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追い求めるセンスとモダニズム。 

       THE SINGULAR ADVENTURES of the STYLE COUNCIL              
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              You're The Best Thing
              Have You Ever Had It Blue? (12”Version)
              Money Go Round (Part 1&2)
              My Ever Changing Moods (12”Version)
              Long Hot Summer (12”Version)
              The Lodgers
              Walls Come Tumbling Down
              Shout To The Top!
              Wanted
              It Didn't Matter
              Speak Like A Child
              A Solid Bond In Your Heart
              Life At A Top Peoples Health Farm
              Promised Land
              How She Threw It All Awey
              Waiting

 永遠のモダニスト、ポール・ウェラー。
 彼も聴く世代によって、イメージも音楽性も異なるアーチストの一人だ。
 私より少し年上の方なら、パンク・ムーヴメントの中、ネオ・モッズ勢の旗頭、
 ジャムでの攻撃的イメージが強いだろうし、 私と同世代なら、
 スタイル・カウンシルでのお洒落で最先端のポップ・アーチストのイメージで、
 もう少し若い世代なら、骨太なギターとソウルフルさが魅力の孤高のアーチストの、
 イメージなのかな。

 ポール・ウェラーたる男。 ここまで過去を振り返らない男も珍しい。 
 いや、己のモダニズムを追及するためには、過去をも否定するくらいだ。
 モダニズムとは、モッズ精神のこと。 つまり、60年代の英国の労働者階級の、
 若者のサブカルチャーだ。 そのファッションや音楽嗜好などで影響を及ぼしたのは、
 THE WHOの「四重人格」を原作にした映画「さらば青春の光」や、
 キンクス、スモール・フェイセズなんかが代表的だった。

 これらのオリジナル・モッズらのアイデンティティは次世代に受け継がれていき、
 70年代後半のパンク・ムーヴメントでの、“とにかく一度壊してしまえ!”的考えの中、
 新たに、ネオ・モッズ勢が出現してきた。
 それを先導したのが、ウェラー率いるジャムだった。

 また機会があれば、ジャムについてもレビューしたいと思ってるけど、
 ただギター一辺倒でラウドに不平不満を叫んでいたデビュー当時のウェラーも、
 己のルーツである、黒人音楽やソウルへの本質を探り始めた末期では、
 パンクをやり続けたい他のメンバーとの亀裂ができてしまい、
 解散へ繋がっていってしまった。

 だから、スタイル・カウンシル結成は、ズバリ。
 黒人音楽への傾倒とあくなき探求、そしてジャムに対する反動だ。
 パートナーに選んだのが、ミック・タルボットという、おおよそパンクとは無縁な、
 オルガン演奏者だったことも、いかにイメージを拭おうとしてたか解かる。

 ウェラーにとってスタ・カンの活動歴は約7年だったが、
 それは同時に、内外とのジャム・ノスタルジアとの戦いだったとも言える。
 そう、この男は過去を否定することで、目標を定め前へ進んでいく。
 これこそ、彼が孤高の“モッズ”たる所以だと思う。

 私の洋楽を聴き始めた頃と、スタ・カンがデビューしたくらいと重なるので、
 私にとってウェラーは、やっぱジャムよりもスタ・カンのイメージの方が強い。
 正直、レビューはCOOLさと音楽の多彩さの1stか最高傑作の2ndかで迷ったが、
 デビュー当時からスタ・カンは、シングルを重視した活動をしてきた。
 だから、シングルを語るのが筋では。との考えでベスト盤に切り替えた次第です。
 シングル中心の活動にしたのも、昔のタムラ(モータウン)やSTAXみたいなことを、
 真似したかったのかな。 (ほんとに“格好”から入るウェラーです)

 アレンジは鍵盤中心で、ギターはウェラーが爪弾く曲が少しある程度で、
 大きく後退し、ホーンやストリングスを効果的に取り入れて、
 STAX系ソウルから、ジャズ、ボサノバ、シャンソン、ラップに至るまで、
 自由な発想とテイストで、しかも“大衆的”に黒人音楽を追求していった。
 そう、スタ・カンはとことんポップなグループだった。

 スタ・カンのベスト・シングルは、やはり“My Ever Changing Moods”だろう。
 「Cafe’Bleu」収録のミックのピアノ一本で、ナイトクラブ風にウェラーが歌う、
 ヴァージョンもムード最高だけど、この曲はシングル・ヴァージョンの、
 PVにあるような、自転車に乗って爽快に駆け抜ける開放的ヴァージョンの方がいい。
 
 “You're The Best Thing”や“Shout To The Top!”など優れたシングルも
 多く、サウンドはいたってトレンディだし、センスの良さが光るが、
 内容はいたってシリアス。 政治的メッセージが強いし、社会風刺もキツい。
 要はシャレてたって、やってる内容はジャムと何ら変わってないのだ。

 2ndの「OUR FAVOURITE SHOP」では、楽曲レベルの高さに加え、
 彼らの“スタイル”を確立したが、次回作「THE COST OF LOVING」では、
 より黒人音楽へ加速していき、ブラック・コンテポラリー化が進む。
 しかし、「白人が黒人音楽をやる」限界というか、ジレンマや“迷い”に入り、
 「CONFESSIONS OF A POP GROUP」では、やたら派手でトゥー・マッチで、
 ハウスまでやり出したボヤけた内容になってしまったのは残念。
 ひょっとしたらウェラーは、スタ・カンでやりたかったことは、
 2ndまででやり切ってしまったのではないかと思っている。

 スタ・カン解散後は、再びギターを抱えるが、ジャムの頃みたいな、
 ただ掻き鳴らすウェラーはもういなくて、
 逆にスタ・カン・ノスタルジアとも戦いともいえる、シンプルで荒削りで地味だけど、
 エモーショナルあふれる奥行きの深いロックともソウルともいえない、
 独特の世界を描き続けている。

 ただこの男。 スタイルもアレンジもジャンルを変えても、
 追い求める“理想”や目標にブレはない。
 これこそ、真のモッズ。 モッズ・ファーザーとまで言われるわけだ。
 どこまでも“格好”いい奴だ。
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2006/02/25 Sat. 20:15 [edit]

Category: 80年代ROCK、POPS

Thread:洋楽CDレビュー  Janre:音楽

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