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吟遊詩人が今宵も奏でる美しき18の愛の物語。 

   SHE'S ALWAYS A WOMAN ~ LOVE SONGS   BILLY JOEL

          

      She's Always A Woman (from The Stranger,1977)
      Honesty (from 52nd Street,1978)
      Just The Way You Are (from The Stranger,1977)
      Travelin' Prayer (from Piano Man,1973)
      An Innocent Man (from An Innocent Man,1983)
      The Night Is Still Young (from Greatest Hits Ⅰ&Ⅱ,1985)
      This Is The Time (from The Bridge,1986)
      She's Got A Way (live version,from Songs In The Attic,1980)
      Temptation (from The Bridge,1986)
      Nocturne (from Cold Spring Harbor,1971)
      Until The Night (from 52nd Street,1978)
      She's Right On Time (from The Nylon Curtain,1982)
      You're My Home (from Piano Man,1973)
      State Of Grace (from Storm Front,1989)
      This Night (from An Innocent Man,1983)
      Shameless (from Storm Front,1989)
      And So It Goes (from Storm Front,1989)
      All About Soul (remix version,Original from River Of Dreams,1993)


 「 生きる希望を持たせてくれたかと思えば、気ままにフッてしまうこともある。
   誠実さを求めているのに、自分は絶対男を信じようとしない。
   そして、与えたものは泥棒みたいに奪っていく・・。
   でもあの娘は、僕にとっては、いつも可愛いやつなのさ。             
                   (She's Always A Woman) 」


 2月14日は、バレンタイン・デーです。
 有難くも、こうも忙しく日々を過ごさせてもらってますと、
 世で言う“イベント”的な
 盛り上がりや“流れ”みたいなものも、スルーしてしまいがちです。 
 いけませんねぇ。  世間の“流れ”は知っとくべき。   
 取り残されますよ。

 えっ、たか兄さん。  
 チョコのひとつももらってないんですか?

 ・・・。 

 実は、うちの会社じゃ、社内でのチョコのやり取りは禁止されてるんですよ。
 (女子社員の負担を減らしたり、こんなもの“必要ない”との
  社長の考えだそうですが)
 女子社員してみれば、義理チョコ買う必要がないんで、
 とても楽だって言ってますが、
 う~ん、どうなんでしょ? 
 たかがチョコで目くじら立てんでもいいのにとも思うけど。
 まぁ、私は、甘いもの苦手ですし・・。

 そんな世間で言う、そんな“愛の告白日”には、
 飛びっきりのラブ・ソングで過ごしましょうと言わんばかりか、
 それに合わせてか(何か安易にビリーの曲を利用してるようで不満だが)、
 ビリーのラブ・ソング集が発売されました。

 またまたベスト盤です。
 (いつになれば、新譜が聴けるんだろうなぁ・・)
 ビリーのベスト盤って、似たような選曲で一体何枚出てんだか。
 ただ今回のはちょっと一目置くべきブツ。  
 ファンならずも押さえるべき。
 単なるベスト盤なら、わざわざココで取り上げません。

 元々は、昨年末にオーストラリア盤で発売された、
 ビリー初のラブ・ソング集なのだが、
 曲順を大幅に変えて(曲目は変更なく)、日本でも発売されることになった。

      

 しかし、この企画盤で注目すべきは。
 “A Collection of Beautiful & Personally Selected Lovesongs by Billy Joel”
 とあるように、ビリー本人が思い入れのあるラブ・ソングを
 直接選曲をしたという点。
 これは、過去のベスト盤にはなかったこと。  
 この事実だけでも興味が持てる。
 (でも、このジャケは安直だなぁ。 
  もちょっと何とかなんなかったのかなぁ。
  これって、“An Innocent Man”の7”シングル盤の使い回しじゃない、コレ。 )


 「 彼女には、独特の雰囲気があるんだ。  なぜだかわからないけど・・。
   ただ僕にわかることは、彼女がいないと生きていけないこと。    
                       (She's Got A Way) 」


 この選曲は、絶対ビリー本人が選ばない限り、
 こんな曲は集まらない。
 当然、最初の妻であったエリザベスの誕生日にプレゼントした、
 あまりに美しい永遠の名曲“Just The Way You Are”や、
 日本では異常に人気があるけど、実はアメリカでは
 案外人気のない(?)あまりに切なすぎる誠実さを訴える
 “Honesty”はもちろんだが、
 ヒット曲や有名な曲に捉われないビリーの想いが詰まった、
 愛の物語が綴られる。
 
 才能の片鱗を開花させた「PIANO MAN」のオープニングを飾った
 “Travelin' Prayer”や、
 当時初のベスト盤に収録された新曲で、
 まるでニール・サイモンの戯曲のような
 ホロ苦い大人の愛を見事に描写した傑作“The Night Is Still Young”に、
 「THE BRIDGE」から“Temptation”や、
 ソロ・デビュー作「COLD SPRING HARBOR」から
 美しいピアノ・インストゥルメンタル“Nocturne”。
 病んだアメリカ人の諸問題を鋭く描いた傑作「THE NYLON CURTAIN」の
 中から、ビリー唯一の恋人へのクリスマス賛歌
 “She's Right On Time”もセレクトしてる(これは嬉しい)。
 
 フォリナーのミック・ジョーンズと組んで、
 パワフルかつキャッチーな作品に仕上げた
 「STORM FRONT」から3曲選ばれ、
 (隠れた名曲“State Of Grace”を選んでる!)
 ドリフターズを意識したビリーの一人多重ドゥー・ワップの名曲
 “This Night”も選んでいるし、「RIVER OF DREAMS」から、
 信じることの大切さを世に訴えた“All About Soul”
 のリミックス版で締めくくられる。


 「 人は誰でも、心の中に揺るぎない聖域を持っているもの。
   人は、そこで失った恋の痛手を癒し、新しい恋との出会いを待つのだ。
                          (And So It Goes) 」
 


 こうやって曲を眺めてみると、「LOVESONGS」と銘打っているのに、
 “Love(愛)”という文字が入った曲が一曲もないことに気が付く。
 
 思うに、ビリーの詞は、恋愛をしている自分とは別に恋愛について考える、
 もう一人の自分を歌詞に持ち込んだことではないんじゃないのかなと考える。

 曲によっては、哲学的にやや小難しくしているようなのもあるけど、
 ビリーの書く曲は、その恋愛の風景画を描くように、
 そのシチュエーションが目の前に浮かんでくるように展開する。
 これは、相手を思う言葉とは別に、相手を思っている自分を
 “客観的”にみる言葉がビリーには多いためだ。


 「 君を愛してしまってからは、僕はひどい恥知らずさ。
   望むことなら、何でもしてしまうし・・。

   僕は変わってしまったさ。
   今まで妥協なんてしたことなった。 でも君との出会いで変えたんだ。
   真の強い男とは、悪かったと謝ったり、過ちを素直に認めることができる。
   失ったものに後悔したこと一度もなかったけど、
   これほど、恋しく思う事など生まれてはじめてだ・・。
                          (Shameless) 」 
 


 確かに恋愛で“妥協”という言い方は嫌われるかもしれない。
 でも、交渉や譲歩のない関係というものも、人間関係として、
 対等とも正常とも言えなくもない。
 妙に大人びた考えかもしれないけど、現実そうなのだと思う。

 相手を受け入れながら、自分も主張する。
 相手を頼りながらも、相手も自分を頼りにする。

 つまり、相手との関係が自分自身を形作る重要な部分になる。
 そういうのが、“対等な関係の恋愛”とも言えるのではないかなと思う。

 だから、短絡的に“Love”なんて言葉をタイトルに用いないのだろう。
 「恋に恋する恋」や「恋愛ごっこ」のような子供じみたラブ・ソングなど、
 ビリーのラブ・ソングには、一曲もないのだから。

  

 ビリーの曲の恋愛対象は、当時の奥さんの場合がほとんどなんだけど、
 「君を愛している。 君が必要なんだ」といった、
 ド真ん中の“直球”のラブ・ソングは、
 ビリーには、実はあまり多くない。 
 あまり印象がないのだ。
 真っすぐなのは、あの“分かりやすい”名曲“Just The Way You Are”くらいか・・。
 ただそれも、自分の好みを妻に押しつけているようにも聴こえるけれど、
 この曲で最後に素直に「I Love You The Way You Are(今のままの君が好きなんだ)」
 と打ち明けるように、どことなくシニカルで照れてるのだ。  


 「 今こそ、思い出を作る時。
   この時は、永遠には続かないんだ。  だから、しっかり抱きしめよう。
   なぜなら、いずれは、そうしたくても出来なくなる時が訪れるから。
    
   いつの日か、昔を振り返って、笑いあえるといいね。
   お互いに、幸せに満ち溢れた余生を送りながら・・。
                       (This Is The Time) 」   



 大いなる人類愛や世界愛を匂わす曲は少ないものの、
 ビリーの書く“愛の物語”は、
 むしろ、“Life(人生)”や“Time(時)”、そして、“Night(夜)”といった
 空間や次元を用いて、様々な恋愛を表現する曲が多いのも特徴だろう。

  

 NYはブルックリンで生まれ、
 わずか3歳でモーツァルトを聴き弾きこなしていたという
 この“神童”は、すでに「ピアノと運命を共にする人生」を歩み始めていた。
 地元でバンドを組むも芽が出ず、売れないラウンジ・ピアニストとして
 日銭を稼ぐ日々。 時に故郷を離れ、LAでチャンスを伺い、
 そこでCBSの幹部と出会いメジャーデビューし、
 再びNYに戻ってきてから、やっとその地位を不動のものにした苦労人。

 ピアノの調べにその時の思いを綴り、詞を書き、各地(各場面)を、
 まるで詩人の描くストーリーの如く、歌い歩いて旅する。
 彼が“吟遊詩人”と呼ばれる理由はココにあるんじゃないのかなと思う。
 

 「 ペンシルベニアのターンパイクに、朝霧の覆ったインディアナ。
   それに、カリフォルニアの丘の上。
   でも、僕にとって故郷ってのは君のこと。 故郷と呼べるとこなんてないんだ。

   生まれながらの風来坊だから、死ぬまで旅し続ける僕さ。
   だから、君が寄り添ってくれてるだけで、暖かい家庭にいるのと同じなんだ。
                        (You're My Home) 」



 ビリーのラブ・ソングは、
 綺麗にデコレーションした甘くて愛らしいチョコではない。
 ビターな“ホロ苦さ”と“豊潤な甘さ”を兼ね備えた格式高い大人のチョコ。
 我々同世代や年老いた年代のための愛の贈り物としては
 最適なラブ・ソング集だろう。
 

 そういえば、冒頭の質問に答えてませんでした。

 妻は気を使ってか、
 いつもチョコと一緒にウィスキーのボトルをおまけしてくれます。
 でも今年は、「ウイスキーボンボン」でした。   ・・・(笑)。
 私しゃ、この1個で十分。    可愛い奴です、ほんと。
 
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2011/02/14 Mon. 15:45 [edit]

Category: ビリー・ジョエル

Thread:洋楽CDレビュー  Janre:音楽

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