ROCKでもない奴。

  42歳音楽バカ。 通称たか兄。 ここは、洋邦、ジャンルを問わず音楽を語る場所。  

3色のポップカラーは陽炎の如し。

              MIRAGE      FLEETWOOD MAC
                 
                

                    Love In Store
                    Can't Go Back
                    That's Alright
                    Book Of Love
                    Gypsy
                    Only Over You
                    Empire State
                    Straight Back
                    Hold Me
                    Oh Diane
                    Eyes Of The World
                    Wish You Were Here

   すこし勝手にお休みをいただきましたが、戦線復帰いたします。
   あまり時間がない関係で、少々ハショりますけど、ご勘弁を。

   書きたいなと思っても、書いていないアーチスト、バンドがたくさんあるんですが、
   今日は、あの「I'm Lovin' It」でおなじみのハンバーガーの“マクドナルド”、
   Appleの“マッキントッシュ”と共に、世界3大マック(?)と言ってもいい
   “フリートウッド・マック”の話によろしくお付き合いを。

   バンド名の由来となった、ミック・フリートウッド(ds)とジョン・マクヴィー(b)で、
   リズム隊としてバンドの基礎を固め支えながら、フロントマン&ウーマンを
   入れ替えて、度重なる変貌を遂げ、延々と生き延びてきた奇特なバンドだ。

   フリートウッド・マックには大きく3つの時期があって、ピーター・グリーンが、
   メインだった、こてこてのブリティッシュ・ブルース初期。 次がボブ・ウェルチと
   クリスティン・パーフェクト(後にジョン・マクヴィーと結婚して“マクヴィー”に)が、
   加入した過渡期。 そして、リンジー・バッキンガムとスティーヴィー・ニックスが、
   加入してからのアメリカ・ナイズされたポップ・ロックのメジャー期がある。

   世の中のブリテッシュ・ロック、ブルースマニアには、初期のマックこそ、
   “真のマック”と言い張る諸氏もかなりいますが、(確かに、渋くてカッコイイんだ)
   やはり私にとっては、クリスティン加入以降の完全なポップ・ロック路線こそ、
   “真のマック”。 彼女とバッキンガム、ニックスの3人ヴォーカルの才能と活躍
   こそがマックの世界的超メジャー化への原動力であることは間違いなく、
   ポップ・ロック期のフリートウッド・マックのアルバムは、3人のライター・シンガーの
   コンピレーション・ベストといった趣きで、長年聴いても飽きることが無い。

    

   あの「噂」や「タスク」を差し置いて、この82年の作品をレビューするのも、
   どうなんでしょ?・・とは思ったんですが、なんだかんだ言って、よくよく思えば、
   一番好きなアルバムかもしれないんで・・。 今回は「MIRAGE」で参ります。

   この「MIRAGE」は特別に評価の高い作品ではないけれど、以前の作品より
   録音が向上しているため聴きやすく、全部の曲がキラキラしている印象で
   彼らの珠玉のクリスタル・ポップ・ワールドが堪能できる仕上がりだ。
   (黒を基調にしたジャケットもシックで美しく、メンバーの顔がよく見えるのが嬉しい )

   リンジーがプロデュースを務め、彼のひねりの効いたポップセンスが光る
   シンプルなアレンジは、バンド・アンサンブルを最良に引き立てている。
   核になるような際立つ曲が無いように感じるけど、佳曲が揃っているため、
   1曲ごとのクオリティは極めて高いんじゃないかなぁ。
   
   また、このアルバムは、リンジーのギター・テクニックが冴えわたるアルバム
   でもあり、リズム隊のメリハリがついたおかげで、彼のプレイを堪能できる。
   リンジーはフリードウッドマックのギタリストとしては、アメリカのみならず、
   世界的に有名なんだけど、日本での知名度は残念ながら低いんだ・・。
   確かに目立たないが、彼は米「ローリング・ストーン」誌が2007年に発表した
   「史上最も過小評価されているギタリスト25人」で7位にランキングされるほど
   の隠れ名ギタリストで、もっと高く評価されていい“爪弾き”の達人なのだ。

   (ちなみに、そのベスト5はというと・・。 
     1位 プリンス
     2位 カート・コバーン (ニルバーナ)
     3位 ニール・ヤング
     4位 ジョージ・ハリスン
     5位 エース・フレーリー (元キッス)  )

   彼の愛器はリック・ターナーっていう知る人ぞ知る名ギタールシア(個人製作者)
   で、エレキ・ギターやピックアップ、アンプの分野で計り知れない功績のある鉄人
   の手によるもの。 彼の使用する“MODEL1”は、その筋では有名な名器だ。
   97年の復活ライブでは、MODEL1を久々に弾き倒す姿に感激したもんです。
   このピックを使用しないフィンガー・ピック(爪弾き)で、タッピングのテクも悶絶もの。
   (この独特の奏法は、カントリーのスリー・フィンガー奏法に影響されたみたい)

   このアルバムを象徴してる、キラキラとしたカラフル・ポップの名曲である、
   大ヒットした1stシングルの“Hold Me”は、クリスティンとのダブル・ヴォーカルが
   1番の聴きどころなんだけど、どっこいリンジーのアコースティックとエレキを
   絶妙にオーヴァーダブさせた音色と、彼の技術は隠れた名演奏。
   でも最大の聴き所は、スティーヴィーの“Gypsy”でのギター・ソロは圧巻。
   エンディング近くのきらびやかなギター・フレーズは、上手い、というより、匠の域。

   ただ、このアルバムでは、3人の曲を比べると、リンジーの曲は今一歩の感が・・。
   (英国での3rdシングルで、“Oh Diane”がTOP10を記録しているけど)
   このアルバムの中でみると、スティーヴィーの出来が一番いいように思う。

   彼女のルーツであるカントリー・フレーバーあふれる“That's Alright”や、
   81年リリースの1stソロ・アルバム「BELLA DONNA」を思わせるロック・サウンドを
   彷彿させる“Straight Back”。 そして、このアルバムのベスト・トラックである
   “Gypsy”は、輝くようなようなポップス・オブ・ポップで、すっかり魅了されっぱなし。
   (曲はスティーヴィーで、アレンジはリンジー。 この2人の最高の共作だ)
   1stソロの大成功をマックに見事に反映させ、多彩ぶりを発揮している。

   プロモで観た“Gypsy”に、やられっぱなしのままの、この私・・。
   魔女のような声と、夢見るようなメロディー、童話から抜け出したようなセットで、
   ドレスを着て、まるで妖精の如く、ヒラヒラと舞うスティーヴィーの綺麗なこと。

   対する、“マックの姉御”クリスティンは、いつもながら質の高いポップスを聴かす。
   “Hold Me”、“Love In Store”とシングル・ヒットも彼女の作品だけど、
   アルバムのラスト・バラード“Wish You Were Here”がいい余韻を残して締める。
   「あなたがここにいてくれたら、私はまるで子供のようでいられるの」と、
   何気ない素直な言葉と旋律が、癒しの空間に引き込んでくれる。
   (スティーヴィーは、ある意味で、“毒”の要素なら、クリスティンは“解毒剤”。
    マックのこの2人の微妙なバランス感覚が、長く愛される要因ともいえるのでは)

  

   しかし、このアルバムで顕在化した3人のソングライターのそれぞれの個性は、
   それがあまりにも、独特のカラーを出し過ぎて、グループとしてまとまった雰囲気を
   作り出せないレベルに来てしまったことも事実。 

   このアルバム後は、3人のソロ活動も活発になり、ソロ・アルバムもヒットして、
   特にスティーヴィーの活躍ぶりは顕著で、それぞれ共にシングル・ヒットも出て、
   解散説まで浮上したことも。 次作までには、5年の時を要してしまう。
   
   存在は陽炎のように淡くも、カラーは鮮明だった、この当時のマック。
   思えば、皮肉なタイトルなんだけど、その色彩感とポップ・センスは抜群でした。

   もうこんなバンド出てこないでしょう。  いい時代でした。

完璧と倦怠へのカウントダウン。

               GAUCHO      STEELY DAN 

                

                    Babylon Sisters
                    Hey Nineteen
                    Glamour Profession
                    Gaucho
                    Time Out Of Mind
                    My Rival
                    Third World Man

   今宵、秋の夜長。 妙にコレが聴きたくなりまして・・。 
   「GAUCHO」。  時に、この空気感にすごく浸りたくなるんですよねぇ。
   
   かなり前に「AJA」をレビューしたことがあるんですが、あれはマニアックすぎて、
   いけませんでした。 (曲ごとに全部ドラマーが違うって話で終わってしまった・・)
   そんな反省を踏まえて。 今宵はスティーリー・ダンの話によろしくお付き合いを。 

   前作「彩〜AJA〜」を彼らの最高傑作に推す声が多いんだけど、実は、
   聴いた回数、愛聴度を比べると、本作「GAUCHO」の方なんだよねって声が
   案外多かったりするんですよ。    

   なんで何だろう・・。

   私も、そうなんです。 断然コレ。 彼らをたまに聴きたくなるのが、やっぱコレ。
   (でも、フェイゲンのソロを入れたら、コレの倍は聴いてるのが「THE NIGHTFLY」)
   究極の破綻の無さといい、楽曲、アレンジ、演奏、音質、ミキシング、共に完璧。 

   思うに、「AJA」は、緻密で洗練されたサウンドの中にも、“ライブ”の匂いがする。
   楽曲ごとに違うミュージシャンがプレイしていても、それは、アルバム全体が
   ひとつのバンドとして見事に整合されてるのは、ほんとに奇跡的。 超名盤だ。

   対して、「GAUCHO」は、ライブの匂いが全くしない。 むしろ息苦しいくらい。
   まるで、ピカピカに磨き上げられて誰も触ることを許さないクリスタル彫刻のよう。
   なんか聴き手にも妥協を許さないっていうか、聴き手を選んでるというか、
   敷居がもの凄く高いんですよ。 「一見さんお断り」のような緊張感。
   ただ、その敷居をまたいで、その官能世界を理解すると、これが病みつきに。
   しばらく聴いてなくても、そのうち疼いてくる感覚に陥るような。

   だからじゃないのかなぁ・・。  

   彼ら特有の複雑な和音はジャズからのもの。 しかしベースにあるのは、
   R&Bを含めて、黒っぽい要素もファンクっぽいのがうまく溶け合ってる。
   初期はラテンっぽいのも、エスニック風もカントリーっぽかったりするのもあった。
   ロックじゃないね。 ジャズでもない。  クロスオーヴァー? (もう死語です)
   AORって言い方なら、的を得てるけど、もっと都会的でシュールというか・・。
   そう簡単に言い切って終えない難しさが彼らの音楽にはある。
   しかも退廃的で難解な歌詞が、それに輪を掛けて複雑にしている。

   ちなみに、“Time Out Of Mind”に出てくる歌詞 「chase the dragon」は、
   隠語で「ドラッグをキメる」という意味。表面的にはファンタジーっぽい歌詞だけど、
   実は… という深読み、裏読みの出来る歌詞。 ベッカーが麻薬中毒だったんで
   彼らって、クスリを連想させる曲が多い。 しかし、寓話的で回りくどい。
   私の乏しい想像力では理解不能な曲ばかりで・・。

        

   時間も費用もミュージシャンも、贅沢を極めたレコーディングも困難だったようだが、
   それは、「AJA」を更に(それは過敏なほどに)、研ぎ澄ませ、突きつめた結果、
   バンドとは形骸的なもので、思い描く音像に磨き上げるためには、部分的に
   ミュージシャンの微妙なセンスやタッチの違いで当てはめていくしか方法はなく、
   レコーディングの複雑さは尋常ではなかったらしい。

   彼らの屋台骨(核となる)リズム・セクションは前作より強力と言えるかもしれない。
   まずドラマーは前作ほど使い分けてはない。 (とはいえ4人の凄腕が連ねる)
   バーナード・パーディ、リック・マロッタ、スティーヴ・ガッド、ジェフ・ポーカロの4人。
   ベーシストは、ベッカーに、チャック・レイニー、アンソニー・ジャクソンの3人。
   しかし、「AJA」ほど楽曲の起伏が激しくないんで、緩急によりコンビを組み替えて、
   繊細にグルーヴ感やリズムタッチを変えて、全体のマンネリズムを抑止している。

   何と言っても、”Babylon Sisters”のイントロ45秒。 音数は少ないが、
   この張り詰めた緊張感がたまらない。 贅を極めた100万ドルのイントロだ。

   バーナード・パーディのフィル・インから始まり、チャック・レイニーのベースと
   ドン・グロルニックのエレピが加わり、左からカーンの小さいリズム・ギターを配置。
   1回パーカッションが鳴ってから元に戻り、今度は、ランディ・ブルッカーの
   トランペットとトム・スコットのテナー・サックスが入り、最後の2小節だけ、
   右からカーンのギターのカッティングが入る。 そして、フェイゲンのヴォーカルが
   入ると同時に最初から鳴っていたギターのパターンが変わる。  

   ひとつの無駄のない45秒。  それは、楽器間の隙間すら芸術に変える。
  
   それぞれの楽器の奏でる音色や、全てが合わさった時のバランス。
   1音、いや、コンマ単位でのタイミングのズレも狂いもない精度の高さ。
   ひとつでも足りない音、逆に、ひとつでも余分なプレイがあったのなら、
   全く成立しなくなる精密さ。 誰をも寄せ付けない孤高の響き。
   このイントロには、「GAUCHO」の美学が集約している。

   私としては、ギタリストの話は、蔑ろにできないんで、続けますが・・。
   主だっているのは、ベッカーと、スティーヴ・カーン、ヒュー・マクラッケンの3人。
   ギター・ソロも、効果的に曲のアクセントを付ける程度の要素が強く、 
   “Glamour Profession”での、カーンのソロは、ロブ・マウンジーのピアノと
    交互にフューチャーされて、クルージング・サウンドに華を添える。
   “My Rival”では、カーンのソロのバックで、なにげに、ハイラム・ブロックと
   リック・デリンジャーがカッテング合戦を披露。 実にクールかつスリリング。

   そして、フェイゲン/ベッカーが、わざわざNYへ呼び寄せ、鳴り物入りで参加の、
   “Time Out Of Mind”のマーク・ノップラーのフィンガー・ピッキングだ。
   (この曲は元々、パット・メセニーを起用する予定でいたそうだが)
   ディレイの掛け方も絶妙で、やはりこのタッチは誰にも真似できない。 まさに、
    この響きは“いぶし銀”。 でも当時ダイア・ストレイツは新人バンドだった・・。
   ラストの”Third World Man”のラリー・カールトンの絶品のオブリガードも見事。
   (「AJA」時にボツになったテイクを復活させたもの) アルバムでも異彩を放つ。

   淡々とした音の一つ一つの研ぎ澄まし方、こだわり方は、やはり尋常ではない。
   凄腕ばかりのメンツなのに、派手なソロを排し、各ミュージシャンの個性すら
   排したような楽曲アレンジは、更に徹底したクールネスの理論で貫かれている。

   しかし、それは同時にスリルと開放感を抹殺してしまうことに。
   過度な美学の追求は、退屈と倦怠への始まりでもあったのだ。
   (その反動で、この形態では20年も音楽制作ができなくなってしまうわけで・・。)

   とは言えども。
   恐るべしスティーリー・ダン。  その偏執狂的なまでの完全主義への執着。
   究極の音楽オタクぶり。 それを見事に結晶化してしまうとは。

   極限にまで磨き抜かれた7つの宝石のパッケージ。
   それが、「GAUCHO」だ。

地獄の狂獣も、今や娯楽の殿堂。

                 ALIVE!           KISS

                

           (1)    Deuce
                  Strutter
                  Got To Chooce
                  Hotter Than Hell
                  Firehouse
                  Nothin' To Lose
                  C'mon And Love Me
                  Parasite
                  She
           (2)    Watchin' You
                  100,000 Years
                  Black Diamonds
                  Rock Bottom
                  Cold Gin
                  Rock And Roll All Nite
                  Let Me Go, Rock & Roll

     「 You Wanted The Best!?   (最高を求めていたんだろう!?)
       You Got The Best!   (君はもう手に入れたさ!)   
       The Hottest Band In The World!   KISS!! 
                      (それは世界一熱いバンド! キッスだ!!) 」
 

   

   彼らのライブ開始のこの定番アナウンスで参りましょう!  KISSの登場だ!

   花火がド〜ンと爆発!  さぁ〜、ロックンロール・ショーの始まり始まり。
   “Deuce”だ。  やっぱ、このオープニング最高。  このリフ、かっこいいんだ。
  
   この「ALIVE!」は、事質的には、デビュー・アルバムの位置づけと思ってる。
   75年の「地獄の接吻」に伴うツアーかやら、5月16日のデトロイトをメインに、
   クリーブランド(6月21日)、ダベンポート(7月10日)、ワイルドウッド(7月23日)の
   4公演のライブ音源をベースに、当時のセットリストに忠実な形で構成したもの。
   (これらは、NYのエレクトリック・レディ・スタジオでオーヴァーダブされたもので、
    曲によっては、各パートの差し替えどころか、全く録り直されたものある。)

   デビューして、スタジオ盤を3枚出していたものの、泣かず飛ばずのKISS。
   どれも大したヒットにはならなかった時期に、3rd収録の彼らの永遠のロック・
   アンセムとなる、“Rock And Roll All Nite”が、何故かデトロイトのFMで
   局地的にヘヴィーローテされ、この地だけで、異常な人気が高まりつつあった。
   (あの“Detroit Rock City”って曲は、そんなファンへ送った感謝ソングだ)
   この大チャンスに乗っかるべく、 残りのツアーをすべてキャンセルして、
   デトロイトでライブ・アルバムを作ろうという、ほとんど思いつきのアイデアを
   実行に移し、見事大成功してしまったという起死回生のライブ盤だ。
 
   場所は、デトロイトのコボ・ホール12000人収容規模の大会場だ。
   全然売れてないバンドなのに、大見栄張って、KISSのロゴ入りチャーター機で
   現地入りするなどの様々なハッタリをかましながら。  彼ららしいです・・。
   
   プロデュースはエディ・クレイマー。 ロックの名盤を数々生み出した彼ですから、
   こういったものを作らせる(編集、構成させる)と、さすがに上手い。
   バランス調整も、オーヴァーダブ過多も、臨場感を損なうことなく、荒々しく、
   まるでライブ会場にいる気分が味わえる生々しいライブに仕上がっている。 
   あの熱さをそのままパッケージングした、この完成度は、ある意味奇跡的。 
   (ギター好きなら、2本のギターの音がはっきりしているから、エースが、
    マホネックのレスポールをメインに使用していたのがわかる。 いい響きです。
    これぞ、“楽曲のためのギター”。  マニアックですが・・。) 

   

   やっぱり彼らは(エースも含め)曲作りの才能に長けてる。
   コンポーザー・チームのスタンレー/シモンズも、あのレノン/マッカートニー、
   ジャガー/リチャーズと同等のソングライティングの手腕と才能を持っていた。
   誰にも分かりやすく、親しみやすいメロディをハードロックに生かす曲作り。 
   単純なロックンロールも、ヘヴィーなリフも、ポップでキャッチーなラインも書ける。

   デビュー作の音でのショボさは仕方ないものの、考えてみると、これに収録の
   “Deuce”、“Strutter”、“Firehouse”、“Cold Gin”、“Black Diamonds”
   などは、現在に至る、彼らの“鉄板ソング”。 いかにデビュー作から優れた
   曲を書いていたかが分かる。 (現在のセットリストも1〜3rdでほぼ半分占める)
   いい曲やそれを生かすコーラスやアレンジが、カッチリと決まってる。
   
   音楽面でのスポークスマンは、スタンレーが務め、ビジュアルやイメージ戦略、
   ビジネス面は、シモンズが取り仕切る。 実に頭のキレる奴らなのだ。
   (ルックスにこだわって獲得したピーター。  ギター・テクより、左右色の違う
    コンバースを履いて、オーディションにやってきて、変人性を買われたエース。
    この辺のメンバー選びも実に巧み。 デビュー前から計算してたワケだ。)
     
   ちなみに、当初は“ビートルズ”をコンセプトにしたロックバンドだったのは有名。
   デビュー作の「地獄からの使者」は、「MEET THE BEATLES」のジャケの
   悪趣味なパロディだったし、ステージにスタンド・マイク一本にスタンレーと
   エースがコーラスする姿も、ドラマーのピーター・クリスに何曲かリード・ヴォーカルを
   配分する方法も、ビートルズを手本にしたもの。 メンバーも4人だし。
   (ちなみに、2ndの「地獄のさけび」も、メンバーの並びやアーチ状の文字
    なんか、「MAGICAL MYSTERY TOUR」のパロディっぽいし、3rdの
    「地獄の接吻」もスーツ着て、街角を歩いてるショットなんか、もろに、
    「ABBEY ROAD」を意識している。 考え過ぎかな。)

     

   「今夜は、世界一熱い夜にしようぜ〜!! ロックンロール・パーティ〜!! 」
   と、曲が終わるごとに、いちいちB級なMCをかまして、盛り上げるスタンレー。
   (こいつ、気がついたら、何故かいつも上半身が裸なんだよな〜。)
   長い舌をベロベロ出しながらベースを操り、火を吹くわ、血を吐くわ、あれやこれや
   オーディエンスを喜ばし続ける、芸人根性まる出しのジーン・シモンズ。
   メイクは一番派手で、かつリード・ギタリストなのに、あの2人に隠れてしまって、
   目立たないエース。 ちっとも速く弾けないんだけど、これが、なかなか味がある。
   ドラムのピーターだって、あのシブいしゃがれ声の魅力は、本業を上回る。
   (“Hard Luck Woman”は、KISSで一番キャッチーなポップ・ソング。 大好き。)

   ファンを楽しませてナンボ。  喜ばせてナンボ。  騒がせてナンボ。
   KISSは、「世界一偉大なる芸人ロック・バンド」。 大衆のために活動するのだ。
   
   世界中のどのライブ会場にも多数現れる熱狂的な“KISS ARMY”の存在。
   彼らのメイク・コスチュームを真似して、KISSと共に、ライブを盛り上げる。
   「魅せる。 ノらせる。 驚かせる。 盛り上げる。」といった4拍子を実現する。
   KISSの前では、みんな“子供”でいられる。  KISSのロックは成長なんかしない。
   アトラクションで、テンションが上がる子供のように、みんなで盛り上がる。

   デビューして35年。  それは紆余曲折。  けっして平坦ではなかった。
   黄金の70年代を経て、エース、ピーターの脱退を境に、変革期に突入。
   80〜90年代は、ヘヴィー・メタル路線にダーク色を強め、そこからは“仮面”を脱ぎ、
   素顔で活動。 だが、あの2人を除いて、メンバー交代も激しくなり(特にギタリストは
   受難でした。)、仮面の神通力を無くしたかの如く、模索の時代も経験。 
   しかし、エース、ピーターとの再会をきっかけに、96年、再び“仮面”を着けて、
   リユニオン・ツアーを開始。 そこからは、「辞める辞めない」を繰り返しつつ、
   ツアーを敢行し(途中ニュー・アルバムも発表)、我々をを楽しませ続けてる。
   
   そして先週、なんと11年ぶりのニュー・アルバム「SONIC BOOM」を発表して、
   これが、Billboard誌アルバム・チャートHOT100で、初登場2位の快挙!
   コレ、自己最高記録みたい。 あの70年代黄金期でさえ、77年の「LOVE GUN」の
   4位が最高だったとのことで、いやはや、凄い。 恐れ入りましたの一言。
   現在に至っても、KISSへのニーズは尽きることがないんだ。
   (しかし、このアルバム、日本未発売・・。 現在KISSは、日本のレコード会社との
    契約がないみたいで。 失礼です! 彼らは日本をとても愛してくれてるのに。)
 
   ジーン・シモンズのよく使う言葉がある。
     「 The More We Give、The More You Want
          (与えてやればやるほど、お前らはもっと欲しがる) 」
   “ロック最大の娯楽の殿堂”でもあるKISSは、例によって性欲や食欲、名声を
   引き合いに出しながら、この言葉を吐き、どんどんエスカレートさせてきた。
   ファンはKISSを求め、さらに求め、KISSは与え、さらに与え続けてきた。

   KISSのサービスには、底がない。 永遠に与え続けるんだ。  これからも。

助けの叫びとアコギの隠れた魅力。

               HELP!       THE BEATLES

               

                Help!               
                The Night Before
                You've Got To Hide Your Love Away
                I Need You
                Another Girl
                You're Going To Lose That Girl
                Ticket To Ride
                Act Naturally
                It's Only Love
                You Like Me Too Much
                Tell Me What You See
                I've Just Seen A Face
                Yesterday
                Dizzy Miss Lizzy

   この“アイドル”4人の手旗信号は、「HELP」の文字じゃないんです。

   左から読んで、「NUJV」。  ・・・。   なんのこっちゃ。
   (ちなみに、このフォトは、着ているコートが左前合わせなんで、ネガが逆。
    裏焼きから読んでも、「KPNU」となる。 いまだに理由は不明。)


   実はそろそろ、ビートルズ・ネタにも筆休めしようかとも思ったんですが、
   リマスター作品も、ステレオ、モノとも、一通り、耳に、脳裏に叩き込んだ今・・。

   全体的な感想としては、やはり音質がクリアのなった事で、
   ヴォーカルや各楽器の演奏が、以前よりもずっと聴き取りやすくなった。
   ただ、ビートルズの本マスターは、APPLEの厳格な管理の下、保存状態も
   痛みがほとんどなく、リマスターの基本作業である、ノイズの除去も
   ごくわずかで済み、音圧の上げ下げや、立位バランスに神経を注いだ印象。

   今まで埋もれがちだったアコースティック・ギターのストロークがハッキリ聴こえたり、
   分離が良くなった事で、パーカッションのリズムパターンが良くわかったりなど、
   ニンマリしっぱなし。 そして、深い。 ペンを置いて、浸ってしまった次第です。
   ビートルズは、こういう音の隠し味の使い方が絶妙で、ほんと上手い。

   既に、多くの方がレビューされてるんですが、専門的な内容や、楽曲ごとの
   聴き比べは、気づいたとこが有り過ぎて、書き出したらキリがないんで、
   評論家の方におまかせして。
   (ちなみに、こんなサイト見つけました。 聴き比べに興味ある方はどうぞ。)

   私なりの素人的感想は、簡単にまとめると。 (ステレオ盤の方)

   1、アルバム別の録音レベル(音圧)の差が補正されている。
     (旧CDと同じBGM程度のボリュームで聴いた時に、音痩せしない。)
   2、ヴォーカルの立ち位置がはっきりして、控えめだったジョージのコーラスが
     前に出ている曲がある。 (思っていた以上に、しっかりハモってる)
   3、今まで聴こえなかった(埋もれていた)楽器の音が聴こえる。
     (リンゴのリムを叩いてる音や、ビリー・プレストンのオルガンの音。 
      ジョンのカッティングや、ポールのピッキングのクセなんかまで、まるわかり。)
   4、アナログ特有の少し奥の方から出てくるような音の感覚が蘇っている。
     (曲間も、「SGT.ペパー」や「ホワイト・アルバム」で、アナログ盤の時の
      タイミングに戻している。 う〜ん、コレ。 この“間”ですよ。 懐かしい。)
   5、ポールの初中期へフナー、後期のリッケンバッカーの音に臨場感が増していて
     改めて、非凡な“歌うベース・ライン”の輪郭が、よりクッキリ、鮮明に。
   6、極力、リミックスせず(ホントにやってないのかな〜・・?)、自然な音に
     (スピーカーの前で演奏してるような)、限りなく近づいた(のかな。)

   モノラル盤は、ステレオ盤とは性格も作りも違う。 きっちり区別して聴くべし。
   
   ビートルズが公式発表した全オリジナル・モノラル録音185曲。
   そもそも、ビートルズの曲は途中までモノラルで聴かれることを前提に録音され、
   ミックスしていたため、「モノラル重視の初中期の作品は、モノラルで聴いてこそ、
   真価が発揮される」と思っているファンも少なくないのはご存じの通り。

   今回のリマスター音源は、ステレオ、モノ共、ヘッドホンで聴き比べたけど、
   モノラルの出来の良さに、みんなの絶賛の声が多いようで。 ただ私見では、
   「曲によって良し悪しがある。」ってのが、正直なとこ。 (初期の作品は見事。)

   今回のモノラル盤は、全体的に音に厚みが増し、(音圧がハンパない。 凄すぎ。)
   ノイズを除去した分、ヴォーカル、楽器の各パーツに艶と張りが出て、生々しい。
   また、旧CDのモノラル盤にあった、高音のシャリシャリ感も消え、自然に近い。
   “音の塊”が団子になって、隙間無く、こちらに正面からドーンと飛んでくる印象。
   旧CDの初期のモノラル盤とは全く別物。 やはり、持って置いて損なし。

   モノラル盤の紙ジャケ(UK、US盤のBOXセットも)は、世界に冠たる日本製。
   素晴らしい。 エクセレント。 ブラボー。  これぞ、匠の技術。
   これで「ABBEY ROAD」と「LET IT BE」も、もしあったら・・と、心底思います。

   それに比べ、ステレオ盤の雑なこと・・。 何とかなんなかったのかなぁ。
   中身が素晴らしいだけに、デジパックの作りや写真製版のいい加減さなど、
   愛が感じられません。  全く・・。  “愛こそはすべて”なのに。 

   リマスター・レビューついでに、この「HELP!」のリマスター盤について書くと・・。

   今回のステレオ版リマスターに採用されたのは、「RUBER SOUL」同様、87年に、
   初CD化の際にジョージ・マーティンがミックスし直した方。(87年版)
   (65年オリジナル・アナログ当時のステレオ版は、今回、モノラル版と共に、
    リマスターされて、MONO BOXに収録されている。)

   オリジナル・ステレオ版は、いわゆる、泣き別れステレオ・ミックス。
   主に、ヴォーカルを右、楽器を左というように、音が左右に極端に分かれていて、
   (「RUBER SOUL」は、もっとヒドい。)
   ヘッドフォンなどで聴くと自分の左右の真横に分かれて演奏しているような感じで
   立体感に欠けるし、“You've Got To Hide Your Love Away”で、ジョンの
   ヴォーカルの位置が不安定だったりするなど、気になる点も多々あった。
   (しかし私は、“この音”でビートルズを学んだんで、馴染み深いのは、こっち)

   87年版は、全体に音が中央寄りに修正され、一体感と自然さが増している。
   一般的な普及音源としては、聴きやすさという点でも、初CD化以来、
   22年間にも渡り、「標準」として、これに慣れ親しんだ人も多いという点からも、
   この87年版を今回のステレオ版のリマスター・ベースとしたのは正解だと思う。


   リマスターの話をはさんでしまいましたが、「HELP!」の話、続けてまいります。

  

   邦題「4人はアイドル」。 しかし、このアルバムは”脱・アイドル宣言”といった内容。
   やらされちゃってたワケですから・・。  アーチストとしての自立の一歩というか、
   この辺りから、“あの2人”の目指す方向は別々を向いていくことになるわけで。

   映画は、おちゃらけたコメディ・タッチの世界中を股にした“鬼ごっこ”を展開する、 
   他愛もない内容の(けっこう楽しんでるようだけど)、どうってことないアイドル映画。
   (しかし、リチャード・レスター監督は、ビートルズの演奏を上手く撮ってる。
    この映画でも、“You're Going To Lose That Girl”での、美しい光と影、
    それに絡む煙の模様と、彼らのコントラストが、実に見事。 よく知ってる人です。)   

   「HELP!(助けてくれ!)」。  まぎれもない、心の叫びだ。
   当時、人気絶頂で、行動やしぐさ、発言の一字一句、やることなすこと、すべて、
   取上げられることに、ジョンがストレスに感じてきたことは確か。
   ファンの歓声ひとつでスイッチが入ったり、切れたりするポールとは違う。
   アイドルを演じることの苦悩、いらだち、自己認識、世間とのギャップ・・。

   ジョンは、ふと過ぎるそんな思いを、マリファナの煙と共に振り払っていたんだろう。

   ジョンはこの曲の歌詞に誇りを持っていた。 本当に助けを求めていたそうだ。
   しかし、後にこんなことを回想してる。  作りに後悔してると。
   「テンポが早過ぎた。 コマ−シャル(売れ線)にしようとしてさ・・。」
   確かに、人気絶頂のアイドルにブル−ジ−な曲は要らない。
   そう。 前作「FOR SALE」辺りから、内省的気配を漂わせ始めたジョン。

   ボブ・ディランの影響も大きかった。 ディラン抜きでは語れない。
   感覚が、どんどん研ぎ澄まされていく彼に、ディランの精神は、まさに教科書。
   この“Help!”の深層心理も、“You've Got To Hide Your Love Away”での、
   フォーク・ロックの新境地開拓も、時代の寵児同志、必然のように導かれたのかも。

   逆に、ポールはこのアルバム辺りから、神懸り的なメロディを量産し始め、
   ベースのみならず、マルチ・プレイヤーとしての才能、実力を発揮し出す。

   しかし、“Yesterday”の前座的位置に座る“I've Just Seen A Face”は、
   ポールのフォーク風味とアコギのセンスがキラリと光る、隅に置けない一曲。
   ポール、ジョン、ジョージ3人とも、アコギを爪弾き、ベースレスにした代わりに、
   12弦をうまく絡めるなんて、ポールの非凡なとこ。 イントロの3本の絡み方にしろ、
   コードは、たった4つしか使ってないのに、実にスムーズで魅せられるラインだ。
   リズム、頭韻にも無理がなく、サビの前のスキャットもぴったり。 
   最高の仕上がりだ。   ポールの隠れ名曲のひとつに数えていい。

   そして、“Yesterday”は、やっぱり特別な曲。 避けては通れない。
   ポールを批判する奴らにも、この曲には、何かしら、特別な思いがあるはず。
   ストリングスをバックにしたこの美しいメロディは、すべてを黙らせたのだ。
   
   シンプルな二部構成で成り立つメロディの覚えやすさ、哀愁ただよう雰囲気から、
   もの憂げなアコギの旋律と弦楽四重奏が感傷度を高めて、孤独感を誘う。

   しかし、ポールは、さらりと歌う。 シンプルに。 ただせつなく。
   「泣かせよう」なんて、わざとらしさはない。 ただ素直に心から歌う。
   この“等身大のポール”が、この“Yesterday”の偉大さなんだと思う。

   ジョンの“You've Got To Hide Your Love Away”と、ポールの“Yesterday”。
   このアコースティックなこの2曲を比べてみると、実に興味深い。

   同じ「孤独」というキーワードでも、この2人ではエラい違いだ。
   毒のあるトーンで、屈折した心情と引き裂かれた感情を吐露するジョン。
   センチなロマンスが、突然、夢に変わるという現実に置き去られたポール。

   ポールはより高く、もっと高く。  ジョンはより深く、もっと深く。
   道は別れるも、よりアーチスティックな方向へ向かって成長していくことになる。
                   

本当の“ミート”・ザ・ビートルズは?

         YESTERDAY AND TODAY     THE BEATLES

        

              (A)  Drive My Car
                  I'm Only Sleeping
                  Nowhere Man
                  Dr. Robert
                  Yesterday
                  Act Naturally
              (B)  And Your Bird Can Thing
                  If I Needed Someone
                  We Can Work It Out
                  What Goes On
                  Day Tripper

   びっくりしました?
   いきなりアップしたら、やっぱキツイわ、コレ・・。

   リマスター騒ぎも、かなり落ち着いてきたようですが、今回のリマスターは
   概ね好意的にとらえられてる声が多いのではないでしょうか。
   私はと申しますと・・・。 う〜ん・・。 良しとしましょう・・かな・・。 って感じ。

   ただ、この音に慣れるには、ちょっと時間がかかりそう。  良くも悪くも。

   では、今回のリマスターは、・・・と書きたいとこですが。
   ひねくれ者の小生。  真逆のネタでまいります。  それも究極のアイテムで。

   「YESTERDAY AND TODAY」。  米CAPITOLの最凶のビートルズ・アルバム。

   米CAPITOLは、英国で発売されるオリジナル・アルバムから2、3曲削って
   アルバムを発売し、削った曲がたまったら編集盤を出す方式をとっていました。
   なんと、たくましい商魂。 アーチストの意向もコンセプトも、まるで無視。 
   アルバムが枚数だけ水増しされて、それが大ヒットする。  ボロ儲けです。

   なので、決まって、
   「CAPITOLがビートルズのアルバムを切り張りし、勝手に編集する事への反発」が、
   この不気味なジャケットのコンセプト。 みたいな事がよく書かれています。  

   私も最初は、この“立て板に水”の様な理屈に納得していたのですが、思えば、
   CAPITOLのオリジナル編集盤は大抵が数多いフォト・セッションからCAPITOLが、
   勝手に写真を選んで、ジャケットを制作していました。 (これもどうかと思うけど)
   おかしい。  CAPITOLへの抗議だったら、発売しなきゃいいんです。
   “ビートルズの反骨心”的な理由はファンにとってはカッコイイ理由ですが、
   これは、間違ってます。

  通称“ブッチャー・カバー”。  なんとも、不気味で趣味の悪いジャケット・デザインだ。
  食肉工場になぞられたデザインで、白衣をまとったビートルズのひざや肩の上に、
  人形の首や胴体、血が滴り落ちた肉片が置かれていた。 メンバーもニッコリして・・。

          

  では、なぜこのジャケットは撮影され、そのまま発売されてしまったのか。

  問題のフォトは66年3月25日、豪州の写真家ロブ・ウィティカーによって撮影された。
  「ポップ・スターのオーソドックスな宣伝写真の常識を思い切り破壊するものを
  撮りたかった。」と、後に彼は答えている。  彼のアイデアが採用されたのだ。

  しかし、4人の反応には、それぞれ温度差があったが、ジョンはノリノリだった様子。
  ジョンがこう理由を述べる。 「あれをアルバムのカバーに使おうと言ったのは、
  何より(天使みたいな僕たちの)イメージを壊したかったからだ。」

   

  ジョンは、さらに続ける。
  「いつも普段通りの自分に見せなきゃいけない、フォト・セッションを“重労働”に
  感じて、嫌気がさしていたんだ。 そこへ、写真家ウィティカーが赤ん坊の人形や肉や
  白衣を持ち込んできたよ。 「イェー!」って感じだったぜ。」

  ポールも飛びついた。
  「彼(ウィティカー)が本当のところ何を言いたかったのか、よくわからなかった。
  でもともかく、他の人たちが僕らにやらせたがっていたことよりは独創性があった。」

  だが、ジョージは悪趣味に閉口した。
  「無知で馬鹿らしいだけのことを、クールでヒップ(かっこいい)だと勘違いしてね。
  あれもそのひとつだった。 だけどあの場合、グループの1人として協力せざるを
  得ない状況だった。」

  リンゴは達観していた。
  「僕らの目を見れば、自分たちのやっていることを誰1人わかってないのが明らかさ。
  人生を生きていくうちにはそういうこともあるんだよ。」

  出来上がった写真を見たマネジャーのブライアン・エプスタインは仰天した。
  「ビートルズに肉屋の格好をさせるのは何事だ!」と激怒し、(そりゃ当然です)
  バンドのイメージを守るために、フィルムの破棄を要求したそうだ。

  実は、ブッチャー写真は裏ジャケットに使用する構想だったという。
  12インチのジャケットの中央に2.25インチくらいの大きさに収めようとしていた。
  表ジャケットは、ソーセージを持っているビートルズの写真。
  ソーセージはへその緒を意味し、女性とつながっている作品に仕立てたかった。
  だから、ウィティカーに言わせれば、CAPITOLがブッチャー写真だけ採用したために
  作品全体の意味が理解されず、「混乱を招き、みんな慌てた」という説明になる。
  (この写真を勝手にチョイスしたCAPITOLの理由は不明なんだけど) 

  「こんなものを出せるか!」 当時のCAPITOL社長だったアラン・リビングストンは
  出来上がったジャケット写真を見て即座に思った。 会社幹部も青くなったそうだ。
  しかし、早速ロンドンにいたブライアン・エプスタインに電話すると、
  ビートルズがその写真を使いたがっているという。 OKというしかなかった・・。

  撮影から約2カ月後の6月3日、英国の音楽誌「ニュー・ミュージカル・エクスプレス」に
  新曲“Paperback Writer/Rain”の全ページ広告で、ブッチャー写真が初登場した。
  ジョンの「キリスト発言」と同様、英国では、なぜか特に問題にならなかった。

  しかし、アルバムを発売する米国内での反応は違った。 すさまじいブーイングだ。
  初回出荷70万枚を予定していたが、6月15日の発売直前になると、
  CAPITOLには「取り扱いを拒否する」といった、小売業者から抗議の電話が殺到した。

  これは、まずい・・。  だが、リビングストンはビートルズと直接交渉するも、
  彼らは「これは戦争に対する僕らの意思表示なんだ」とまで主張したという。
  リビングストンは悩んだ・・。  結局、無用な騒動は避けたいし、
  ビートルズの評判に傷もつけたくない、という理由で回収を決断した。

  回収後、“ブッチャー・カバー”はほとんど処分されたが、作業時間の節約のために、
  CAPITOLは社員を1週間動員し、カバーを別の写真に取り換えた。 
  ブッチャー・カバーのジャケットの上に新しいジャケットを貼って発売されたもので、
  (いわゆる“トランク・カバー”と呼ばれるもの)、今あるほとんどのものが、
  このジャケットに蒸気をあててのり付けされた写真を剥がしたものだ。
  だが、一部は回収できずに出回ってしまった。 市場に流れたこれらの“珍品”は、
  有名なコレクターズ・アイテムとして現在も高値で取引されている。

  発売日から5日後の6月20日、旅行用のトランクを小道具に使った“トランク・カバー”と
  呼ばれるジャケットに差し替えられた「YESTERDAY AND TODAY」が店頭に並んだ。
  このカバーもウィティカーの手によるものだ。

           

  これが、ブッチャー・カバーの撮影、発売、回収騒ぎの一部始終だ。

  それは、CAPITOLへの反発ではなく、作られてしまったイメージへの反発だった。

  このジャケットの話ばかりになってしまったんで、収録曲の話が、
  ほとんど飛んでしまったけど、“Yesterday”をアルバム収録するがための
  (アメリカ版「HELP!」は、サントラ仕様で全く別物。 なので“Yesterday”は未収録)
  勝手な編集盤で、ビートルズからすると、ほんとにひどい代物だ。
  (アメリカ版「RUBER SOUL」のオープニングは、オリジナル版「HELP!」収録の
   ポール風フォーク・ウエスタンの傑作“I've Just Seen A Face”で、
   B面がジョンが最も嫌いな曲と言ってた、同じくオリジナル版「HELP!」収録の
   “It's Only Love”から始まる。 開いた口が塞がりません。)

  しかも、「REVOLVER」収録のジョンの3曲は、英国本家の発売より6週間も
  先にフライングして発表されてしまった形に。 だから、アメリカ版「REVOLVER」は
  ポールとジョージ色が強くなってしまってる。 これじゃ、大傑作が台無しです。
  (発売までに、本国からステレオのマスターが届かなかったために、CAPITOLは
   モノラル・マスターを機械的に無理やりステレオ分配させて(擬似ステレオ)、
   ステレオ盤に収録していた。 CAPITOLって、ジョンに何か恨みでもあるの?)
  
  かく小生、このブッチャー・カバーなど、所有しておりません。
  (高音質のブートレグでなら所有しておりますが・・。)
  こんなものに大金を出すくらいなら、英PARLOPHONEのオリジナル盤を揃えます。

  そろそろ、ちゃんとリマスター盤のレビューしなくては・・。
   

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たか兄

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