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リズムビートと打楽器の革新性は、顔をも溶かす。 

    PETER GABRIEL Ⅲ (Melt)  PETER GABRIEL

          

            Intruder (侵入者)
            No Self-Control
            Start
            I Don't Remember (記憶喪失)
            Family Snapshot
            And Through The Wire
            Games Without Frontiers
            Not One Of Us  (異邦人)
            Lead A Normal Life
            Biko


 みなさん、さらに、W杯盛り上がってますでしょうか。

 我ら青きサムライたちの見事な一次リーグ突破はもちろん。 
 熱きスーパープレーの連続に、また、意外な番狂わせもありと。  
 寝不足の毎日ですわ・・。

 今回の南アフリカ大会は、W杯史上初のアフリカ大陸での開催ということで、
 開催前には、何かと不安視される面もあったようですが、
 今のところは、滞りなく順調に大会も運営されるようですね。


 南アフリカといえば、94年にネルソン・マンデラ大統領が就任するまでは、
 有色人種に対する隔離政策(アパルトヘイト)が合法的に推進されていました。
 (撤廃された現在も、経済格差や失業率、教育水準の低さなどが、未だに
  影響を及ぼしており、これが今日まで至る、治安悪化の根底がここにある)

 かつては、このアパルトヘイトに対して、「間違ってる! バカげてる!」と
 怒りを露わにしてたミュージシャンたちが、たくさんいました。
 
 彼も、その一人です。
 ピーター・ガブリエル。(今じゃ“ゲイブリエル”と言われてるみたいですが)

 初期のジェネシスのフロントマンとして君臨し、ヴォーカリストとしてよりは、
 表現者として、偏執狂ともいえる、独特の“カリスマ”で魅了し、脱退後に、
 ソロになっても、独自の世界観で、現在も“カリスマ”を発揮し続けている。
 今宵は、“稀代のカリスマ”こと、ピーター・ガブリエルにて、
 よろしくお付き合いを。
 

 「 アルバムのジャケットは、雑誌の表紙のような感じで行こうと思ってね。
   例えば“TIME”なら毎号毎号タイトルは「TIME」だろう?
   違うのは、毎回表紙が僕だってことだけさ。             」

 アルバムにタイトルをつけるのが、大嫌いなんだそうだ。

 このアルバムの正式なタイトル名は、「PETER GABRIEL」であり、
 「Ⅲ」は、日本でのタイトル名である。  1枚目から4枚目までの、
 すべてのアルバムが「PETER BABRIEL」というタイトルで、“統一”されている。

  ( でも、区別するという意味で、アルバムのデザインで各アルバムに
    あだ名がついてる。 Ⅰは、「Car(車)」、Ⅱは、「Scratch(引っ掻き)」、
    Ⅲは、「Melt(溶解)」、IV は、「Security(防犯)」。しかし、
    Ⅳは、アメリカで「いい加減タイトルをつけろ」とクレームがついたんで、
    アメリカ版は、「Security」の名が正式に付けられた。          )

     

 通称「Melt」。  いつ見ても、おっかいないジャケットだ。
 まさしく“溶ける”蝋(ろう)のような顔は、見る者をゾッとさせ、
 人によっては、恐怖感を植え付けられるかもしれない。 
 夜寝る前に初めて見せられたら、けっして気持ちが良いものではない。
 しかし、この強烈なインパクトは、脳裏に焼き付き、二度と忘れる事ができない。
 こういった、オカルト的、ホラー的要素のセンスは、彼の世界観の象徴だ。
 (この優れたジャケット・デザインは、「Ⅰ」から一連の作品を手掛けてる、
  元ヒプノシスのストーム・トーガソンによるもの)

 これが意味するものは、ガブリエル自身の顔が溶けて崩れていく描写そのままに、
 溶けていった顔の裏側に現れた人間の本性、恐ろしいものを表現したような
 アルバムである。

 タイトルも“侵入者”(発売当時の邦題)、“ノー・セルフ・コントロール”、
 “記憶喪失”、“異邦人”など、人間の負の部分を増幅して戯画化したような
 異様な世界が、まるで悪夢のように繰り広げられる。

        

 また、このアルバムから、ジェネシス時代のシニカルなおとぎ話の世界から
 一転して、リアルな現実を直視した、現実世界を描く作風に変化していく。

 ソロ・デビュー当時は、ジェネシス脱退後の心境をフォーキーに綴るような
 心象風景を描き、「Ⅱ」では、試行錯誤してるようだが、ニュー・ウェーブ
 へと傾倒したバンド・サウンドに挑戦。 だが、ジェネシスの幻影は、
 完全には払拭できなかったように思う。
 
 しかし、「Ⅲ」で、フィル・コリンズと共同開発した“ゲート・リヴァーブ”や、
 フェアライトなどシンセサイザーを大胆に導入し、ビートやリズムを強調した
 独自のスタイルを確立。

 また、シンバルやハイハットなどのいわゆる金物の音を聴こえなく処理して、
 これとマリンバなどのロックでは、あまり使われない打楽器の多用によって
 新しい音楽を構築し、アフリカン・ビートや民族音楽のリズムを大胆に導入
 して、ワールド・ミュージックへの関心を深めていくことになる。

 この後、80年代後半に起こった世界的なワールド・ミュージック・ブームは、
 彼がパイオニアとなって、起こしていったもの。 
 その源流は、このアルバムから始まったといっても過言ではない。
 
 プロデューサーには、当時新鋭だったスティーヴ・リリーホワイトを起用。
 大胆な手法と確かな先見性。 この“音”は、当時のシーンに衝撃を与え、
 その後のニューウェーブの流れを決定づけた戦慄の一枚となった。

 ジェネシスの幻影を溶かし、新たな自分に生まれ変わった意味もあるのだろう。

 

 アナログに針を落とした瞬間、予想もせず、想像すら出来なかった世界に誘う。

 ゲート・リヴァーブを使い、フィル・コリンズの歪んだドラムの重低音が、
 「ダドッ!ダドッ!」と空間中に響き渡る、異様なダイナミックさに、
 「ギリギリギリ・・」と、耳触りの悪い、軋むワイヤーのような金属音。
 もうこの最初の4小節で鳥肌が立つ。 これぞ、オカルト・ロックの真骨頂だ。

  ( ちなみに、ゲート・リヴァーブというのは・・、
    深めにかけたリヴァーブ(残響音)を、ノイズゲートを使って、
    意図的に残響の途中で切り落とすエフェクトの事で、
    スネアにかける事が多く、80年代に大流行した音像処理。
    普通、太鼓を叩くと、「ポォ~ン」と音が響く。 それを、機械的に
    「ォ~ン」の部分を切り落とす。 すると、「ポォ!」と音が歪む。 )

 この作品、ゲストも多彩で豪華なミュージシャンが脇を固める。
 シンセサイザーは、“シナジー”ことシンセの鉄人ラリー・ファスト。
 フィル・コリンズによる“技巧派ジャズ・ロック・ユニット”であるブランドX
 にも参加したモーリス・パートを、打楽器系やパーカッションに。

 基本のリズム隊は、メイン・ドラムのジェリー・マロッタに加え、
 盟友フィル・コリンズが、“Intruder”と“No Self-Control”でブッ叩き、
 “Family Snapshot”でも、印象的なスネアを聴かせてくれる。
 ベースは、ジョン・ギブリン(渋いセッションマンだ)と、これも盟友でも
 あるスティックの達人トニー・レヴィンが、“I Don't Remember”でプレイ。

   身分証明書などない。
   自分が何者かを示す書類もない。
   君が見出したそのままの俺を語るしかない。
   過ぎ去ってしまったことで俺を非難もできない。

   空っぽの胃袋。 空っぽの頭。
   空虚な心。 誰も居ないベッド。

   思い出せないんだ。 記憶がないんだ。  
   何も思い出せない。 何も思い起こせないんだ。
   何もかも。

 

 “Start”での、ディック・モリッシーのサックス・ソロの静寂を打ち破る
 かのような、強靭なビート。 凄いビートだ。 まさに、ビートの固まり。 
 多用するシンセサイザーとフリップの幾何学的ギター、そして、
 レヴィンのスティックが複雑に絡んで、マロッタのスネアも効果的。
 もはや、メロディ重視なプレイなどなく、すべてが、リズム楽器のような
 反復したフレーズを繰り返し、徹するのみ。

 ギタリストも多彩だ。 メインは、元XTCのデイヴ・グレゴリーと、
 デヴィッド・ローズに、ロバート・フリップが、(前作ではプロデューサー)
 “I Don't Remember”と、“Not One Of Us”で存在感を発揮。 
 当時はジャムだったポール・ウェラーも、“And Through The Wire”で、
 見事なカッティングを披露。

 ( ロバート・フリップとトニー・レヴィンは、ソロデビュー作で知り合った
  そうだが、このセッションがきっかけで、80年代のキング・クリムゾンが
  結成されたのだろう。 あの超ド変則な曲調についていけるのは、
  達人のレヴィンくらいしかいなかったと思うけど。           )
 
 また、ケイト・ブッシュも、“Games Without Frontiers”でコーラスに参加。
 彼女の個性を生かした浮遊感とアンニュイさが、見事に調和されてる。

 そして、このアルバムで一番重要なアフリカ民族音楽のファクターの注入だ。

 “No Self Control”や、名曲“Biko”のための序曲とも言える
 “Lead A Normal Life”でも、シロフォン(木琴の一種)が大活躍する。
  (本当はバラフォン類(アフリカ先住民の木琴状の民族楽器)を使いたかった
   のかもしれないが、たぶん音階が合わなかったのだろう)

 そして、その“Biko”の導入部分と終盤部分ではアフリカのコーラスが聞かれる。
 が、これはいわゆるサンプリングという、“ありきたり”な使い方ではなく、
 曲とは絡ませずに録音されたものを、そのまま効果音として使用している。
 いずれにせよ、民族音楽への意識の高まりが聴いて取れるアルバムである。

    

   1977年9月、エリザベス港は快晴なり。
   留置所の619号室は、いつも通りの仕事振りだった。

   ビコ。 ビコよ。 なぜなら、ビコだから。
   イラ モジャ。
   男は死んだ。 一人の男が死んだ。

   眠ろうとすると、“赤い夢”しか見ない。
   外は、たった一人の黒人が死んだだけの“白と黒”の世界。

   ロウソクの火は消せても、火事は吹き消せやしない。
   一度“炎”が燃え広がれば、風がさらに大きく煽るのだ。

   そして、世界の目は今、ここに注がれてるのだ。
   世界中のみんなが見ているんだ・・。
 

       

 スティーヴ・ビコ。
 アパルトヘイト時代の南アフリカにおける“黒人意識運動”の活動家だ。

  一.“民主主義”を表看板とするリベラリズムは、白人優越・西欧中心主義の変形である。
    我々は、人種差別とリベラリズムからの黒人意識の解放を目指すこと。
  一.“非白人”というネガティブな規定や、“カラード”、“インド人”、“アフリカ人”
    という分断の強制を拒否すること。
   (ちなみに、当時の南アフリカでは、日本人は、“名誉白人”と言う名前で
    白人側として扱われていたようである。 複雑だなぁ・・)
  一.“黒人”とは、この南アフリカでは法と伝統で不当に差別されているが、
    自らの“希望”を実現する戦いに一体となって関わる人々のことを差す。

 あらゆる差別問題に完全な解答を示して見せた、唯一の人物である。
 それは、ガンジーの非暴力、キング牧師の温厚な考え方、マルコムⅩの大胆さ、
 これら全てを兼ね備えたものであった。

 しかし・・。
 ビコは殺害された。 その理由は、“黒人”だったから。
 貧困でも、戦争でも、妬みでも、思想でもなく、ただ肌の色が黒い。
 それだけで、プレトリアの警察署内で拷問による脳挫傷で殺されたのです。
 (当時警察は、ハンガーストライキによる死亡と発表している・・)

 このスティーブ・ビコを題材にして、西側諸国にアパルトヘイト問題を注目させる
 きっかけとなった名曲である。

 この曲を契機として、アパルトヘイトに対する注目は上がり、ロック界全体を巻き込んで
 後に「SUN CITY」などのオムニバスや、様々なイベントを巻き起こし、
 後に、ビコを題材とした映画も公開され、南アフリカのアパルトヘイト政策の転換に
 大きな役割を果たした、ガブリエルのというよりもロック界の名曲である。

 その後に、ガブリエル自身が「WOMAD」を開催してより民俗音楽に対する
 造詣と理解を深め、アムネスティなどの活動に身を投じる契機となった重要な曲だ。

 ( しかし、彼が主催した「WOMAD」というフェスティバルがアパルトヘイト政策下
   の南アフリカで開催して(何らかのバッシングを受けることを覚悟の上で)、
   評判を一気に落としてしまったこともあったけど、あえて、“この地”を
   選んだのは、それなりの意図があったはず。 
   南アフリカ政府側にも、国家政策を批判するアーティストに、
   公演の開催を許可したということは何らかの思惑があったはずだし。     )           

 このアルバムは“時代の”というよりも、“時代を変えた”アルバムであり、
 ガブリエル自身の創造性の頂点に立ったのは間違いなく、コレだ。
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2010/06/27 Sun. 00:16 [edit]

Category: 80年代ROCK、POPS

Thread:洋楽CDレビュー  Janre:音楽

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