表現した詞に実にマッチしていて、
 ビリーは、その二面性を見事に“音”で表現する。

 今回は、彼の出世作であり、77年の不朽の名作「THE STRANGER」を、
 “素直”に語りたく思います。 よろしく、お付き合いを。

 

 “吟遊詩人”という言葉で私が思い浮かべるのは、やはりビリーだ。
 ポール・サイモンじゃ知的に過ぎるし、ジャクソン・ブラウンじゃ真面目過ぎる。
 ブルース・スプリングスティーンは・・詩人というか、労働者階級の代弁者だし。
 ディラン?・・は違うなぁ。 彼は天才。 ただ歌いたいことを歌ってるだけ。
 吟遊詩人には、必ず“風景”があって、そこに、どこかしら“おどけた”ところが
 必要なのではないかと思うんです。

 昔の映画とかで、よくあるじゃないですか。
 ダンス・パーティで上手くステップを踏もうとするんだけれど、ヘタクソで
 どうしても足を引き摺ってしまう・・・。 そんな男でも恋をする・・みたいな。
 そんな“世のブ男の強い味方”。 それが、ビリー最大の魅力なのでは。
 ビリーの歌は、そんな“もてない男”の世界をうまく描いていると思う。

 私の出会いの「ATTIC」後、ラジオから流れてきた、なぜか日本で局地的な
 人気を持つ(アメリカでは未シングル化)“The Stranger”をきっかけに、
 さらに彼の魅力にハマりこんだのは、やはり77年に発表された本作のせい。
 誰が何と言おうが、やはり名盤に違いありません。 
 彼のビッグ・サクセスは、このアルバムから始まったワケです。


 (2008年に30周年記念盤が出ましたが、これも素晴らしい“箱”でした。
  最新リマスタリングと、Disc2の未発表ライブ、DVDの特典内容が凄かった。
  ライブのセットリスト・音質共に見事。 アルバムの録音以前のライブで、
  “素顔のままで”と“イタリアン・レストランで”は、アレンジが
  今では聴き馴染みのあるものは違ってるし、秘蔵ライブ映像も含めて   
  家宝になっております。                       )

 
 アメリカのメジャーシーンでの、70年代初めからのシンガー・ソングライター・
 ブームから、フロア中心のディスコ・ブームに変わりつつあった当時。 
 ニューヨークを舞台にした現代人の孤独をソフィスティケイトされたメロディと
 風景画的なリリックで表現し尽くした傑作がコレ。

 この作品の成功は、かねてからアプローチしていた当時売れっ子プロデューサー
 だった、フィル・ラモーンを起用したことが一番の要因だろう。
 (この作品後も、彼のキャリアの重要な作品で共同作業していくことになるが、
  最初は当時の愛妻でマネージャーだったエリザベスの口説きに折れたそうだが)

      

 それまでのビリー・ジョエルといえば、「PIANO MAN」に代表されるように
 “詩的でフォーキーなピアノ・ソングライター”というイメージが強く、
 隠れた名曲もたくさん書いていたんだけど、大きなヒットになることはなく、
 彼にスポットライトが当たることはなかった。

 しかし、フィル・ラモーン起用最大の功績は「力強いバンド・サウンドの導入」。
 これが当たった。 過去のアルバムと決定的に違うところはここ。
 (過去の隠れた名曲を蘇らせた「ATTIC」の最大の要因は“バンド”を築いたこと)

 バンドを強固にすることで、サウンドのスケールを大きく拡げるとともに、
 表現における自由度を飛躍的にアップさせて、多様なアイデアも提案、実現でき、
 ビリーの楽曲の魅力を最大限に引き出すことが出来たんだと思う。

      

 ドラムに、盟友リバティ・デビート。 ベースに、故ダグ・ステッグメイヤー。
 のリズム隊に、花形サックス奏者リッチー・カナータという、ビリー・バンドの
 基本型が築かれて、ゲスト・ギタリストにハイラム・ブロックやスティーヴ・カーン
 といったジャズ系の職人や、アコギにヒュー・マクラッケンを起用。
 また、リチャード・ティーのオルガンに、ラルフ・マクドナルドのパーカッション。
 バック・コーラスに、フィービー・スノウや無名だったパティ・オースティンなど
 実に手堅い職人ミュージシャンを多数起用して、ビリーを盛りたてる。

 (ちなみに、ビリーは最近になって、印税の支払いで裁判で争っていたリバティと
  ようやく友好的な和解が成立したそうです。 やれやれ。 良かった良かった。)
 
 そんな凄腕のミュージシャン達をバックに、ビリーは才能を爆発させる。
 フォークやカントリーといったアメリカン・ミュージックのルーツを洗練された
 サウンドのなかで再現することで、新しいアメリカン・ポップスのフォームを
 生み出したという点でも、アメリカン・ポップス史上極めて重要な作品なワケです。

 “ムーヴィン・アウト”の歯切れの良いアレンジや、“イタリアン・レストランで”
 の起伏のある曲想。 そして、“ウィーン”のほのかな哀愁漂うアコーディオンの音色。
 今までは、垢抜けない安いバーでのピアノ弾きでしかなかったビリーを、
 違う次元にまで押し上げている。 

 でも、アルバムの主役は“Just The Way You Are(素顔のままで)”だろう。
 最初はアルバムから外される可能性もあったらしいけど、レコーディングに参加
 していたフィービー・スノウが絶賛をして、収録したという逸話もある、
 エリザベスへのバースディ・プレゼントとして捧げられたビリーの代表曲だ。

 リチャード・ティー(ビリー本人との説もあるが)の奏でるフェンダー・ローズ
 のイントロに次第に導かれていくように、ボサノバのリズムに乗せて、
 「ありのままの君が一番素敵なんだよ」と歌うビリーの“素直”な詞が心を打つ。

 ( でも、シングル・バージョンは、ちょっといただけません。 2番の、
    「服装や髪の色なんて変えちゃダメだよ。
     気のきいた会話もいらないよ。 疲れるだけだし。
     気安くなんでも話せる、今の君が一番素敵なんだよ。」
   という一番好きな歌詞がバッサリとカットされてる・・。     )

 そして、心の琴線に触れまくるアルト・サックスの甘く響き渡る音色。
 これは、バンドの花形サックス奏者リッチー・カナータではなく、
 (彼はテナー/ソプラノ・サックス奏者)
 ゲスト参加しているアルト・サックス奏者フィル・ウッズによるもの。 
 この素晴らしいソロで、曲の魅力が倍増。 貢献度はあまりに大きい。
 まさに名曲に名演あり。  

     

 私のお気に入りとして、ある意味でコンセプト・アルバムと言えるこの作品の
 最後を締めくくる佳曲である“Everybody Has a Dream”を挙げたい。

  「 静かな絶望に沈むこの時代に 僕は世界をさまよいながら、
    新しい閃きを探していた。
    与えられたものは冷ややかな現実だけだったけれども。

    お祝いをする理由が欲しい時や心慰める安らぎが欲しい時、
    僕は想像に身を委ね、夢の世界にまどろむ。

    誰もが夢を見る。 そして、僕の夢。 僕だけの夢。 
    家でくつろぐひととき。 二人だけで・・ 君と。    」

 これは、夜、静かな部屋で一人聴くべき曲だろう。
 様々な愛の形が歌われた後、ピアノとオルガンの静かで荘重な響きの中で、
 ビリーは「誰もが夢を見る」と囁く。
 このフレーズは繰り返されるうちに絶叫に変わり、消えていく。 
 そして、再びあの“The Stranger”の旋律と口笛が木霊するのである・・。

 

 アルバムのジャケットでビリーはベッドに横たわり、マスクを見つめている。
 壁にはボクシングのグローブが下がっている。
 きっと無名のボクサーなのだろう。  誰の顔も傷つけることはない。
 いや、出来ないはず・・。

 自分の“もう一つの”顔に何を夢見ているのだろうか。
スポンサーサイト

2010/05/25 Tue. 14:54 [edit]

Category: ビリー・ジョエル

Thread:洋楽CDレビュー  Janre:音楽

TB: 0  /  CM: 6

top △

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。